フィールズ賞
テンプレート:Infobox award フィールズ賞(フィールズしょう)は、若い数学者のすぐれた業績を顕彰し、その後の研究を励ますことを目的に、カナダ人数学者ジョン・チャールズ・フィールズ (John Charles Fields, 1863年 - 1932年) の提唱によって1936年に作られた賞のことである[1][2]テンプレート:Sfn。
概要
4年に一度開催される国際数学者会議 (ICM) において、顕著な業績を上げた40歳以下テンプレート:Efnの数学者(2名以上4名以下)に授与される[1]。ICMで同時に授与される賞としては、ネヴァンリンナ賞、ガウス賞、チャーン賞などがある。
数学に関する賞では最高の権威を有する[3][4]。しかし、若い数学者の優れた業績を顕彰し、その後の研究を奨励することが目的であり、「4年に一度」「40歳以下」「2名以上4名以下」という制限がある。ただし、唯一の例外として、「フェルマーの最終定理」の証明に成功したアンドリュー・ワイルズは証明当時すでに42歳になっていたが、その業績の重要性から1998年に45歳で「特別賞」を与えられた。
受賞者は西ヨーロッパとアメリカの数学者が通例で[5]、ダランベールかライプニッツの系譜に連なる場合が多い[5]。冷戦時には、共産圏の数学者との交流は困難であった。1970年、初めてソ連の数学者が受賞したが、海外渡航が許されず授賞式には出席できなかったテンプレート:Sfn。受賞者の出身国は多様化してきており、ベトナム、イラン、ブラジルなども受賞者を出している。2014年には初めての女性受賞者が誕生した[6]。なお、メダルは国際数学者会議の開幕式において名誉議長から手渡されるテンプレート:Sfn。
フィールズ賞は、フィールズ賞選考委員会で決められる[1]。グリゴリー・ペレルマンは、2024年時点では受賞を辞退したただ一人の人物である。
他の贈賞との比較
「数学のノーベル賞」と呼ばれることもあるが[6]テンプレート:Sfn、賞としての性格は大きく異なるテンプレート:Efn。ノーベル賞は(存命であれば)受賞者の年齢に関係なく贈られるのに対し、フィールズ賞はその時点でまさに活躍中の40歳以下の若手数学者に贈賞されているテンプレート:Sfn。また、ノーベル賞は業績ごとに選考されるため、一つの業績に対して複数の共同受賞者が出ることが多くなっているがフィールズ賞は個人に贈られるものであり、共同受賞の例はない。
近年では、「年齢制限なし」「毎年授与」「高額賞金」などノーベル賞に近い性格を持つ国際的数学賞が次々と現れている。1980年に創設されたクラフォード賞は、毎年ではないものの数学上の業績に対して比較的高額な賞金を年齢制限なく与える国際学術賞である。ウルフ賞数学部門も、賞金規模はやや小さいものの、1978年以降ほぼ毎年、年齢制限なく与えられている。2000年には、特定の業績に対してのみノーベル賞級の高額賞金を年齢制限なく与える「ミレニアム懸賞問題」が発表され、世界中の関心を集めた。
2002年には、ノーベル賞により性格の近いアーベル賞が設立された。フィールズ賞とアーベル賞の両方を受賞した人物も存在する。
さらに2014年には、ノーベル賞をも超越する莫大な賞金額を誇る数学ブレイクスルー賞が創設された。
| 比較項目 | 数学ブレイクスルー賞 | ミレニアム懸賞問題 | ノーベル賞 | アーベル賞 | フィールズ賞 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 2015年 | (創設は2000年) | 1901年 | 2003年 | 1936年 |
| 実施間隔 | 1年 | 不定 | 1年 | 1年 | 4年 |
| 年齢制限 | なし | なし | なし | なし | 40歳以下 |
| 賞金額 | 約3億円 | 約1億円 | 約1億円 | 約1億円 | 約200万円 |
| 授賞分野の制限 | 特になし | 特定業績のみ | 数学を対象としない | 特になし | 特になし |
東洋人の受賞者
日本人の受賞者は、2024年現在、小平邦彦(1954年)、広中平祐(1970年)、森重文(1990年)の3人(国籍別では5番目に多い)であり、1990年以降受賞者は出ていない。
東洋系の受賞者は上記の3名以外に、丘成桐(中国系米国人)(1982年)、陶哲軒(中国系オーストラリア人)(2006年)、ゴ・バオ・チャウ(ベトナム系フランス人)(2010年)、マリアム・ミルザハニ(イラン人)(2014年)、マンジュル・バルガヴァ(インド系カナダ・米国人)(2014年)、許埈珥(韓国系米国人)(2022年)の6人がいる。
受賞者の一覧
名前の読み(名前の綴り、生年 - 没年)、国籍、受賞理由(英語)の順。国籍は受賞時の国名で記す。
- ラース・ヴァレリアン・アールフォルス(Lars Valerian Ahlfors, 1907年 - 1996年)テンプレート:FIN
- ジェス・ダグラス(Jesse Douglas, 1897年 - 1965年)テンプレート:USA
- ローラン・シュヴァルツ(Laurent Schwartz, 1915年 - 2002年)テンプレート:FRA
- アトル・セルバーク(Atle Selberg, 1917年 - 2007年)テンプレート:NOR
- 小平邦彦(Kunihiko Kodaira, 1915年 - 1997年)テンプレート:JPN
- ジャン=ピエール・セール(Jean-Pierre Serre, 1926年 - )テンプレート:FRA
- クラウス・フリードリッヒ・ロス (Klaus Friedrich Roth, 1925年 - 2015年)テンプレート:GBR(ヴロツワフ生まれ。当時はドイツ領、現在はポーランド領)
- ルネ・トム(René Thom, 1923年 - 2002年)テンプレート:FRA
- ラース・ヘルマンダー(Lars Hörmander, 1931年 - 2012年)テンプレート:SWE
- ジョン・ウィラード・ミルナー(John Willard Milnor, 1931年 - )テンプレート:USA
- マイケル・フランシス・アティヤ(Michael Francis Atiyah, 1929年 - 2019年)テンプレート:GBR
- ポール・コーエン(Paul Joseph Cohen, 1934年 - 2007年)テンプレート:USA
- アレクサンドル・グロタンディーク(Alexander Grothendieck, 1928年 - 2014年)無国籍(主にフランスで活動、ドイツ出身)
- スティーヴン・スメイル(Stephen Smale, 1930年 - )テンプレート:USA
- アラン・ベイカー(Alan Baker, 1939年 - 2018年)テンプレート:GBR
- 広中平祐(Heisuke Hironaka, 1931年 - )テンプレート:JPN
- セルゲイ・ノヴィコフ(Sergei Novikov, 1938年 - )テンプレート:SSR
- ジョン・グリッグス・トンプソン(John Griggs Thompson, 1932年 - )テンプレート:USA
- エンリコ・ボンビエリ(Enrico Bombieri, 1940年 - )テンプレート:ITA
- デヴィッド・ブライアント・マンフォード(David Bryant Mumford, 1937年 - )テンプレート:GBR
- ピエール・ルネ・ドリーニュ(Pierre René Deligne, 1944年 - )テンプレート:BEL
- チャールズ・ルイス・フェファーマン(Charles Louis Fefferman, 1949年 - )テンプレート:USA
- グレゴリ・アレキサンドロヴィッチ・マルグリス (Gregori Aleksandrovi(t?)ch Margulis, 1946年 - )テンプレート:SSR
- ダニエル・キレン (Daniel G. Quillen, 1940年 - 2011年)テンプレート:USA
- アラン・コンヌ(Alain Connes, 1947年 - )テンプレート:FRA
- ウィリアム・サーストン(William P. Thurston, 1946年 - 2012年)テンプレート:USA
- 丘成桐(Shing-Tung Yau, 1949年 - )テンプレート:USA(中国系)
- サイモン・ドナルドソン(Simon K. Donaldson, 1957年 - )テンプレート:GBR
- ゲルト・ファルティングス(Gerd Faltings, 1954年 -)テンプレート:DEU
- マイケル・フリードマン(Michael H. Freedman, 1951年 - )テンプレート:USA
- ウラジーミル・ドリンフェルト(Vladimir Drinfeld, 1954年 - )テンプレート:SSR(ウクライナ出身)
- ヴォーン・ジョーンズ(Vaughan F. R. Jones, 1952年 - 2020年)テンプレート:NZL
- 森重文 (Shigefumi Mori, 1951年 -)テンプレート:JPN
- エドワード・ウィッテン(Edward Witten, 1951年 - )テンプレート:USA
- ジャン・ブルガン(Jean Bourgain, 1954年 - 2018年)テンプレート:BEL
- ピエール=ルイ・リオン(Pierre-Louis Lions, 1956年 - )テンプレート:FRA
- ジャン=クリストフ・ヨッコス(Jean-Christophe Yoccoz, 1957年 - 2016年)テンプレート:FRA
- エフィム・ゼルマノフ(Efim Zelmanov, 1955年 - )テンプレート:RUS
- リチャード・ボーチャーズ (Richard E. Borcherds, 1959年 - )テンプレート:GBR(南アフリカ出身)
- ウィリアム・ティモシー・ゴワーズ(William Timothy Gowers, 1963年 - )テンプレート:GBR
- マキシム・コンツェビッチ(Maxim Kontsevich, 1964年 - )テンプレート:RUS
- カーティス・マクマレン(Curtis T. Mcmullen, 1958年 - )テンプレート:USA
- アンドリュー・ワイルズ(Andrew J. Wiles, 1953年 - )(特別表彰)テンプレート:GBR
- ローラン・ラフォルグ(Laurent Lafforgue, 1966年 - )テンプレート:FRA
- ウラジーミル・ヴォエヴォドスキー(Vladimir Voevodsky, 1966年 - 2017年)テンプレート:RUS
- 陶哲軒(テレンス・タオ)(Terence Tao, 1975年 - )テンプレート:AUS(中国系)
- グリゴリー・ペレルマン(Grigori Perelman, 1966年 - )テンプレート:RUS(本人は受賞を辞退)
- アンドレイ・オコンコフ (Andrei Okounkov, 1969年 - )テンプレート:RUS
- ウェンデリン・ウェルナー(Wendelin Werner, 1968年 - )テンプレート:FRA(ドイツ出身)
- エロン・リンデンシュトラウス(Elon Lindenstrauss, 1970年 - )テンプレート:ISR
- スタニスラフ・スミルノフ(Stanislav Smirnov, 1970年 - )テンプレート:RUS
- ゴ・バオ・チャウ(Ngô Bảo Châu, 1972年 - )テンプレート:FRAテンプレート:VNM
- セドリック・ヴィラニ(Cédric Villani, 1973年 - )テンプレート:FRA
- マリアム・ミルザハニ(Maryam Mirzakhani, 1977年 - 2017年 )テンプレート:IRN (女性初)
- アルトゥル・アビラ(Artur Avila, 1979年 - )テンプレート:BRAテンプレート:FRA
- マンジュル・バルガヴァ(Manjul Bhargava, 1974年 - )テンプレート:CANテンプレート:USA
- マルティン・ハイラー(Martin Hairer, 1975年 - )テンプレート:AUT
- コーチェル・ビルカー(Caucher Birkar, 1978年 - )テンプレート:GBRテンプレート:IRN
- アレッシオ・フィガリ(Alessio Figalli, 1984年 -)テンプレート:ITA
- ピーター・ショルツ(Peter Scholze, 1987年 - )テンプレート:GER
- アクシェイ・ヴェンカテシュ(Akshay Venkatesh, 1981年 - )テンプレート:AUS
- 2022年(オンライン開催テンプレート:Efn)[9]
- ユーゴー・デュミニル=コパン(Hugo Duminil-Copin, 1985年 - )テンプレート:FRA
- 許埈珥(June Huh, 1983年 - )テンプレート:USAテンプレート:KOR
- ジェームズ・メイナード(James Maynard, 1987年 - )テンプレート:GBR
- マリナ・ヴィヤゾフスカ(Maryna Viazovska, 1984年 - )テンプレート:UKR (女性2人目)
国籍別の受賞者数
受賞時の国籍が基準。二重国籍はそれぞれの国に1個。国旗は現在のもの。ただし、消滅した国の国旗は最後の受賞者の受賞時のもの。(2022年7月現在)
脚注
注釈
出典
参考文献
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- テンプレート:Cite book - 上記の日本語訳
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会議録
関連文献
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- Riehm, Elaine McKinnon (2010), “The Fields Medal: Serendipity and J. L. Synge”, Fields Notes 10: 1–2.
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