ブロッホ群
テンプレート:正確性 数学において、ブロッホ群(テンプレート:Lang-en-short)はブロッホ・ウィグナーの関数の線形関係式を記述する群であり、高次のブロッホ群は一般にブロッホ・ススリン複体のコホモロジー群として定義される。複体の名前はテンプレート:仮リンク (テンプレート:En) とテンプレート:仮リンク (テンプレート:Ru) に因む。ブロッホ群は以下に述べるように多重対数関数、双曲幾何学、代数的K理論などと密接に関係している。
ブロッホ・ウィグナーの関数
テンプレート:仮リンクは テンプレート:Math に対して次の冪級数で定義される。
この冪級数から二重対数関数の積分表示
が得られる。ただし二重対数関数は2点 テンプレート:Math で分岐しモノドロミー(多価性)を持つため、積分表示が冪級数表示に一致するためには 0 から テンプレート:Mvar への積分路は の非自明なサイクルを含まないようなものをとる必要がある。(一見すると テンプレート:Math に分岐はないように見えるが、実は テンプレート:Math を周回したシート上に テンプレート:Math の分岐が現れる。)この積分表示によって テンプレート:Math は の普遍被覆空間に正則に解析接続される。
ブロッホ・ウィグナーの関数は二重対数関数を用いて次のように定義される。
テンプレート:Math には次のような著しい性質がある。
- テンプレート:Math はモノドロミーを持たず 上の一価実解析的関数になる。
最後の恒等式は本質的に二重対数関数に対するアーベルの5項関係式である テンプレート:Harv。
ブロッホ群の定義
テンプレート:Mvar を体とし、 を の元 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Math により Z 上生成された自由加群とする。また を
の形の元の生成する テンプレート:Math の部分加群とし、 と定めよう。いまブロッホ・ウィグナーの関数の定義域を テンプレート:Math に線形に拡張し、テンプレート:Math に対して テンプレート:Math と定める。すると テンプレート:Math の 5項関係式は
と言い換えられ、従って テンプレート:Math は 上定義される。さて、
を、 に対しては テンプレート:Math と定め、これを テンプレート:Math に線形に拡張したものとする。(テンプレート:Mvar が 上 well-defined であることをみるには をチェックする必要がある。)このときブロッホ群 を
と定義する テンプレート:Harv。松本の定理により を 2次の代数的K群として が知られている。 は テンプレート:Math の線形関係式を完全に記述する群である。すなわち次が成り立つ。
K3 とブロッホ群の関係
テンプレート:Mvar を無限体とする。このとき は テンプレート:Mvar の取り方に依らない。テンプレート:Math を無限次単項行列のなす テンプレート:Math の部分群、テンプレート:Math をキレンのプラス構成とすると、
が成り立つ テンプレート:Harv。ここで は 3次の代数的K群である。 さらに、ミルナーのK群を として、 を のただ一つの非自明な テンプレート:Math 拡大とする。このとき以下の完全列が知られている。
3次元双曲幾何学との関係
テンプレート:正確性 ブロッホ・ウィグナー関数 は 上の関数であり、次のような双曲幾何学的な意味を持つ。 を実3次元の双曲空間とし、 と半空間表示する。 の無限遠点の全体 は とみなすことができる。無限遠点のみを頂点とする四面体を理想的四面体と呼び、 を無限遠点上の頂点として で表す。四面体の(符号付き)体積を と表す。このとき、計量の定数倍を適切にとれば、四面体の複比は、
であり、特に である。 の5項関係式は、退化した理想的 4単体 の境界の体積が 0 であることと
とは同値である。
加えて、3次元双曲多様体 が与えられると、
と分解する。ここに は、理想四面体であり、それらの頂点はすべて 上の無限遠点にある。ここに は となるある複素数である。各々の理想四面体は、 となる複素数 (四面体の頂点の複比となるが、)に対し を頂点とする理想四面体のひとつにアイソメトリック(isometric)である。このように、四面体の体積は一つのパラメータ にのみ依存する。テンプレート:Harv は、理想四面体 に対し ただし はブロッホ・ウィグナーの二重対数、となることを示した。一般の 3次元双曲多様体に対し、理想四面体を互いに張り合わせることにより、
を得る。モストウの剛性定理は、 であるすべての に対する四面体の体積の値が一意に定まることを保証している。
一般化
二重対数の代わりに、三重対数やさらに高次の多重対数を用いることで、ブロッホ群の概念は テンプレート:Harv と テンプレート:Harv により拡張された。これらの一般化ブロッホ群 が、代数的K理論やテンプレート:仮リンクと関係するということが、広く予想されている。また、テンプレート:Harvにより定義された拡大されたブロッホ群のように、別の方向への一般化もある。
参考文献
- テンプレート:Cite book (this 1826 manuscript was only published posthumously.)