ブロッホ群

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テンプレート:正確性 数学において、ブロッホ群テンプレート:Lang-en-short)はブロッホ・ウィグナーの関数の線形関係式を記述する群であり、高次のブロッホ群は一般にブロッホ・ススリン複体のコホモロジー群として定義される。複体の名前はテンプレート:仮リンク (テンプレート:En) とテンプレート:仮リンク (テンプレート:Ru) に因む。ブロッホ群は以下に述べるように多重対数関数双曲幾何学代数的K理論などと密接に関係している。

ブロッホ・ウィグナーの関数

テンプレート:仮リンクテンプレート:Math に対して次の冪級数で定義される。

Li2(z)=k=1zkk2

この冪級数から二重対数関数の積分表示

Li2(z)=0zlog(1t)dtt

が得られる。ただし二重対数関数は2点 テンプレート:Math で分岐しモノドロミー(多価性)を持つため、積分表示が冪級数表示に一致するためには 0 から テンプレート:Mvar への積分路は z{0,1} の非自明なサイクルを含まないようなものをとる必要がある。(一見すると テンプレート:Math に分岐はないように見えるが、実は テンプレート:Math を周回したシート上に テンプレート:Math の分岐が現れる。)この積分表示によって テンプレート:Mathz{0,1}普遍被覆空間に正則に解析接続される。

ブロッホ・ウィグナーの関数は二重対数関数を用いて次のように定義される。

D2(z)=(Li2(z))+arg(1z)log|z|

テンプレート:Math には次のような著しい性質がある。

  • テンプレート:Math はモノドロミーを持たず {0,1} 上の一価実解析的関数になる。
  • D2(z)=D2(z1z)=D2(11z)=D2(1z)=D2(1z)=D2(zz1).
  • D2(x)+D2(y)+D2(1x1xy)+D2(1xy)+D2(1y1xy)=0.

最後の恒等式は本質的に二重対数関数に対するアーベルの5項関係式である テンプレート:Harv

ブロッホ群の定義

テンプレート:Mvar を体とし、(K)=[K{0,1}]K{0,1} の元 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Math により Z 上生成された自由加群とする。また 𝒟(K)

[x]+[y]+[1x1xy]+[1xy]+[1y1xy]

の形の元の生成する テンプレート:Math の部分加群とし、𝒜(K)=(K)/𝒟(K) と定めよう。いまブロッホ・ウィグナーの関数の定義域を テンプレート:Math に線形に拡張し、テンプレート:Math に対して テンプレート:Math と定める。すると テンプレート:Math の 5項関係式は

x𝒟()D2(x)=0

と言い換えられ、従って テンプレート:Math𝒜() 上定義される。さて、

d:𝒜(K)2(K×)

を、xK{0,1} に対しては テンプレート:Math と定め、これを テンプレート:Math に線形に拡張したものとする。(テンプレート:Mvar𝒜 上 well-defined であることをみるには 𝒟(K)kerd をチェックする必要がある。)このときブロッホ群 2(K)

2(K)=kerd

と定義する テンプレート:Harv松本の定理により 𝒦2(K) を 2次の代数的K群として 𝒦2(K)=cokerd が知られている。2()テンプレート:Math の線形関係式を完全に記述する群である。すなわち次が成り立つ。

x2()D2(x)=0.

K3 とブロッホ群の関係

テンプレート:Mvar を無限体とする。このとき c=[x]+[1x]2(K)テンプレート:Mvar の取り方に依らない。テンプレート:Math を無限次単項行列のなす テンプレート:Math の部分群、テンプレート:Mathキレンのプラス構成とすると、

coker[π3(BGM(K)+)𝒦3(K)]=(2c)12(K)

が成り立つ テンプレート:Harv。ここで 𝒦3(K)=π3(BGL(K)+) は 3次の代数的K群である。 さらに、ミルナーのK群𝒦3M として、𝒦3(K)ind=coker(𝒦3M(K)𝒦3(K)), Tor(K×,K×)Tor(K×,K×) のただ一つの非自明な テンプレート:Math 拡大とする。このとき以下の完全列が知られている。

0Tor(K×,K×)𝒦3(K)ind2(K)0.

3次元双曲幾何学との関係

テンプレート:正確性 ブロッホ・ウィグナー関数 D2(z){0,1}=P1{0,1,} 上の関数であり、次のような双曲幾何学的な意味を持つ。3 を実3次元の双曲空間とし、3=×>0 と半空間表示する。3 の無限遠点の全体 33{}=P1 とみなすことができる。無限遠点のみを頂点とする四面体を理想的四面体と呼び、(p1,,p3P1) を無限遠点上の頂点として (p0,p1,p2,p3) で表す。四面体の(符号付き)体積p0,p1,p2,p3 と表す。このとき、計量の定数倍を適切にとれば、四面体の複比は、

p0,p1,p2,p3=D2((p0p2)(p1p3)(p0p1)(p2p3))

であり、特に D2(z)=0,1,z, である。D2(z) の5項関係式は、退化した理想的 4単体 (p0,p1,p2,p3,p4) の境界の体積が 0 であることと

(p0,p1,p2,p3,p4)=i=04(1)ip0,,p^i,,p4=0

とは同値である。

加えて、3次元双曲多様体 X=3/Γ が与えられると、

X=j=1nΔ(zj)

と分解する。ここに Δ(zj) は、理想四面体であり、それらの頂点はすべて 3 上の無限遠点にある。ここに zjImzj>0 となるある複素数である。各々の理想四面体は、Imz>0 となる複素数 z (四面体の頂点の複比となるが、)に対し 0,1,z, を頂点とする理想四面体のひとつにアイソメトリック(isometric)である。このように、四面体の体積は一つのパラメータ z にのみ依存する。テンプレート:Harv は、理想四面体 Δ に対し vol(Δ(z))=D2(z), ただし D2(z) はブロッホ・ウィグナーの二重対数、となることを示した。一般の 3次元双曲多様体に対し、理想四面体を互いに張り合わせることにより、

vol(X)=j=1n

を得る。モストウの剛性定理は、Im zj>0 であるすべての j に対する四面体の体積の値が一意に定まることを保証している。

一般化

二重対数の代わりに、三重対数やさらに高次の多重対数を用いることで、ブロッホ群の概念は テンプレート:Harvテンプレート:Harv により拡張された。これらの一般化ブロッホ群 n が、代数的K理論テンプレート:仮リンクと関係するということが、広く予想されている。また、テンプレート:Harvにより定義された拡大されたブロッホ群のように、別の方向への一般化もある。

参考文献