ラウエの式

ラウエの式

結晶学においてラウエの式とは、結晶格子による回折が起きる３つの条件についての式である。名前は物理学者マックス・フォン・ラウエ(1879–1960)に由来する。

ラウエの式からブラッグの法則を導くことができる。

ラウエの式

${𝒌}_{\mathrm{i}}$を入射光の波数ベクトル、${𝒌}_{\mathrm{o}}$を回折光の波数ベクトルとする。入射光と散乱光の波数ベクトルの差${𝒌}_{\mathrm{o}}-{𝒌}_{\mathrm{i}}=\mathrm{\Delta }𝒌$を散乱ベクトルと呼ぶ。

$𝒂$, $𝒃$, $𝒄$を、結晶格子の単位胞の基本ベクトルとする。

散乱ベクトルについてのラウエ条件またはラウエの式とは、整数値である反射指数 (h, k, l) についての次の３つの式をいう。

$\begin{array}{cc}𝒂\cdot \mathrm{\Delta }𝒌& =2\pi h,\\ 𝒃\cdot \mathrm{\Delta }𝒌& =2\pi k,\\ 𝒄\cdot \mathrm{\Delta }𝒌& =2\pi l.\end{array}$

つまり回折が起こるためには、散乱ベクトルは結晶格子の基本ベクトルに関係するある特定の方向でなければならないことを述べている。

ブラッグの法則との関係

$𝑮=h𝑨+k𝑩+l𝑪$が逆格子ベクトルであれば、$𝑮\cdot (𝒂+𝒃+𝒄)=2\pi (h+k+l)$となる。 ラウエの式から$\mathrm{\Delta }𝒌\cdot (𝒂+𝒃+𝒄)=2\pi (h+k+l)$が得られる。 よって$\mathrm{\Delta }𝒌=𝑮$つまり${𝒌}_{\mathrm{o}}-{𝒌}_{\mathrm{i}}=𝑮$となる。

以上のことから回折条件が得られる。

$\begin{array}{cc}{𝒌}_{\mathrm{o}}-{𝒌}_{\mathrm{i}}& =𝑮\\ ({𝒌}_{\mathrm{i}}+𝑮{)}^2& ={𝒌}_{\mathrm{o}}^2\\ {k_i}^2+2{𝒌}_i\cdot 𝑮+G^2& =k_{\mathrm{o}}^2\end{array}$

よって${𝒌}_{\mathrm{o}}^2={𝒌}_{\mathrm{i}}^2$ (つまり弾性散乱) と $𝑮=-𝑮$ (逆格子ベクトルのマイナスは、やはりその逆格子ベクトル)なので、

$2{𝒌}_i\cdot 𝑮=G^2$.

回折条件$2{𝒌}_i\cdot 𝑮=G^2$からブラッグの法則 $2d\sin \theta =n\lambda$が得られる。

参考文献

• Kittel, C. (1976). Introduction to Solid State Physics, New York: John Wiley & Sons. ISBN 0-471-49024-5