ランキン渦

ランキン渦またはランキンの結合渦（テンプレート:Lang-en-short）とは、渦度分布の一様な中核部分と、その外側の渦なしの部分からなる渦である。日常的に水面などに見られる渦を流体力学で考察する際に、単純化された近似モデルとして使われる。

概要　

ランキン渦が考察の対象とするのは、自由表面を持つ水が鉛直軸の周りに回転している状況である。水面には大気圧 $p_{\mathrm{\infty }}$ がかかっているとする。

また、次の仮定を行う：

• 流体は完全流体である。
• 流速は高さ $z$ 方向の成分を持たず、また $z$ に依存しない。すなわち2次元流れである。
• 外力（ここでは重力）はポテンシャルを持つ保存力である。

これを、半径 $a$ の円内に渦度 $\omega$ が一様に分布し、円外は渦なしであるものと考えると、渦の中心から半径 $r$ の位置の速度 $v$ は円周方向成分のみを持ち、

$v(r)=\{\begin{array}{cc}\frac{\omega }{2}r,& (r<a),\\ \frac{\omega }{2}\frac{a^2}{r},& (r>a)\end{array}$

となる。一方、圧力 $p$ は、高さを $z$ で表すと次のように表される：

$p(r,z)=\{\begin{array}{cc}\frac{\rho }{8}{\omega }^2{r}^2-\rho gz,& (r<a),\\ \frac{\rho }{8}{\omega }^2{a}^2(2-\frac{a^2}{r^2})-\rho gz,& (r>a)\end{array}$

ここで $\rho$ は流体の密度、 $g$ は重力加速度である。

無限遠での水面の高さを $z=0$ とすると、自由表面の圧力 $p_{\mathrm{\infty }}$ は $z=0,r\to \mathrm{\infty }$ での圧力に等しいから

$p_{\mathrm{\infty }}=\frac{\rho }{4}{\omega }^2{a}^2$

が成り立ち、これを用いて上式を書き換えれば、

$p(r,z)=\{\begin{array}{cc}\frac{p_{\mathrm{\infty }}}{2}\frac{r^2}{a^2}-\rho gz,& (r<a),\\ \frac{p_{\mathrm{\infty }}}{2}(2-\frac{a^2}{r^2})-\rho gz,& (r>a),\end{array}$

と表される。

水面の形は、上式で $p=p_{\mathrm{\infty }}$ となる高さ $z$ であるから、

$z{|}_{p=p_{\mathrm{\infty }}}(r)=\{\begin{array}{cc}-\frac{p_{\mathrm{\infty }}}{\rho g}(1-\frac{r^2}{2a^2}),& (r<a),\\ -\frac{p_{\mathrm{\infty }}}{\rho g}\frac{a^2}{2r^2},& (r>a)\end{array}$

と得られる。したがって水面は、渦の中では回転放物面の形を持ち、渦の外では $r^2$ に反比例するようなくぼみとなる。くぼみの最深点は

$z{|}_{p=p_{\mathrm{\infty }},r=0}=-\frac{p_{\mathrm{\infty }}}{\rho g}=-\frac{{\omega }^2{a}^2}{4g}$

で与えられ、渦度 $\omega$ と渦の半径 $a$ の積（＝渦の周辺での流速）の2乗に比例する。

関連項目

• バーガース渦