不変面

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動
不変面と黄道の関係を表す概念図。

不変面テンプレート:R(ふへんめん、テンプレート:Lang-en-short)とは、孤立した質点系の全角運動量ベクトルに垂直な平面であるテンプレート:R。特に、天文学においては太陽系などの惑星系天体力学の計算を行う際に、基準面として用いられるテンプレート:R。太陽系においては、角運動量の殆どを占める軌道角運動量の99.69%以上が、木星土星天王星海王星の4つの巨大惑星の寄与によるものであるテンプレート:R。太陽系の不変面は、黄道面に対して約1.58°傾いており、木星軌道と土星軌道の間に収まっているが、太陽系に存在するありとあらゆる天体質量と運動がわかっているわけではないので、不変面の正確な位置を決定することはできていないテンプレート:R

経緯

太陽系の天体力学を扱うに当たっては、一般に黄道面が基準とされていたが、これにはそうすべきという物理学的な根拠がないテンプレート:R。これに対し、フランス数学者天文学者ピエール=シモン・ラプラスは、太陽系の全角運動量ベクトルに垂直で、太陽系の重心を通る平面が一意に決められることを発見し、これを「不変面」と定義し導入したテンプレート:R。系に外力が働かない場合は、全角運動量ベクトルは時間空間に対し常に一定となるので、不変面は文字通り不変となるテンプレート:R。不変面は、決定することができれば、恒久的で自然な系の基準面となり得るテンプレート:R

ラプラス以降、何人かの天文学者が太陽系の不変面を求めてきた。その間に、海王星、冥王星などが発見され、更に探査機などの観測成果によって、太陽系内天体の質量と運動を計算する精度は大きく向上し、理論的な概念だった不変面が、真の不変面に限りなく近いものを求められるようになっているテンプレート:R

過去の不変面の導出例
計算者 黄道面に対する傾斜角 (°) 昇交点黄経 (°) 備考
1802 ラプラステンプレート:R 1.5919 102.9581 1750.0分点
1.5919 102.9542 1750.0分点
テンプレート:Small
1834 テンプレート:仮リンクテンプレート:R 1.5711 103.1458 1800.0分点
1.5708 103.1472 1800.0分点
テンプレート:Small
1872 テンプレート:仮リンクテンプレート:R 1.5788716 106.235000 1850.0分点
1903 シーテンプレート:R 1.5854847 106.1463022 1850.0分点
1920 イネステンプレート:R 1.5831 106.5836 1900.0分点
1955 クレメンス&ブラウワーテンプレート:R 1.6469
± 0.0061
107.222
± 0.035
1950.0分点
1982 ブルクハルトテンプレート:R 1.589706 107.12736 1950.0分点
1.587183 107.60856 2000.0分点
2012 Souami & Souchayテンプレート:R 1.57869 107.5822 2000.0分点

性質

定義

孤立した(外力が及ばない)質点系における不変面は、質点の全角運動力ベクトルに垂直で、かつ系の重心を通る平面と定義される。外力が働かない限り、全角運動量ベクトルは時間に対しても空間に対しても一定であるので、「不変」面と呼ばれる。不変面は、惑星の摂動によって時間と共に変化する黄道面と比べ、単純な幾何学的特性に従い、孤立系の力学における必然的な帰結として導かれるもので、より自然で理に適った天体力学の基準面となるテンプレート:R。不変面は、ラプラスが定義したことにちなんで「ラプラス面」と呼ばれる場合もあるが、一般的に「テンプレート:仮リンク」といえば、衛星などの歳差運動の軸に垂直な平面のことであり、両者を混同すべきではないテンプレート:R

定式化

ニュートン力学の下では、質点がN個の質点系における全角運動量ベクトルは、

Ltot=j=1Nmjrj×r˙j

と表される。ここで、mjrjr˙jはそれぞれj番目の質点の、質量、系の重心を原点とした位置ベクトル、系の重心を原点とした速度ベクトル、を表す。これに、相対論的効果を加味すると、質量のmjは、

mj*=mj[1+r˙j22c212c2(kjGmk|rkrj|)]

で置き換えられる。ここで、c真空中の光速G重力定数であるテンプレート:R

太陽系の例

太陽系において、全角運動量に対する各惑星の寄与は、木星が最も大きく61.368%から61.515%。次いで土星が24.925%から24.957%、海王星が7.994%、天王星が5.406%から5.407%となっているテンプレート:R。ただし、これらは太陽系の重心を中心とした公転運動だけを考慮した、軌道角運動量における内訳である。実際には、全角運動量といった場合には、天体の自転による角運動量、衛星の公転による角運動量も含まれる。特に、圧倒的な質量を持つ太陽の自転による回転角運動量はそれなりに大きく、全角運動量に対しおよそ1%程度の寄与があるとみられる。しかし、太陽内部の構造と対流などの運動の不定性と、太陽の自転の差動回転から、誤差は寄与以上に大きく、精密な計算にはとても用いることができない。また、太陽以外の天体の自転や、衛星の公転は、惑星の公転に比べたら影響は非常に小さい。そのため、これらは全て無視し、公転軌道角運動量だけで計算するのが、実用的な不変面の求め方であるテンプレート:R

全ての惑星の公転軌道面は、惑星間の重力の影響による摂動で、不変面に対して時間変化を示すテンプレート:R地球の場合、およそ10万年の周期で振動しており、不変面に対する軌道傾斜角は0°から3°まで変化するテンプレート:R。木星の場合は、不変面に対する軌道傾斜角は14'から29'まで変化するテンプレート:R

テンプレート:惑星の軌道傾斜角および自転軸傾斜角

脚注

テンプレート:脚注ヘルプテンプレート:Reflist

参考文献

関連項目