二端子対回路

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二端子対回路網の模式図

二端子対回路(にたんしついかいろ、two-terminal pair network, two ports、四端子回路とも)は、入力端子対と出力端子対の2組の端子からなる電気回路またはデバイス。 例えばトランジスタ、フィルタ回路などがある。2端子対回路の分析は1920年代にドイツ人の数学者Franz Breisigによって研究が始められた。

概要

二端子対回路

二端子対回路は、入力と出力の電圧と電流の関係を調べるため、入力と出力の間にある回路を分離し、特有のパラメータで示すことが基本となる。このパラメータが決まると、入力と出力の間にある回路の細部を考える必要が無くなり、一つの特殊な特性を持った暗箱(ブラックボックス)にでき、回路の分析を単純化できる。暗箱に独立した出力端子がなければどんな回路もパラメータで表せ、二端子対回路に変形できる。

二端子対回路で入力と出力の電圧と電流の関係を示すパラメータの種類として、従来より「Zパラメータ」、「Yパラメータ」、「hパラメータ」、「gパラメータ」、「Fパラメータ(en:Two-port network#ABCD-parameters[1])」が用いられてきた。 これらのパラメータは行列で表現する。

V1 入力電圧
V2 出力電圧
I1 入力電流
I2 出力電流[2]

近年では高周波を扱うことのできる、「Sパラメータ」や「Tパラメータ」なども二端子対回路の一種であるが、これらはいずれも電力の関係を示している。

Zパラメータ

インピーダンス行列、Z行列とも。

(V1V2)=(Z11Z12Z21Z22)(I1I2)

Z11Z12Z21Z22の各インピーダンスパラメータは以下のとおり。

Z11=V1I1|I2=0Z12=V1I2|I1=0
Z21=V2I1|I2=0Z22=V2I2|I1=0

Yパラメータ

アドミタンス行列、Y行列とも。

(I1I2)=(Y11Y12Y21Y22)(V1V2)

Y11Y12Y21Y22の各アドミタンスパラメータは以下のとおり。

Y11=I1V1|V2=0Y12=I1V2|V1=0
Y21=I2V1|V2=0Y22=I2V2|V1=0

hパラメータ

ハイブリッド行列、h行列とも。

(V1I2)=(h11h12h21h22)(I1V2)

h11h12h21h22の各ハイブリッドパラメータは以下のとおり。

h11=V1I1|V2=0h12=V1V2|I1=0
h21=I2I1|V2=0h22=I2V2|I1=0

gパラメータ

hパラメータの逆行列で定義される。

(I1V2)=(g11g12g21g22)(V1I2)

g11g12g21g22各パラメータは以下のとおり。

g11=I1V1|I2=0g12=I1I2|V1=0
g21=V2V1|I2=0g22=V2I2|V1=0

Fパラメータ (ABCDパラメータ[1])

伝送行列、F行列、基本行列(Fundamental matrix)とも。 縦続接続する際に都合がよくなる。

(V1I1)=(ABCD)(V2I2)

ここで、I2は上の図とは逆の向きを正にとる。

A・B・C・Dの各四端子定数は以下のとおり。

A=V1V2|I2=0B=V1I2|V2=0
C=I1V2|I2=0D=I1I2|V2=0

Sパラメータ

テンプレート:Main

縦続接続

2つの異なる二端子対回路を縦続(cascade)に接続することを「縦続接続」と呼ぶ。Fパラメータを用いると都合がよい。 ここで、2つの異なる二端子対回路を以下のFパラメータとする。

(V1I1)=(A1B1C1D1)(V2I2)
(V2I2)=(A2B2C2D2)(V3I3)

このとき、V1I1V3I3には以下の関係が成り立つ。

(V1I1)=(A1B1C1D1)(A2B2C2D2)(V3I3)

よって縦続接続したときの回路全体のFパラメータは以下となる。

(ABCD)=(A1B1C1D1)(A2B2C2D2)=(A1A2+B1C2A1B2+B1D2C1A2+D1C2C1B2+D1D2)

直列接続

2つの異なる二端子対回路を直列に接続することを「直列接続」と呼ぶ。Zパラメータを用いると都合がよい。 ここで、2つの異なる二端子対回路を以下のZパラメータとする。

(V1V2)=(Z11Z12Z21Z22)(I1I2)
(V1V2)=(Z11Z12Z21Z22)(I1I2)

このとき、V1V2I1I2は、V1=V1+V1V2=V2+V2I1=I1+I1I2=I2+I2の関係があるので、以下の関係が成り立つ。

(V1V2)=(V1V2)+(V1V2)=(Z11+Z11Z12+Z12Z21+Z21Z22+Z22)(I1I2)

よって直列接続したときの回路全体のZパラメータは以下となる。

(Z11Z12Z21Z22)=(Z11+Z11Z12+Z12Z21+Z21Z22+Z22)

並列接続

2つの異なる二端子対回路を並列に接続することを「並列接続」と呼ぶ。Yパラメータを用いると都合がよい。 ここで、2つの異なる二端子対回路を以下のYパラメータとする

(I1I2)=(Y11Y12Y21Y22)(V1V2)
(I1I2)=(Y11Y12Y21Y22)(V1V2)

このとき、I1I2V1V2は、I1=I1+I1I2=I2+I2V1=V1+V1V2=V2+V2の関係があるので、以下の関係が成り立つ。

(I1I2)=(I1I2)+(I1I2)=(Y11+Y11Y12+Y12Y21+Y21Y22+Y22)(V1V2)

よって並列接続したときの回路全体のYパラメータは以下となる。

(Y11Y12Y21Y22)=(Y11+Y11Y12+Y12Y21+Y21Y22+Y22)

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Physics-stub テンプレート:Normdaten

  1. 1.0 1.1 「Fパラメータ」は「ABCDパラメータ」と同じものを指すが、文献によってI2の定義方向が異なることに注意が必要である。(その場合でも、I2の符号が逆であるので、パラメータ自体は一致する。)
  2. 「Fパラメータ」では第1ポートを入力、第2ポートを出力とみた場合に日本語表現から読み取れる直観的な意味と一致するが、他のパラメータでは日本語表現から読み取れる直観的な意味と一致しないことに注意。en:Two-port network