円周率は3
テンプレート:円周率 円周率は3(えんしゅうりつは3)は、「2002年度実施の小学校学習指導要領の改訂に伴って、日本の算数教育にてそれまで3.14と教えていた円周率の近似値を3テンプレート:Efnと教えることになった」という内容が世間に広まった事象である。実際にはこれは事実ではなく、改訂後も円周率の近似値は3.14で教えている。
1998年(平成10年)12月公示、2002年度実施の学習指導要領において小数乗算の桁数制限などで規程が変わったため、手計算では「円周率を3」として計算させざるを得ないという誤解が生じたテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。「円周率は3.14」で計算することには変わりが無かったものの、「目的に応じて3を用いて処理」という記述と小数計算についての歯止め規定が誤解され、ゆとり教育の象徴として「円周率は3」で教えることになったとの誤報が広まってしまったテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。この誤解はなかなか解消されなかったテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
概要
テンプレート:See also 1999年秋に学習塾大手の日能研が『ウッソー!?円の面積を求める公式 半径×半径×3!?』、『円周率を3.14ではなく、「およそ3」として円の求積計算を行います』と書かれた広告を首都圏の通勤電車の中に大量に張り出すなどして大々的なキャンペーンを行ったテンプレート:Sfn。マスコミもこれを大いに取り上げ、「ゆとり教育(2002年度からの学習指導要領以降)」になった結果、「円周率=3」が誤解として「円周率は3と教えることになった」ということがゆとり教育を(否定的に)象徴するものとして、社会に広く認識されることとなったテンプレート:Rテンプレート:Sfn。
学力低下やゆとり教育への批判として、「円周率は3」は週刊誌テンプレート:Rや月刊誌テンプレート:R、数学関係の雑誌テンプレート:Rなどでも盛んに取り上げられた。学校ドラマで数学教師が「円周率は3ではない」と嘆くシーンが放映されるなどテンプレート:R、フィクションで扱われることもあったテンプレート:R。この誤解はなかなか解消されなかったテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
問題の詳細
「目的に応じて3」の導入
学習指導要領はあくまでも目安として始められたものであるが、ある時期から法的拘束力を持つとされるようになった[1]。またこれに加えて「過不足なく教えなければいけない」という、いわゆる「歯止め規定」も存在した[2]。テンプレート:独自研究範囲これは1998年の改訂時(小学校では2002年度実施)にもこの記述は引き継がれた。 テンプレート:Quotation テンプレート:Quotation
なお、「目的に応じて3を用いて処理」には
- 見積もりをしたい場合に、3で素早く計算する[3]。
- 最初から小数点以下の計算をせず、3でだいたいのアタリを付けて計算間違いをしにくくする。
- 円に近い形状のものに対して周長や面積を概算したいときに、円周率を3として円周や円の面積の計算を行うテンプレート:Sfn。
といったケースが想定され、状況・用途に応じて適切な判断・処理ができる能力の育成を期待しているテンプレート:Sfnという解釈もある。
1998年改訂指導要領の問題点
いわゆる「ゆとり教育」の一環として掛け算や割り算や小数点の算数の学習内容が削減される一方で算数の学習の段階から計算機の使用が許可されるようになった。一方でゆとり教育においては学習内容は削減されているにもかかわらず学習分野は削減しないままであるため、幾何学における円の周の長さや面積の手計算には円周率の概数として3.14ではなく3を授業で使用せざるを得ない状態に陥ったとの誤解が生じたテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn[4]。
また、従来の指導要領で5年生からであった電卓の使用が4年生から可能になっておりテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:R[5]、電卓を用いても3.14による計算が可能であったテンプレート:Sfn。
小数の桁数制限
1998年改訂学習指導要領では小学校第5学年の小数の計算について テンプレート:Quotation という歯止め規定が置かれていたため、これにより円周率として3を使う必要があるとの誤解が生じた。ただし、円周率としては3.14を用いることが明記されているため、歯止め規定が小数の計算全般に及ぶと仮定しても用いられる円周率は3.14であり[注釈 1]、仮に小数の計算全般が1/10の位までに制限される場合、使われる円周率は3.1になるため、いずれにせよ円周率として3が使われることは無い。実際に、文科省がゆとり教育実施前に公表した見解[6]においても「目的に応じて3を用いる」の文言の扱いは現行と同様しており、桁数制限のために置かれた規定とはしていない。
「円周率およそ3」という誤解
そんな折、1999年秋に学習塾大手の日能研が テンプレート:Quotation と書かれた広告を首都圏で大々的なキャンペーンを行いテンプレート:Sfn、マスコミもこれを大いに取り上げたテンプレート:R。これにより、「ゆとり教育(2002年度からの学習指導要領以降)になった結果、円周率は3と教えることになった」ということがゆとり教育を(否定的に)象徴するものとして、社会に広く認識されることとなったテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Rテンプレート:Sfn。
これに対し、当時の文部相としてゆとり教育を進めた有馬朗人は、取材の度に「あれにはがくぜんとしたよ」と繰り返しており[7]、「全国を回り、丁寧に説明することをさぼった私の失敗である」と悔いていたという[7]。
文言の消滅
2003年2月23日の中央教育審議会二答申において、学力重視路線が打ち出されるテンプレート:R。2003年12月に学習指導要領の一部改正が行われて「過不足なく教えなければいけない」という歯止め規定が撤廃され、必要に応じて指導要領に書かれている内容以上の内容(=発展的記述)を教えても良いという最低基準に変更された[8][9]。
その後に2008年2月15日に、文部科学省は教育基本法全面改正後初となる新学習指導要領(小学校は2011年度施行)を公表、歯止め規定についても完全撤廃された[10][11]。学習内容が増加した結果、円周率を使う段階までに小数点の計算の学習が行われる内容になっており、円周率に関する項については「円周率は3.14とする」とだけ記述しており、「目的に応じて3を用いる」という記述が削除されたテンプレート:Sfn。
社会的な影響
理数系・教育関係者への影響
円周率3の問題は、数学関係の雑誌テンプレート:Rや各種学術誌テンプレート:R[12]でも取り上げられた。この誤解はなかなか解消されず、教育関係者でも誤解が多かったテンプレート:Sfn。このような状況に対して神永正博は自著の中で、自身やまわりの教員が小学校の学習指導要領を調べるまで「ゆとり教育は円周率を3と教えるおろかな改革だ」と信じ込んでいたという事実を告白しつつ、「自分で納得いくまで調べてきなさい、などといっている教師がこれでは、教育改革以前の問題だろう」と、自省と周囲への警告で結んでいるテンプレート:Sfn。
なお、円周率をおよそ3として扱う問題点として、様々な指摘がなされた。円周率は無理数であるので、正確には3でも3.14でもない。後者の方がより正確(有効数字はそれぞれ1桁と3桁)であるが両方とも概数である。よって手順の学習においては前者と後者は基本的に同等であるが、概算の精度においては明確な差が存在するテンプレート:R。「問題点」としての様々な指摘としては、前述のように概数ではあるけども、概算の精度においては明確な差が存在するテンプレート:R。円周率を3として計算する場合、円とそれに内接する正六角形の周長が等しくなってしまうことテンプレート:R、直径10cmの円の円周の場合誤差が1.4cmになってしまうことテンプレート:Sfn、などといった指摘がなされた。
また、有効数字の観点から、円周率を3で扱うことに妥当性があること、無駄に「.14」を付ける危険性も指摘されているテンプレート:Sfn[13]テンプレート:Efn。
世間一般への影響
日能研のキャンペーンをマスコミが取り上げた頃、学校ドラマでも数学教師が「円周率は3ではない」と嘆くシーンが放映されるなど、反響は大きかった[14]。さらに週刊誌テンプレート:Rや月刊誌テンプレート:Rなどでも盛んに取り上げられ、公立学校の教育に対する不信感を煽る結果になったテンプレート:Sfn。
また、小説の中で切り捨てられた小数点以下を『0.14の悲劇』として紹介する場面が登場したり[15]、テレビのコントで「円周率は3でOK」を決め台詞としたキャラが登場テンプレート:Rテンプレート:Efn、さらにはゆとり世代を題材にしたアニメにおいても、主題歌に「3.1415 円周率およそ3」というフレーズが入る[16]など、世間一般への浸透は大きかった。
円周率を3と教えることの誤解は2013年のテレビ番組でも池上彰が指摘しており、番組内でマツコデラックスが驚いていたテンプレート:Sfn。
入試問題への影響
2003年東京大学理系前期の第6問に「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」という問題が出題され、「円周率を3として教える」という政府の姿勢に反対するというメッセージ性のある問題として有名となった。非常に短く、シンプルでありながら、強いメッセージ性をもつ良問としてたびたび引用されている[17][18][19]テンプレート:Efn。
- 解答例
- 直径 テンプレート:Math の円 テンプレート:Mvar と、円 テンプレート:Mvar に内接する正12角形を考える。半径 テンプレート:Mvar の円の円周の長さは テンプレート:Math なので、半径が テンプレート:Sfrac である円 テンプレート:Mvar の円周の長さ テンプレート:Mvar は
- となる。また、円 テンプレート:Mvar に内接する正12角形の辺の長さを テンプレート:Mvar とすると
- であり、テンプレート:Mvar を2乗すると
- となる。よって、正12角形の辺の長さ テンプレート:Mvar は 3.05 よりも大きい。円に内接する正12角形の辺の長さ テンプレート:Mvar よりも円 テンプレート:Mvar の円周の長さ テンプレート:Mvar の方が大きいことから
- となる。すなわち
- である。(証明終)
上記の解法では円周率が テンプレート:Math よりも大きいことを正12角形を用いて証明した。この解法と同様に考えることにより、円周率を テンプレート:Math として扱うと、円とそれに内接する正6角形の周長が等しくなってしまう[20][21]。
脚注
注釈
出典
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参考文献
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite web
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite book
関連項目
外部リンク
- 文部科学省 Q「円周率は3」で教えていると聞きましたが、本当ですか。
- 佐々木彰 (2000年4月16日) 円周率3騒動 佐々木彰の「うんちく講座」278.
- 奥村晴彦 (2008年2月16日) 円周率は3? okumura's blog.
- boiseweb (2008年2月17日) 掛け算桁数制限と「円周率は3」問題
- boiseweb (2008年2月17日) 「ゆとり教育で円周率は3」の真相
- たばかれーら (2012年9月7日) 散歩話 第139回 デマと教育 メモ垣露文.
- ↑ 伝習舘高校事件・最高裁判所第一小法廷判決・平成2年1月18日『民集』第44巻第1号、1頁。
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite web
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- ↑ 7.0 7.1 テンプレート:Cite web
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- ↑ 板谷裕子 医学教育概説 教育評価とその運用『岡山医学会雑誌』2004年、116巻1号、pp.29-38,テンプレート:Doi。
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- ↑ 鵜澤武俊、文有彬「環境教育に有用な電気泳動を用いたDNA検出法の開発」、『環境技術』第43巻第5号、2014年、286-292頁、テンプレート:Doi。
- ↑ 霍見芳浩、高田博和 インタビュー『経営行動科学』第18巻第2号、2005年、157-174頁、テンプレート:Doi。
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- ↑ 3年B組金八先生第5シリーズ(1999年10月14日 - 2000年3月30日)
- ↑ 西尾維新『クビキリサイクル』〈戯言シリーズ〉2002年2月。
- ↑ 「ゆとりちゃん」主題歌『ゆとりのゆとり』(フルバージョンの1:34~39)、作詞:yozuca*、2010年4月21日リリース、レーベル:Lantis (LACM-4716)。テンプレート:歌ネット
- ↑ 早田幸政 編集、清成忠男 監修、金沢大学大学教育開発支援センター 企画 国立大学法人化の衝撃と私大の挑戦 エイデル研究所、2005年3月、249頁、ISBN 978-4871683845。
- ↑ 安田亨『入試数学 伝説の良問100 ―良い問題で良い解法を学ぶ―』講談社〈ブルーバックス〉2003年4月、ISBN 978-4062574075。
- ↑ 京極一樹『東大入試問題で数学的思考を磨く本』アーク出版、2013年8月、12頁、ISBN 978-4-86059-130-4。
- ↑ 三田紀房『ドラゴン桜』第10巻、講談社、2005年9月、ISBN 978-4063724660。
- ↑ テンプレート:Cite web
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