塩化アルミニウム

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塩化アルミニウム(えんかあるみにうむ、テンプレート:Lang-en)はアルミニウムの塩化物で、無水物と6水和物が知られている。組成式AlCl3で表される物質である。塩基性塩化アルミニウムの重合体を指して塩化アルミニウムと呼ぶ場合もある。塩化アルミニウム(ポリ塩化アルミニウム・アルミナ10%換算値)2008年度日本国内生産量は582,542t、工業消費量は9,036tである[1]

生成

金属アルミニウム塩素、または塩化水素との反応で無水塩化アルミニウムは生成される。

2Al+3ClA22AlClA3
2Al+6HCl2AlCl3+3HA2

塩化アルミニウムの水和物は無水塩化アルミニウムを塩酸に溶かし生成する。また、水酸化アルミニウムと塩酸の反応、

Al(OH)3+3HCl+3HA2OAlCl3*6H2O

塩酸と金属アルミニウムの直接反応でも得られる。[2]

2Al+6HCl+12HA2O2AlCl3*6H2OA+3HA2

無水塩化アルミニウム

構造式 無水塩化アルミニウム

融点 170.9 ℃の白色固体重合体を形成している。不純物を含むものは淡黄色を帯びる。液体状態では二量体を形成することが知られ、電気伝導度が低い等アルミニウムと塩素との結合は共有結合性である。

160 ℃より昇華性を示し、気体は二量体 Al2Cl6 を形成しており、800 ℃以上で単量体となることが知られている。

金属アルミニウムに直接塩素塩化水素を作用させて製造する。フリーデル・クラフツ反応などルイス酸触媒として有機化学反応等に用いられる。 アルミニウムイオンはとの親和性が強く、激しく加水分解して塩化水素を発生する。

Al3++6HA2O[Al(H2O)6]3+(ΔH=4690kJ/mol)
AlCl3*6H2OAl(OH)3+3HCl+3HA2O[3]

その為、湿気を含む空気中では白煙を発する。エンタルピーの値から分かるように、逆に6水和物から無水物を得る場合は厳しい反応条件を要する。

塩化アルミニウム6水和物

構造式 塩化アルミニウム6水和物

AlClA36HA2O で示される化合物で、アルミニウムに水分子が6つ配位した錯イオンと塩化物イオンとから構成されるイオン性物質。水に溶解すると部分的に水酸化アルミニウムと塩酸とに加水分解する。水溶液を加熱しても再結晶はされず、水酸化アルミニウムが析出する[2]

6水和物は水酸化アルミニウムを塩酸に溶かし、さらに塩化水素ガスを導入して飽和させると得られる。塩析剤や木材の防腐剤、染色剤、写真の定着、防臭あるいは医療用の防汗剤として利用される。

ポリ塩化アルミニウム

水酸化アルミニウムを塩酸に溶解すると塩基性塩化アルミニウムの重合体 [AlA2(OH)AnClA6n]Am が生成し、これをポリ塩化アルミニウムと呼ぶ。主に、上下水道の凝集剤として用いられる。

排出基準

アルミニウムイオンは有害で魚毒性や植物の生育阻害要因となり得るため、水道法の水質基準ではアルミニウム濃度を0.1ppm未満に抑えることが求められる。[4]

このため過度の使用は避け適正な利用が必要である。

空気酸化

長時間空気中に放置すると酸化され酸化アルミニウムの白色結晶が析出するので注意が必要。[5]

安全性

神経毒性

塩化アルミニウムは神経毒として確立されている。ミクログリアの活性化を抑制する作用、血液脳関門(BBB)における膜機能の変化などが示唆されている[6][7][8][9]テンプレート:See also

医療用途

アジュバント(抗原性補強剤)

ニキビ(尋常性痤瘡)治療

  • WHOATC分類では、ざ瘡(にきび)への局所製剤である。米国皮膚科学会によるニキビ治療ガイドライン2016において、塩化アルミニウムの推奨をサポートできる限られたエビデンスがある[11]

局所多汗症治療

  • 局所多汗症治療の第一選択肢として、塩化アルミニウム水溶液の外用が適用となる。塩化アルミニウムが角層内の汗管と結合し、発汗の出口をふさぐことによる制汗作用と考えられている[12]。塩化アルミニウム溶液は病院での院内製剤として、10〜50%溶液が処方されている[13]

脚注

テンプレート:アルミニウムの化合物 テンプレート:Normdaten