塩化アンモニウム
塩化アンモニウム(えんかアンモニウム、ammonium chloride)は、化学式 NH4Cl、式量 53.50 [1]の塩。別名塩安(えんあん、Muriate)[1]。工業薬品JIS K1441-86、試薬JIS K8116-92、食品添加物[1]。
古代ラテン語名のSal Ammoniac(アモンの塩)とも呼ばれるが、これはかつてエジプトのアモン神殿の近くから産出したことにちなむ。この名は、アンモニアの語源ともなった。
特徴
無臭で、無色の[1]結晶または白色粉末。舐めると塩味がする[1]。335 ℃(635℉)で分解昇華し[1]、アンモニアと塩化水素に解離する。結晶は立方晶系であり、低温では塩化セシウム型構造、184.3 ℃以上の高温では塩化ナトリウム型構造が安定となる[2]。低温型の格子定数はa=3.866Å、比重は1.53[1]。高い吸湿性を持つ[1]。
水溶液はほとんど中性もしくは微酸性で、味は苦い。水溶液中のアンモニウムイオンの酸解離定数はテンプレート:PKa=9.25である。
エタノールやメタノールには溶けにくく、アセトンやエーテルには溶解しない[1]。
天然では火山活動及び泥炭の自然発火により生じる。天然に産出する鉱物は塩化アンモン石と呼ばれている。
特性と用途
肥料として単独に、また化学肥料の原料としても広く用いられる[3]。工業用ではマンガン乾電池の電解液、亜鉛のメッキ、染料や染色助剤、光沢剤、電解質等、さらには医薬品原料や皮のなめし剤、火薬の原料にも使われる[1]。また、試薬としても用いられる[1]。
食品添加物としては、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)と併用して膨張剤として使われることが多い[1]。フィンランドなど北欧諸国で人気のあるサルミアッキ(リコリス菓子)というキャンディには塩化アンモニウムが使用されているため塩味とアンモニア臭がする。天然では、ダイオウイカなど一部のイカの仲間が浮力を得るために塩化アンモニウムを体内に保有している場合がある。特定のイカにある“えぐみ”はこのためである。
消石灰と混ぜ加熱しアンモニアを発生させる実験によく使われる。
合成方法
濃塩酸とアンモニアの反応で生成される。ただし工業的に実施される例はほとんどない[1]。
工業的にはソルベー法による副産物として得られる。炭酸水素ナトリウム沈殿除去後の溶液を濃縮して塩化ナトリウムを析出し、次に放冷して塩化アンモニウムを得る[1]。
脚注
関連項目
外部リンク
- テンプレート:Wayback - 文部科学省 国立教育政策研究所
- 塩化アンモニウム (試薬) JISK8116:2006
テンプレート:アンモニウムの化合物 テンプレート:Normdaten
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 テンプレート:Cite book
- ↑ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
- ↑ 特徴としては、1.無硫酸根肥料なので、作物の根腐れの原因となる硫化水素を発生させない。 2.ケイ酸、マグネシウム他ミネラル類の吸収を促進するため、土壌改良資材の効果を高める。 3.硝酸化成速度が穏やかなので高い肥効が続く。更に、土壌の光合成細菌の増殖を促進するのでそれによる窒素肥効の緩効化がある。 4.光合成促進機能がある。 5.イネについては倒伏しにくくなる効果がある。 6.いくつかの作物の食味・栄養価を改善する、等がある(テンプレート:PDFlink(セントラル硝子内塩安肥料ページから))。ただし、塩化カリウムと同様に、塩素を嫌う作物には適さず(塩素感受性植物やサツマイモ、タバコ等の品質に影響の出る作物など)、また作物の実等の生成や質向上に硫黄分を多く必要とする作物については硫安より有意に成績(収量及び品質)が下がる場合がある。また塩安は硫安より土壌pHの低下が発生しやすい。