有限次元分布

数学における有限次元分布（ゆうげんじげんぶんぷ、テンプレート:Lang-en-short）とは、測度論および確率過程の分野に登場するある道具のことを言う。ある測度（あるいは過程）のある有限次元ベクトル空間（あるいは有限時間の全体）への上への「射影」を調べることで、多くの情報が得られる。

測度の有限次元分布

$(X,ℱ,\mu )$ をある測度空間とする。$\mu$ の有限次元分布とは、任意の可測函数 $f:X\to {ℝ}^k$, $k\in \mathbb{N}$ に対するテンプレート:仮リンク $f_{*}(\mu )$ のことを言う。

確率過程の有限次元分布

$(\mathrm{\Omega },ℱ,\mathbb{P})$ をある確率空間とし、$X:I\times \mathrm{\Omega }\to 𝕏$ をある確率過程とする。$X$ の有限次元分布とは、$k\in \mathbb{N}$ に対する直積空間 ${𝕏}^k$ 上の押し出し測度

${\mathbb{P}}_{i_1\dots i_k}^X(S):=\mathbb{P}\{\omega \in \mathrm{\Omega }|(X_{i_1}(\omega ),\dots ,X_{i_k}(\omega ))\in S\}$

のことを言う。

この条件は頻繁に、可測な長方形領域を用いて次のように表現される。

${\mathbb{P}}_{i_1\dots i_k}^X(A_1\times \cdots \times A_k):=\mathbb{P}\{\omega \in \mathrm{\Omega }|X_{i_j}(\omega )\in A_j\mathrm{f}\mathrm{o}\mathrm{r}1\le j\le k\}.$

ある過程 $X$ の有限次元分布の定義は、次のようにして測度 $\mu$ の定義と関連付けられる：$X$ のテンプレート:仮リンク ${ℒ}_X$ とは、$I$ から $𝕏$ への函数の全体 ${𝕏}^I$ 上のある測度であったことを思い出されたい。一般に、これは無限次元空間となる。$X$ の有限次元分布は、有限次元直積空間 ${𝕏}^k$ 上の押し出し測度 $f_{*}\left({ℒ}_X\right)$ である。ここで

$f:{𝕏}^I\to {𝕏}^k:\sigma \mapsto (\sigma (t_1),\dots ,\sigma (t_k))$

は自然な「時間 $t_1,\dots ,t_k$ での評価」の函数である。

緊密性との関連

確率測度の列 $({\mu }_n{)}_{n=1}^{\mathrm{\infty }}$ が緊密で、${\mu }_n$ のすべての有限次元分布が対応するある確率測度 $\mu$ の有限次元分布にテンプレート:仮リンクするなら、${\mu }_n$ は $\mu$ に弱収束する。

関連項目

• テンプレート:仮リンク