有限階作用素
数学の一分野である函数解析学における有限階作用素(ゆうげんかいさようそ、テンプレート:Lang-en-short)とは、値域が有限次元であるようなバナッハ空間の間の有界線型作用素のことをいう。
ヒルベルト空間上の有限階作用素
標準形
有限階作用素は、無限次元の状況で扱われる(有限サイズの)行列である。したがってそれらの作用素は線型代数学の手法によって表現できる。
線型代数学における結果より次が分かる: 複素数成分の長方形行列 テンプレート:Math がテンプレート:Nowrap であるための必要十分条件は、テンプレート:Mvar が の形に表わされることである。全く同様の議論で、ヒルベルト空間 テンプレート:Mvar 上の作用素 テンプレート:Mvar のテンプレート:Nowrap であるための必要十分条件は、 であることが分かる。ここで テンプレート:Mvar に対する条件は有限次元の場合と同じである。
したがって、帰納的に、有限テンプレート:Nowrap の作用素は次の形を持つ:
ここで テンプレート:Math は正規直交基底である。これは本質的に特異値分解の言い換えであることに注意されたい。この形を、有限階作用素の標準形(canonical form)という。
わずかに一般化し、可算無限個の テンプレート:Mvar と テンプレート:Math にのみ集積する正の数列 テンプレート:Math を考えるとき、テンプレート:Mvar はコンパクト作用素となり、コンパクト作用素に対する標準形が得られる。
級数 テンプレート:Math が収束するなら、テンプレート:Mvar はトレースクラス作用素である。
代数的性質
ヒルベルト空間 テンプレート:Mvar 上の有限階作用素 F(H) の族は、テンプレート:Mvar 上の有界作用素の多元環 テンプレート:Math における両側 テンプレート:Nowrapを形成する。実際、それはそのようなイデアルの間の極小元である。すなわち、テンプレート:Math 内の任意の両側 テンプレート:Nowrap テンプレート:Mvar は有限階作用素を含む必要がある。これを証明するのは難しくない。ゼロでない作用素 テンプレート:Math を取ると、ある テンプレート:Math に対して テンプレート:Math が成り立つ。このとき任意の テンプレート:Math に対して、テンプレート:Mvar に属する テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar へのテンプレート:Nowrap の作用素 テンプレート:Mvar の存在を示せば十分である。テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar へのテンプレート:Nowrap の作用素 テンプレート:Mvar を定義し、また同様に テンプレート:Mvar を定義する。このとき が成り立つが、これは テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar に属することを意味し、主張は示される。
テンプレート:Math 内の両側 テンプレート:Nowrapの例として、トレースクラス、ヒルベルト=シュミット作用素、コンパクト作用素などがある。テンプレート:Math はこれらの三つのイデアルのすべてにおいて、各ノルムについて稠密である。
テンプレート:Math 内の任意の両側イデアルは テンプレート:Math を必ず含むため。多元環 テンプレート:Math が単純であるための必要十分条件は、それが有限次元であることである。
バナッハ空間上の有限階作用素
バナッハ空間の間の有限階作用素 は、値域が有限次元の有界作用素である。ヒルベルト空間の場合と同様に、それは次のように表すことが出来る:
ここで と は空間 テンプレート:Mvar 上の有界線型汎函数である。有界線型汎函数は、有限階作用素の特別な場合、すなわちテンプレート:Nowrap の場合である。