極小モデル
テンプレート:読み仮名 ruby不使用とは、標準因子がテンプレート:仮リンクな テンプレート:Math 分解的かつ末端特異点のみを持つ標数0の射影的なテンプレート:仮リンクのことであるテンプレート:Sfn。一般型の非特異射影多様体に対しては自身と双有理同値な極小モデルが存在することが証明されているテンプレート:Sfn。
序論
極小モデルの概念は20世紀初頭のテンプレート:仮リンクによる代数曲面の研究に起源を持つテンプレート:Sfn。その学派の一人であるテンプレート:仮リンクのテンプレート:仮リンクによれば、複素数体上の滑らかな射影的代数曲面の上に (−1) 曲線と呼ばれる曲線があればその曲線を一点に潰すことができるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。潰したあとの代数曲面もやはり滑らかな射影的代数曲面になっているので、そこにまた (−1) 曲線があれば再びカステルヌオヴォの収縮定理を適用してその曲線を潰すことができる。こうして (−1) 曲線があるかぎり潰すという操作を繰り返すことができる。ただし潰すことによりピカール数という非負の値しか取り得ない数が減少するので無限回繰り返すことはできない。よって有限回の繰り返しの後に (−1) 曲線のない代数曲面に到達する。最後に到達した代数曲面は、特別な例外を除き標準因子がネフという性質を持つ代数曲面になっている。この代数曲面は、2つの代数曲面 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar の間に射影的双有理射 テンプレート:Math が存在しうるとき「テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar より大きい」とする順序関係テンプレート:Sfnで極小になっている。素性のよくわかっている双有理変換を繰り返すことにより大域的性質が少し簡単テンプレート:Sfnになったものを見つけることができたのである。
1980年代に森重文によって始められた高次元にも適用可能な極小モデル理論(森理論とも呼ばれる)[1]も収縮定理(contraction theorem)と呼ばれる定理を繰り返し用いて特別な代数多様体(基礎体は標数0の代数閉体とする)を見つけようとする点は同じであるテンプレート:Sfn。しかし高次元特有の現象が現れるのでその分難しくなる。
まず、滑らかな代数多様体を収縮させた結果が滑らかになるとは限らず、マイルドな特異点が生じる場合があるテンプレート:Sfn。そのため収縮定理を繰り返し使うためにはマイルドな特異点を持つ代数多様体に対して予め収縮定理を証明しておく必要がある。そもそもどの程度の特異性まで許して理論を構築するかが問題となるが、理論が構築可能な最も小さな特異点のクラスは末端特異点と呼ばれる特異点のクラスであるテンプレート:Sfn。
つぎに、収縮させた結果「非常に悪い」特異点が生じる場合があるテンプレート:Sfn。この場合には収縮後の代数多様体の標準因子は テンプレート:Math カルティエにすらならない。この状況では、収縮ではなく部分代数多様体を除去して別のものに取り替えるテンプレート:仮リンクと呼ばれる操作を行う。フリップは位相幾何学におけるテンプレート:仮リンクの代数幾何学版である。フリップの存在は3次元の場合に テンプレート:Harvtxt によって証明され一般次元の場合には テンプレート:Harvtxt で証明されたテンプレート:Sfn。
こうして高次元では収縮定理とフリップを繰り返す手続きとして極小モデル・プログラムが定式化された。この手続きが有限回で終わるためにはフリップを無限回繰り返すことはできないというフリップの停止予想が証明されなければならないが、これは一般には未解決であるテンプレート:Sfn。この予想が正しければ、与えられた代数多様体に対して有限回の収縮とフリップを繰り返すことにより、最終的に元の代数多様体と双有理同値な極小モデルか森ファイバー空間が得られるテンプレート:Sfn。
概説
引き続き代数多様体の基礎体は標数0の代数閉体とする。正標数の極小モデル理論も研究が進められているテンプレート:Sfnが、標数が0でないと広中の特異点解消定理やコホモロジーの消滅定理が自由に使えないテンプレート:Sfn。
用語
代数多様体 テンプレート:Mvar は各点 テンプレート:Mvar での局所環 テンプレート:Math が正規環となるとき正規代数多様体であるというテンプレート:Sfn。代数多様体 テンプレート:Mvar が正規であれば標準因子 テンプレート:Math が定義されるのでそれを テンプレート:Math とかくテンプレート:Sfn。
正規代数多様体はその上の任意の素因子が テンプレート:Math カルティエ因子となるとき テンプレート:Math 分解的(テンプレート:Math‐factorial)であるというテンプレート:Sfn。正規代数多様体が テンプレート:Math 分解的なら交点理論をヴェイユ因子に対して用いることができるテンプレート:Sfn。この条件は見た目より強力でおまじないのように仮定されるテンプレート:Sfn。標準因子が テンプレート:Math カルティエなら交点数が定義され標準因子がネフかどうかを問うことができるテンプレート:Sfn。高次元では少なくとも標準因子が テンプレート:Math カルティエと仮定しなければ本質的には何も得られないようである。
正規代数多様体 テンプレート:Mvar は標準因子 テンプレート:Math が テンプレート:Math カルティエであって適当な特異点解消 テンプレート:Math を取ると
が成り立つとき、末端特異点(terminal singularity)のみを持つというテンプレート:Sfnテンプレート:Efn2。ここで テンプレート:Math は テンプレート:Math の テンプレート:Mvar による引き戻し、テンプレート:Math は0未満の数、テンプレート:Math はすべての例外素因子をわたり テンプレート:Math は両辺の テンプレート:Math カルティエ因子が テンプレート:Math 線形同値であることを表す記号である。この特異点のクラスが極小モデル・プログラムが機能する最も小さな特異点のクラスであるテンプレート:Sfn。
正規かつ射影的な代数多様体 テンプレート:Mvar は Q 分解的で標準因子がネフかつ末端特異点のみを持つとき極小モデル(minimal model)であるというテンプレート:Sfn。
収縮定理
テンプレート:Mvar を テンプレート:Math 分解的な末端特異点のみを持つ射影的正規代数多様体とする。標準因子 テンプレート:Math がネフでなければ基本収縮写像と呼ばれる別の代数多様体 テンプレート:Mvar への射 テンプレート:Math が少なくとも1つ存在する。テンプレート:Mvar は次の3種類のうちいずれかになっているテンプレート:Sfn。
- (1) テンプレート:Math。このとき テンプレート:Math を森ファイバー空間あるいはファノ・ファイバー空間テンプレート:Sfnという。テンプレート:Mvar のファイバーは大変特殊な多様体になっていて、このような テンプレート:Mvar が存在する場合には テンプレート:Mvar を理解するという問題をその特殊な多様体と低次元の多様体 テンプレート:Mvar を理解するという問題に帰着できるテンプレート:Sfn。
- (2) テンプレート:Mvar は双有理(特に テンプレート:Math)かつその例外集合は素因子。このときの テンプレート:Mvar を因子収縮写像という。テンプレート:Mvar のピカール数は テンプレート:Mvar のピカール数よりも小さくなっているので テンプレート:Mvar はより簡単な多様体であるとみなせるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar は再び テンプレート:Math 分解的かつ末端特異点のみを持つ射影的正規代数多様体になっているので、テンプレート:Math がネフでなければ再び基本収縮写像をとることができる。
- (3) テンプレート:Mvar は双有理かつその例外集合は余次元が2以上の閉集合。このときの テンプレート:Mvar を小さな収縮写像という。この場合は高次元においてはじめて生じる状況であるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar の標準因子は何倍してもカルティエにならないという非常に悪い特異点を持っている。
基本収縮写像の存在は次のように証明されるテンプレート:Sfn。標準因子がネフではないという仮定からテンプレート:仮リンクにより端射線(extremal ray)が存在する。端射線の支持因子というものを何倍かした因子に付随する有理写像が固定点自由化定理(base point free theorem)により実は射であることがわかる。この射をテンプレート:仮リンクした射が基本収縮写像となっている。3つのパターンは射の像と例外集合の次元による場合分けである。端射線より広い概念である端錐面(extremal face)というものもあり、端錐面に伴う収縮写像も存在する。この端錐面に伴う収縮写像が存在するという定理が収縮定理(contraction theorem)と呼ばれている。錐体定理と固定点自由化定理は極小モデル理論の2つの柱であるテンプレート:Sfn。
極小モデル・プログラム
滑らかな射影的正規代数多様体 テンプレート:Math に対する次の手続きを極小モデル・プログラム(minimal model program = MMP)というテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
- (0) テンプレート:Mvar に テンプレート:Math を入力する。
- (1) テンプレート:Mvar の標準因子 テンプレート:Math がネフかどうかで場合分けする。
- (1a) ネフの場合。テンプレート:Mvar を出力して手続きを終える。極小モデルが出力される。
- (1b) そうではない場合。基本収縮写像 テンプレート:Math を一つ取って次に進む。
- (2) 基本収縮写像のタイプで場合分けする。
- (2a) 森ファイバー空間の場合。テンプレート:Mvar を出力して手続きを終える。森ファイバー空間が出力される。
- (2b) 因子収縮写像の場合。テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の代わりに入力して (1) に戻る。
- (2c) 小さな収縮写像の場合。フリップ テンプレート:Math を取って テンプレート:Math を テンプレート:Mvar の代わりに入力して (1) に戻る。
フリップを無限回繰り返すことはできないというフリップの停止予想が正しければ以上の手続きは有限回で停止して元の代数多様体 テンプレート:Math と双有理同値な極小モデルか森ファイバー空間が得られる。
脚注
注釈
出典
参考文献
書籍
解説記事
- テンプレート:Cite journal
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