順序指数体
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数学における順序指数体(じゅんじょしすうたい、テンプレート:Lang-en-short)は、順序体であって(実数全体の成す順序体上の指数函数の概念を一般化する)適当な条件を満たす函数を備えたものを言う。
定義
順序体 テンプレート:Mvar 上で定義された指数函数 (exponential) テンプレート:Mvar とは、加法群 テンプレート:Mvar から乗法群 テンプレート:Math の上への狭義単調増大な群準同型を言い、順序体 テンプレート:Mvar とその上の指数函数 テンプレート:Mvar との対 テンプレート:Math を順序指数体と呼ぶ。
例
- 順序指数体の標準的な例は、実数全体の成す順序体 テンプレート:Mathbf に テンプレート:Mvar (テンプレート:Math) の形に書ける任意の指数函数を併せたものである。そのような函数のひとつに、自然指数函数 テンプレート:Math がある。順序体 テンプレート:Mathbf と自然指数函数との対として与えられる順序指数体を テンプレート:Math で表す。1990年代には テンプレート:Math がテンプレート:Ill2であることが示され、テンプレート:Ill2と呼ばれる。この結果とテンプレート:Ill2に関する Khovanskiĭ の定理を併せれば テンプレート:Math が テンプレート:Ill2でもあることが示される[1]。アルフレッド・タルスキ―が テンプレート:Math の決定可能性の問題を提起したので、いまではそれをテンプレート:Ill2と呼ぶ。実数版のシャニュエル予想が真ならば テンプレート:Math が決定可能であるということは知られている[2]。
- 超現実数全体の成す順序体 テンプレート:Mathbf には テンプレート:Mathbf 上の自然指数函数 テンプレート:Math の延長となる指数函数が定義できる。テンプレート:Mathbf はアルキメデス性を持たないから、これは非アルキメデス順序指数体の例を与えるものである。
- テンプレート:Ill2全体の成す順序体 テンプレート:Math は、標準的な指数函数を持つような仕方で具体的に構成される。
形式指数体
形式指数体あるいは指数閉体とは、(本項で言う意味での)指数函数 テンプレート:Mvar を定義可能な順序体を言う。任意の形式指数体 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mvar 上の指数函数 テンプレート:Mvar を適当な自然数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math を満たすように選ぶことができる[3]。
性質
- 任意の順序指数体 テンプレート:Mvar は冪根閉 (root-closed) である。すなわち テンプレート:Mvar の任意の正元が任意の正整数 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar-乗根を持つ(別な言い方をすれば、テンプレート:Mvar の正元全体の成す乗法群が可除群を成す)。このことは、任意の テンプレート:Math に対して となることを見ればわかる。
- これにより、任意の順序指数体はテンプレート:Ill2になることがわかる。
- これにより、任意の順序指数体は順序テンプレート:Ill2であることがしたがう。
- 任意の実閉体が必ずしも形式指数体となるわけではない。例えば、実代数的数全体の成す体には指数函数を入れることができない。なぜならば、実数体の任意の形式指数部分体 テンプレート:Mvar において、指数函数 テンプレート:Mvar は適当な元 テンプレート:Math (テンプレート:Math) に対して テンプレート:Math の形をしていなければならない、にも拘らず が テンプレート:Math のとき代数的でないことがゲルフォント–シュナイダーの定理から従う。
- その帰結として、形式指数体全体の成すクラスはテンプレート:Ill2でないことが言える(実数体と実代数的数体はテンプレート:Ill2な構造であった)。
- 形式指数体全体の成すクラスはテンプレート:Ill2である。これは体 テンプレート:Mvar が指数閉であるための必要十分条件が、全射 テンプレート:Math が存在して テンプレート:Math かつ テンプレート:Math となることであり、テンプレート:Mvar に関するこれらの性質は公理化可能であることによる。
関連項目
注
参考文献
- ↑ A.J. Wilkie, Model completeness results for expansions of the ordered field of real numbers by restricted Pfaffian functions and the exponential function, J. Amer. Math. Soc., 9 (1996), pp. 1051–1094.
- ↑ A.J. Macintyre, A.J. Wilkie, On the decidability of the real exponential field, Kreisel 70th Birthday Volume, (2005).
- ↑ Salma Kuhlmann, Ordered Exponential Fields, Fields Institute Monographs, 12, (2000), p. 24.