飽和集合

飽和集合（ほうわしゅうごう）は、数学（特に集合論や位相空間論の下位分野）において、集合 $C$ と関数 $f:X\to Y$ に対して、$C$ が $f$ の定義域 $X$ の部分集合で、$f$ が2点 $c\in C$ と $x\in X$ を同じ値に写すならば、$x$ は $C$ に属する（つまり、$f(x)=f(c)$ ならば $x\in C$ である）とき、$C$ は $f$ について飽和的あるいは飽和している（saturated）という。より簡潔には、集合 $C$ は $C=f^{-1}(f(C))$ のとき、飽和しているという。

位相空間論において、位相空間 $(X,\tau )$ の部分集合が $X$ の開集合の交差に等しいときに、その部分集合は飽和しているという。T₁空間では任意の集合が飽和している。

定義

準備

$f:X\to Y$ を写像とする。任意の部分集合 $S\subseteq X$ に対して、$f$ による像を、集合$$f^{-1}(y):=f^{-1}(\{y\})=\{x\in X\mid f(x)=y\}$$と定義し、$f$ の原像あるいは逆像を、集合$$f(S):=\{f(s)\mid s\in S\}$$と定義する。$y\in Y$ をとるとき、$f$ の $y$ 上のファイバーとは、原像$$f^{-1}(S):=\{x\in X\mid f(x)\in S\}$$と定義する。

飽和集合

集合 $C$ が $f$ の定義域 $X$ の部分集合で、以下の同値な条件のいずれかを満たしているとき、$C$ は テンプレート:Em あるいは テンプレート:Emという：テンプレート:Sfn

1. $C=f^{-1}(f(C))$ 。
2. ある集合 $S$ が存在して $C=f^{-1}(S)$ となる。
   • このような集合 $S$ は $f(C)$ を部分集合として含む必要がある。また、等式$f(C)=S\cap \mathrm{Im}f$ も満たす必要がある。ここで、$\mathrm{Im}f:=f(X)$ は $f$ の像を意味する。
3. $c\in C$ と $x\in X$ が $f(x)=f(c)$ を満たすならば、$x\in C$ である。
4. $y\in Y$ について、ファイバー $f^{-1}(y)$ が $C$ と交叉する（すなわち $f^{-1}(y)\cap C\ne \varnothing$ ）とき、このファイバーは $C$ の部分集合でなければならない（すなわち $f^{-1}(y)\subseteq C$ ）。
5. 任意の $y\in Y$ に対して、交叉 $C\cap f^{-1}(y)$ は空集合 $\varnothing$ または $f^{-1}(y)$ に等しい。

例

$f:X\to Y$ を任意の関数とする。$S$ が任意の集合のとき、その $f$ の元での原像 $C:=f^{-1}(S)$ は$f$-飽和集合でなければならない。特に、写像 $f$ の任意のファイバーは $f$-飽和集合である。

空集合 $\varnothing =f^{-1}(\varnothing )$ と定義域 $X=f^{-1}(Y)$ は常に飽和している。飽和集合の任意の合併は飽和集合であり、同じく飽和集合の任意の交叉も飽和集合である。

性質

$S$ と $T$ を任意の集合とし、$f:X\to Y$ を任意の関数とする。

$S$ または $T$ が $f$-飽和ならば、$$f(S\cap T)=f(S)\cap f(T).$$$T$ が $f$-飽和ならば$$f(S\setminus T)=f(S)\setminus f(T)$$である。ここで特に、集合 $S$ について何の条件も課していないことに留意しよう。

$\tau$ が $X$ の位相（開集合族）であり、$f:X\to Y$ が任意の写像のとき、 $X$ の飽和的な開集合 $U\in \tau$ 全体のなす集合族 ${\tau }_f$ は $X$ の位相になる。$Y$ が位相空間のときは、$f:(X,\tau )\to Y$ が連続（resp. 商写像）であるときかつそのときに限り、同じことが $f:(X,{\tau }_f)\to Y$ についても成り立つ。

参照

• テンプレート:Cite encyclopedia
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Munkres Topology