p-クマル酸
テンプレート:Chembox p-クマル酸(テンプレート:Lang-en)は、ケイ皮酸のヒドロキシ誘導体であるヒドロキシケイ皮酸である。クマル酸には、o-クマル酸、m-クマル酸、p-クマル酸の3つの異性体があり、フェニル基上のヒドロキシ基の位置で区別される。p-クマル酸は、3種類の中で天然に最も多く存在する。trans-p-クマル酸とcis-p-クマル酸の2種類がある。
水に対しては難溶性であるが、エタノールやジエチルエーテルにはよく溶ける結晶性固体である。
シナピルアルコール及びコニフェリルアルコールとともに、リグニンの主要な構成要素となっている。
天然の存在
p-クマル酸は、Gnetum cleistostachyumに含まれる[1]。
食品
p-クマル酸は、ラッカセイ、シロインゲンマメ、トマト、ニンジン、ニンニク等、様々な食用植物に含まれる。ワインや酢の中にも含まれ[2]、またオオムギにも含まれる[3]。
誘導体
p-クマル酸グルコシドは、アマ種子を含むパンに含まれる[5]。p-クマル酸ジエステルは、カルナウバロウに含まれる。
代謝
生合成
P450依存性酵素のtrans-ケイ皮酸-4-モノオキシゲナーゼによって、ケイ皮酸から生成される。
チロシンアンモニアリアーゼの作用で、L-チロシンからも作られる。
+ アンモニア + H+
生化学
p-クマル酸は、ワイン中でブレタノマイセス属酵母により生産される4-エチルフェノールの前駆体となる。この酵母は、4-ヒドロキシケイ皮酸デカルボキシラーゼにより、p-クマル酸を4-ビニルフェノールに変換する[6]。4-ビニルフェノールは、さらにビニルフェノールレダクターゼによって還元されて4-エチルフェノールとなる。匂いによるブレタノマイセス属の同定のため、培地にクマル酸が添加されることがある。
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Brettanomycesによるp-クマル酸から4-エチルフェノールの変換
cis-p-クマル酸グルコシルトランスフェラーゼは、UDP-グルコースとcis-p-クマル酸を用いてp-クマル酸グルコシドとUDPを生成する酵素である。この酵素は、グリコシルトランスフェラーゼ、特にヘキソシルトランスフェラーゼのファミリーに属する[7]。
フロレト酸は、干し草を食べるヒツジの第一胃で見られ、p-クマル酸の2-プロペン酸側鎖への水素付加により生成される[8]。
医療への利用
p-クマル酸は抗酸化物質活性を持ち、発癌性のニトロソアミンの生成を抑制することで[9]胃癌のリスクを減少させると考えられている[10]。
生物作用
p-クマル酸は蜂蜜中に存在するが、養蜂業者が餌として与える異性化糖由来の代替餌には存在しない。p-クマル酸は、特定の殺虫剤を無毒化するため、この欠乏が蜂群崩壊症候群の一因になっているとの説もある[4]。