べき乗法

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べき乗法(冪乗法、べきじょうほう)とはあるn×n行列の固有値のうち、絶対値最大のものを求める手法の総称であり、いくつかのバリエーションがある。累乗法とも呼ばれる。

典型的には、与えられたn×n行列𝐀に対して、適当な初期ベクトル𝐱(0)から始めて、逐次

𝐱(k)=𝐀𝐱(k1)

を計算することで、𝐱(k)𝐀の絶対値最大の固有値λ1に属する固有ベクトルの方向に漸近していくことを利用し、

limk𝐱(k)T𝐱(k)𝐱(k)T𝐱(k1)=λ1

により絶対値最大の固有値を得る。ただしベクトル列{𝐱(k)}が定ベクトルに収束していくわけではないことに注意する。

また、べき乗法に類似した、絶対値最小の固有値を求める方法として逆べき乗法がある。

収束の証明

簡単のため、n×n行列𝐀の固有値λi(i=1,2,,n)がすべて互いに異なり

λ1>λ2>>λn

であるとする。ここで、λiに属する𝐀の固有ベクトルを𝐮iとすると、𝐮i

𝐀𝐮i=λi𝐮i

をみたす。また、𝐮iは互いに1次独立なので、初期ベクトル𝐱(0)はこれらの1次結合により

𝐱(0)=c1𝐮1+c2𝐮2++cn𝐮n

と表すことができる。ここで、c10とすれば、𝐱(k)は以下のように表される。

𝐱(k)=𝐀k𝐱(0)=c1λ1k𝐮1+c2λ2k𝐮2++cnλnk𝐮n=c1λ1k{𝐮1+c2c1(λ2λ1)k𝐮2++cnc1(λnλ1)k𝐮n}

仮定よりλl/λ1<1(l1)なので、kのとき𝐱(k)は絶対値最大の固有値λ1に属する固有ベクトル𝐮1と同じ方向c1λ1k𝐮1に近づいていく。


絶対値最大の固有値λ1を求めるときは、

𝐱(k1)=c1λ1k1{𝐮1+c2c1(λ2λ1)k1𝐮2++cnc1(λnλ1)k1𝐮n}

より、

limk𝐱(k)T𝐱(k)𝐱(k)T𝐱(k1)=λ1

となることを利用する。

行列𝐀の固有値が重複を持ち更に対角化可能でない場合も、ジョルダン標準形を考えれば同様の考え方で証明できる。

欠点

最大固有値と、その次に大きい固有値の差が小さすぎる場合、収束が極めて遅くなる。

参考文献

テンプレート:参照方法

関連項目

テンプレート:Linear algebra