偶関数と奇関数
テンプレート:出典の明記 数学において偶関数(ぐうかんすう、テンプレート:Lang-en-short)および奇関数(きかんすう、テンプレート:Lang-en-short)は、変数の符号を反転させる変換に関してそれぞれ、特定の対称性を満足する関数である。これらは解析学の多くの分野、殊に冪級数やフーリエ級数に関する理論において重要である。名称は、この性質を満足する冪関数の冪指数の(整数としての)偶奇に由来する(すなわち、関数 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar が偶数のとき偶関数であり、テンプレート:Mvar が奇数のとき奇関数である)。
この、関数の偶奇性 (parity of function) の概念は、始域および終域がともに加法逆元(マイナス元)を持つような場合であれば常に意味を成す。加法逆元を持つような代数系には、例えば任意のアーベル群、(必ずしも可換でない)環や体、あるいはベクトル空間などが挙げられるから、従って例えば実変数実数値の関数やベクトル変数複素数値の関数といったようなものに対して、その偶奇性を定めることができる。
以下では特に断りのない限り、それら函数のグラフの対称性を詳らかにするために、実変数実数値函数に関して述べる。








定義
関数 テンプレート:Math が偶関数であるとは、
が任意の テンプレート:Mvar について成立することであるテンプレート:Sfn[1][2]。また、関数 テンプレート:Math が奇関数であるとは、
が任意の テンプレート:Mvar について成立することであるテンプレート:Sfn[1][2]。
性質
基本
- 偶関数 テンプレート:Mvar は、テンプレート:Mvar-平面上に テンプレート:Math のグラフを描いたとき テンプレート:Mvar 軸に関して対称(線対称)になる。
- 奇関数 テンプレート:Mvar は、テンプレート:Mvar-平面上に テンプレート:Math のグラフを描いたとき原点に関して対称(点対称)になる。特に、テンプレート:Math が定義されているならば テンプレート:Math である。
- 奇関数と偶関数の和は一般には奇関数でも偶関数でもない。(例:テンプレート:Math)
- いくつかの偶関数があるときに、それらの定数倍を足し合わせたもの(線型結合)も偶関数になる。
- いくつかの奇関数があるときに、それらの定数倍を足し合わせたものも奇関数になる。
- 2 つの偶関数の積は偶関数[1]
- 2 つの奇関数の積は偶関数[1]
- 偶関数と奇関数の積は奇関数[1][2]
- 偶関数が微分可能なとき、1 回微分すると奇関数になる。
- 奇関数が微分可能なとき、1 回微分すると偶関数になる。
級数
- 偶関数の0まわりのテイラー級数は テンプレート:Mvar の偶数次の項だけを持つべき級数である。
- 奇関数の0まわりのテイラー級数は奇数次の項だけを持つべき級数である。
- 周期的な偶関数のフーリエ級数は テンプレート:Math の項だけで構成される。
- 周期的な奇関数のフーリエ級数は テンプレート:Math の項だけで構成される。
函数の偶奇分解
偶関数全体の成す集合、奇関数全体の成す集合はともにベクトル空間の構造を持つ(さらに偶関数の全体は可換多元環を成す。一方、奇関数の全体は積について閉じておらず多元環を成さない)。
また、任意の関数 テンプレート:Math に対し、
で定義される函数 テンプレート:Math および テンプレート:Math はそれぞれ偶関数および奇関数[1]であり、それぞれ テンプレート:Mvar の偶成分 (even part) および奇成分 (odd part) という。
このとき、明らかに テンプレート:Math が成り立つが、関数 テンプレート:Math が偶関数かつ奇関数となるのは テンプレート:Math のとき、かつそのときに限るから、そのような表し方はただ一通りである。すなわち、関数全体の成すベクトル空間は、偶関数全体の成すベクトル空間と奇関数全体の成すベクトル空間の直和に分解される。
例
偶関数
- 絶対値関数 テンプレート:Math
- 余弦関数[3] テンプレート:Math
- 双曲線余弦関数 テンプレート:Math
- テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math 等の偶数次冪関数 テンプレート:Math(テンプレート:Mvar は整数)。
- 定数関数
- 任意の関数 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math
奇関数
- 正弦関数[3] テンプレート:Math
- 正接関数 テンプレート:Math
- 双曲線正弦関数 テンプレート:Math
- テンプレート:Mvar, テンプレート:Math, テンプレート:Math 等の奇数次冪関数 テンプレート:Math(テンプレート:Mvar は整数)
- 逆正弦関数 テンプレート:Math
- 逆正接関数 テンプレート:Math
- 逆双曲線正弦関数 テンプレート:Math
- 単射な奇関数 テンプレート:Math の逆関数 テンプレート:Math
- 任意の関数 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math