華氏

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カ氏度華氏度(かしど、テンプレート:Lang-en、記号: テンプレート:°F)は、数種ある温度のうちのひとつであり、1度の温度間隔がケルビンの1.8分の1(9分の5) である。真水凝固点を32 カ氏温度、沸点を212 カ氏温度とし、その間を180等分して1 カ氏度としたものである。

概要

ドイツの物理学者ガブリエル・ファーレンハイト1724年に提唱した。

カ氏度は他の温度と同様「」の単位がつけられ、他の温度による値と区別するためにファーレンハイトの頭文字を取って“°F”と書き表される。

「32 °F」は日本語では「華氏32度」、「32 カ氏度」、英語では“32 degrees Fahrenheit”または“32 °F”と表現される。

語源

考案者のガブリエル・ファーレンハイトにちなむ。ファーレンハイト度、華氏度(かしど)ともいう。華氏の語源は、ファーレンハイトの中国音訳「華倫海特」(ファルンハイトゥ、テンプレート:Lang-zh)から「」+人名に付ける接尾辞「」で、「華氏」「温度」になった。

カ氏度とカ氏温度

セルシウス度(degree Celsius)」と「セルシウス温度(Celsius temperature)」が異なる概念であるのと同様に、「カ氏度(degree Fahrenheit)」と「カ氏温度(Fahrenheit temperature)」とは異なる概念である。すなわち、計量単位令の別表第7 項番3が定義しているように、カ氏度は温度間隔を指し、カ氏温度はカ氏度で表される温度を指す。しかし一般にはこの違いは意識されず混同されることが多い。

計量法における位置づけ

日本の計量法では、ヤード・ポンド法の一つとして、例外的に限定した取引又は証明(ヤード・ポンド法#日本における使用を参照)に用いる場合にあっては「当分の間、法定計量単位とみなす。」こととされている(計量法附則第5条第2項)。

その計量単位は「カ氏度」と定められている[1]。したがって、計量法上は、「ファーレンハイト度」や「華氏度」を使用することは禁止されている(詳細は、セルシウス度#用法を参照)。

カ氏度とカ氏温度の定義は次の通りである[1]計量法上は、カ氏度・カ氏温度は、セルシウス度・セルシウス温度から定義されているのではなく、SI基本単位であるケルビンとケルビンで表した熱力学温度の値によって直接に定義されている。

テンプレート:Quotation

カ氏は温度間隔であるから、単に「ケルビンの1.8分の1」と定義される。これに対して、カ氏温度は、温度の高さであるから、「熱力学温度の値の1.8倍 - 459.67」とやや複雑である。 なお、上記の定義中の数値、459.67 = 273.15 × 1.8 - 32 の関係がある。

セルシウス温度をカ氏温度で表すと「セルシウス温度の値の1.8倍に32を加えたもの」となる。

カ氏度の単位記号は、「テンプレート:°F」である[2]国際単位系国際文書では、数値と単位記号の間には1字分の空白を挿入すること(セルシウス温度の表記も同じ)になっており(国際単位系#量の値の形式)、カ氏度の表記においても数値と「テンプレート:°F」の間に1字分の空白を挿入する。

他の単位との換算

テンプレート:Temperature

カ氏度による温度目盛では融点を32 °F、沸点を212 °Fとする。水の氷点と沸点の間は180度に分割される。カ氏温度Fは、ケルビンKセルシウス度Cと以下の関係にある。

F=95K459.67
F=95C+32
C=59(F32)

計量法では、一番上の式によって、ケルビンからカ氏温度が定義されている[3]

カ氏温度⇔セルシウス温度 早見表
°F °C
−40.0 −40.0
−30.0 −34.4
−22.0 −30.0
−20.0 −28.9
−10.0 −23.3
−4.0 −20.0
0.0 −17.8
10.0 −12.2
14.0 −10.0
20.0 −6.7
30.0 −1.1
32.0 0.0
40.0 4.4
50.0 10.0
°F °C
50.0 10.0
60.0 15.6
68.0 20.0
70.0 21.1
80.0 26.7
86.0 30.0
90.0 32.2
100.0 37.8
104.0 40.0
110.0 43.3
120.0 48.9
122.0 50.0
130.0 54.4
140.0 60.0
°F °C
140.0 60.0
150.0 65.6
158.0 70.0
160.0 71.1
170.0 76.7
176.0 80.0
180.0 82.2
190.0 87.8
194.0 90.0
200.0 93.3
210.0 98.9
212.0 100.0
220.0 104.4
230.0 110.0

カ氏温度とセルシウス温度との間の変換において、おおよそ「61 °F → 16 °C」「82 °F → 28 °C」の関係(一の位と十の位の交換)がある。これは、温帯における気温の範囲にあり、大雑把な変換の目安としてしばしば用いられる。

セルシウス温度にケルビンが対応するのと同様、絶対零度を0としてカ氏温度に相当する目盛りを振ったランキン度がある。

歴史

ファーレンハイトによる考案

ファーレンハイトがこの温度目盛を作った時の話としては、以下に示す複数の説がある。

  1. ファーレンハイトは最初、彼が測ることのできた最も低い室外の温度を0度、彼自身の体温を100度としようとしたと述べている。彼は1708年1709年の冬の大変寒い日に、ダンツィヒ郊外の彼の自宅において「0度」を計測した(これは−17.8 テンプレート:℃である)。後に同じ温度を塩化アンモニウムを混ぜることで実験室環境で作り出している。当時使われていたレーマー温度目盛では、日常的に使われる温度にマイナスの値が出てきてしまっていて不便であったので、彼はこれを避けたかった。彼の体温(彼は37.8 テンプレート:℃と計測したが、正確には37 テンプレート:℃であった)を「100度」と固定した。この元の目盛を12等分し、さらに8等分して96度の目盛を作った。これにより水の氷点が32度、沸点が212度になりその間が正確に180度に区切られることになる。
  2. 「0度」を同量の氷・塩の混合物(寒剤)によって得られる温度(この温度が人類が作り出せる最も低い温度であるとファーレンハイトが思っていたともいう)としたとしている。そして血液の温度を96度とした(彼が温度目盛を調整するときは馬の血液を使った)。当初は12等分しかしていなかったが、後にそれぞれを8等分して96度とした。彼はこの目盛によって純水が32度で凍り、212度で沸騰することを観測した(それまでは、物質が凍ったり沸騰したりする温度は一定であるとは思われていなかった)。
  3. レーマー温度目盛で水が凍る温度が7.5度、沸騰する温度が60度であることから小数をなくしスケールを大きくするためにそれぞれを4倍して30と240にしたというものである。それから、水の氷点と人の体温(彼はこれを96度とした)の間が、64度となるように再調整した(2の6乗=64になるのが理由)。その結果、水の氷点は32度になった。
  4. 温度の基準となっているのは、氷枕の温度と、人間の体温と、羊の直腸温度である。人間の肌で感じる温度感覚を基準にすれば万人の目安となる温度の定義ができると彼は考えた。最初は氷枕を0度、人の体温を時計と同じように12等分して12度、羊の直腸温度を12. 5度として12等分した人の体温のさらに半分の温度までの精密な測定基準としてみるよう提案した。しかし、学術上は100に近い数字のほうがより精密な測定が可能であるので、これらを8倍して華氏温度に定めた。人間の体温である96度は1から9までの整数のうち7と9以外で割り切ることができることから、計算に便利であること。もともとは96ではなく12であったが100に近い整数のほうが学術上便利であるから、12を8倍して96とした。華氏100度は風邪で発熱したときの人間の体温であるが、その温度は体温の高い動物と知られるの肛門の温度と同じ温度である。ヨーロッパの昔からの言い伝えで「人は、風邪をひくと羊さんになる」と言われている。これは、悪寒があると厚着をして羊のような外見になるし、発熱のため体温も上昇して羊の体温と一緒になるからである。華氏0度はファーレンハイトが風邪をひいたとき、彼の母親が氷枕を作ったその氷枕の温度である。

日本では1と2を合わせたものがよく知られているがアメリカでは3、欧州では4が有名である。

ファーレンハイトの計測は完全に正確ではなかった。彼が作ったオリジナルの目盛によって計った水の氷点・沸点は32度・212度とは異なっていた。彼の死後、その値が32度・212度となるように調整された。その結果、人の体温は96度ではなく98.6度となった。

英語圏での歴史

1960年代まで、多くの英語圏の国で、カ氏度(およびカ氏温度)は気候・産業・医療における温度の基準となっていた。1960年代後半から1970年代にかけて、メートル法への切り換えの一環としてセルシウス度(およびセルシウス温度)の導入が政府によって行われた。しかし切り換えのための努力にもかかわらず、現在でも一部の英語圏の国では非科学分野での温度計測にカ氏度が使用されている。アイザック・アシモフは、西欧の通常の気温が0 °Fから100 °Fの範囲に収まるのに対し、セルシウス温度ではとくに異常がなくても気温がマイナスの数字になりうることを指摘している[4]

カ氏度の支持者は、これはカ氏度が利用者にとって親しみやすいからだと主張している。地球上の居住可能地域の大部分で気温変化は0 テンプレート:°F (−17.8 °C) から100 テンプレート:°F (37.8 °C) の範囲に収まる。

  • 〜20 °F (〜−6.7 °C) - 厚い霜が降りる。即座に凍え死ぬ寒さ。
  • 20 °F〜 (−6.7 °C〜) - 薄い霜が降りる。
  • 30 °F〜 (−1.1 °C〜) - 寒い。氷点に近い。極寒。
  • 40 °F〜 (4.4 °C〜) - 寒い。厚い衣服が必要。
  • 50 °F〜 (10.0 °C〜) - 涼しい。適度な厚さの衣服で十分。運動には適温。
  • 60 °F〜 (15.6 °C〜) - 暖かい。薄手の衣服が必要。
  • 70 °F〜 (21.1 °C〜) - 適度に暑い。夏服が必要。
  • 80 °F〜 (26.7 °C〜) - 暑いが耐えられる。少なめの衣服。猛烈な暑気。
  • 90 °F〜 (32.2 °C〜) - とても暑い。過熱に対する予防措置が必要。
  • 100 °F〜 (37.8 °C〜) - 危険なほど暑い。生存には危険な酷暑。

またカ氏温度での人間の平熱が98.6 °F (37.0 °C) であることはよく知られていて、体温が100 °F (37.8 °C) 以上になると治療が必要とされるなど、カ氏度(およびカ氏温度)は生活感覚に直結した温度目盛であると主張している。

別の例では、カ氏度は人間の温度感覚に適合しているとも考えられる。例えば、日本産のカーエアコンの設定温度は日本仕様ではセルシウス温度で0.5 テンプレート:℃刻みが多いテンプレート:要出典が、同じ機種でもアメリカ仕様は1 °F刻みで小数を使わない。

アメリカ合衆国ジャマイカではメートル法への置き換えが生産者側・消費者側の両方で大きな抵抗に遭っているため、カ氏度は様々な分野で広く使われ続けている。同様にイギリスの一部では低い温度はセルシウス温度で表されるが、日常的に使われる温度はカ氏温度で測定されている。

カナダの天気予報や報道機関は全てセルシウス度を使い、日常でもセルシウス度が使われているが、カナダのキッチンオーブンや一部のエアコンは、カ氏度で利用されることがある。これは、アメリカ向けの家電製品を使う機会が多いため、カ氏度が初期設定としてセットされているためである。最近は、アナログ表示が減り、デジタル表示の製品が増え、簡単にカ氏温度とセルシウス温度との切り替えが可能になっているため、カ氏温度のみを表示する製品は減少している。

ニュージーランドオーストラリアでは完全にセルシウス度(およびセルシウス温度)への移行が完了している。

日本での歴史

平賀源内1765年に作った温度計「日本創製寒熱昇降器」には、極寒、寒、冷、平、暖、暑、極暑の文字列のほか数字列も記されており華氏を採用していた[5]

参考

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称

テンプレート:CharCode

Unicodeのカ氏度の記号(文字様記号)は、既存の文字コードとの互換性のために用意されている互換文字である。Unicode標準では、カ氏度の記号はテンプレート:Unichar)とテンプレート:Unichar(大文字のF)を組み合わせて使用し、検索の際はこれと一文字のテンプレート:Unicharを同一視することを推奨している[6]

参考文献

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Punctuation marks テンプレート:温度の単位の比較

  1. 1.0 1.1 計量単位令 別表第7、項番3、温度の欄
  2. [1] 計量単位規則 別表第6 「温度」の欄
  3. [2] 計量単位令 別表7 項番3
  4. テンプレート:Cite book
  5. テンプレート:Cite web
  6. テンプレート:Cite book