過ヨウ素酸

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テンプレート:Chembox 過ヨウ素酸(かヨウそさん、periodic acid)は、ヨウ素オキソ酸の一種で、過ハロゲン酸メタ過ヨウ素酸 (テンプレート:Chem) とオルト過ヨウ素酸 (テンプレート:Chem) の2種類があり、単に過ヨウ素酸という場合はメタ過ヨウ素酸のことを示すことが多い。英語名の "periodic acid" は「期間」の意味ではなく、"per-iodic" 過・ヨウ素の意味。また名称に「過」と付いているがヨウ素本来の最高酸化数(+VII, +7)であり、分子内に-O-O-結合は存在せず過酸ではない。

水溶液中では水素イオンと過ヨウ素酸イオンに電離する。また、過ヨウ素酸はジオールを二つのカルボニル化合物へと酸化開裂させることができる。

製法

ヨウ素酸バリウムを加熱分解して得たオルト過ヨウ素酸バリウムに硫酸を反応させると得られる[1]

5Ba(IOA3)A2ΔBaA5(IOA6)A2+4IA2+9OA2
BaA5(IOA6)A2+5HA2SOA42HA5IOA6+5BaSOA4

またオルト過ヨウ素酸水素バリウムに二酸化窒素を含まない濃硝酸を反応させても得られる[2]

BaA3HA4(IOA6)A2+6HNOA32HA5IOA6+3Ba(NOA3)A2

さらにオルト過ヨウ素酸を緩やかに加熱すると132℃で融解し、さらに脱水が始まりメタ過ヨウ素酸が生成する。

HA5IOA6ΔHIOA4 +2HA2O

化学的性質

オルト過ヨウ素酸は無色の吸湿性の結晶であり、強い酸化作用を示し、マンガン(II)イオンを過マンガン酸イオンまで酸化する[3]

HA5IOA6(aq) +HA+(aq) +2𝑒A=IOA3A(aq) +3HA2O(l) ,   E=1.603V
5HA5IOA6(aq) +2MnA2+(aq)5IOA3A(aq) +2MnOA4A(aq) +11HA+(aq) +7HA2O(l) ,

水溶液中の電離平衡

オルト過ヨウ素酸は水溶液中では5価の弱酸としての電離平衡が存在するが、第三解離以降は水溶液中での解離は極めて弱い。

HA5IOA6(aq)HA+(aq) +HA4IOA6A(aq),   テンプレート:PKa=3.29
HA4IOA6A(aq)HA+(aq) +HA3IOA6A2(aq),   テンプレート:PKa=6.7
HA3IOA6A2(aq)HA+(aq) +HA2IOA6A3(aq),   テンプレート:PKa=15
HA2IOA6A3(aq)HA+(aq) +HIOA6A4(aq)
HIOA6A4(aq)HA+(aq) +IOA6A5(aq)

さらに配位数変換によりメタ過ヨウ素酸イオンを生成するといった平衡も存在し、水溶液中の挙動はいっそう複雑である[3]

HA4IOA6A(aq)IOA4A(aq) +2HA2O(l),   K=40

メタ過ヨウ素酸は過塩素酸と同様に著しい強酸であるため、結局酸性水溶液中における平衡は以下のようなものが主となる。

HA5IOA6(aq)HA+(aq) +IOA4A(aq) +2HA2O(l),   K=2×102

酸化剤

1,2-ジオールvic-ジオール)に過ヨウ素酸を加えると、C-C結合が酸化的に開裂して 2分子のカルボニル化合物が得られる。このとき、過ヨウ素酸の環状エステルを中間体として経由する。

>C(OH)C(OH)< +HIOA4 >=O+O=<

過ヨウ素酸触媒量の過マンガン酸イオンを加えた Lemieux-von Rudloff 試薬は、アルケンを酸化的に開裂させることができる[4]

>C=C< +HIOA4 + cat.MnOA4A >=O +O=<

過ヨウ素酸イオン

オルト過ヨウ素酸イオン(おるとかようそさんいおん、orthoperiodate, hexaoxoiodate(5-), テンプレート:Chem) は6配位正八面体型であり、過ヨウ素酸イオン(かようそさんいおん、periodate, tetraoxoiodate, テンプレート:Chem)は過塩素酸イオンと同様に4配位正四面体型の陰イオンで、I−O結合距離は約180pmである[3]

過ヨウ素酸塩

オルト過ヨウ素酸塩(おるとかようそさんえん、orthoperiodate, hexaoxoiodate)には正塩および水素塩(酸性塩)が存在する。

塩には正塩(テンプレート:Chem)および三水素塩(テンプレート:Chem)などが存在し、いずれも水に難溶性である。三水素塩はナトリウム塩(テンプレート:Chem)、カリウム塩(テンプレート:Chem)およびアンモニウム塩(テンプレート:Chem)など比較的多く知られている。ナトリウム塩は二水素塩(テンプレート:Chem)も知られ、水素塩としてはトリウム塩(テンプレート:Chem)などが知られている。

また5配位のメソ過ヨウ素酸塩(めそかようそさんえん、mesoperiodate)も存在し、銀塩(テンプレート:Chem)、水素塩として塩(テンプレート:Chem)などが知られる。

過ヨウ素酸塩(メタ過ヨウ素酸塩、かようそさんえん、periodate, tetraoxoiodate)は過ヨウ素酸の水溶液をpH=2-3付近になるまで水酸化物で中和すると析出し、ナトリウム塩 (テンプレート:Chem) 、アンモニウム塩(テンプレート:Chem)、など多く知られアンモニウム塩は加熱により爆発する。カリウム(テンプレート:Chem)、ルビジウム(テンプレート:Chem)、セシウム(テンプレート:Chem)および銀塩(テンプレート:Chem)などは水に難溶性である。

参考文献

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:水素の化合物 テンプレート:ヨウ素の化合物 テンプレート:Chem-stub

  1. 化学大辞典編集委員会 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  2. 日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成I』 丸善、1977年
  3. 3.0 3.1 3.2 FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年,原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.
  4. Smith, M. B.; March, J. March's Advanced Organic Chemistry, 6th ed., Wiley, 2007.