完全数

完全数(かんぜんすう、テンプレート:Lang-en-short)とは、自分自身を除く正の約数の和が自分自身に等しくなる自然数のことである。完全数は素数ではあり得ず、合成数に限られる。完全数の最初の4個は テンプレート:Math2、テンプレート:Math2、テンプレート:Math2、テンプレート:Math2 である。
「完全数」は「万物は数なり」と考えたピタゴラスが名付けた数の一つであることに由来する[1]が、彼がなぜ「完全」と考えたのかについては何も書き残されていないようである[1]。紀元1世紀ごろは、全ての数は過剰数と不足数と完全数の3種類に分けられて、道徳的な意味付けが真剣に考えられた[2]。中世の『聖書』の研究者は、「テンプレート:Math は『神が世界を創造した(天地創造)6日間』、テンプレート:Math は『月の公転周期』で、これら2つの数は地上と天界における神の完全性を象徴している」[1]と考えたとされる[3]。古代ギリシアの数学者は他にもあと2つの完全数 (テンプレート:Math) を知っていた[1]。以来、完全数はどれだけあるのかの探求が2500年以上のちの現在まで続けられている。
完全数の定義は、正の約数の総和が自分自身の2倍に等しいことと同値である。すなわち、テンプレート:Mvar が完全数であるとは、約数関数 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math が成り立つことであると表現できる。また、正の約数の逆数和が テンプレート:Math であると表現することもできる。
歴史
完全数に関する数学上の最初の成果は紀元前3世紀ごろのユークリッドによってもたらされた。彼は『原論』(第9巻、命題36)で、「テンプレート:Math が素数ならば、テンプレート:Math は完全数である」ということを証明したテンプレート:Refnest。テンプレート:Math で表される数をメルセンヌ数といい、それが素数である場合をメルセンヌ素数という。
古代から、6、28、496、8128の4つの数が完全数であることは知られており、ゲラサのニコマコスの『算術入門』には4つの完全数に関する記述が存在する[4]。
ユークリッドの公式は2以上の テンプレート:Math に対して偶数の完全数しか生成しない(1のときは唯一の1倍完全数である1になる)が、逆に偶数の完全数が全て テンプレート:Math の形で書けるかどうかは18世紀までは未解決であった。レオンハルト・オイラーは偶数の完全数がこの形に限ることを証明した[5][6]テンプレート:Refnest。
メルセンヌ素数の探索は、エドゥアール・リュカとテンプレート:仮リンクによってメルセンヌ数が素数であるかどうかの効率的な判定法が考案され、1950年代からコンピュータが使われるようになる。現在では分散コンピューティング GIMPS による探求が行われていて、テンプレート:As ofで判明している最大のメルセンヌ素数は4102万4320桁の数である[7]。テンプレート:Unsolvedテンプレート:As of発見されている完全数はメルセンヌ素数と同じく52個である。紀元前より考察されている対象であるにもかかわらず、「偶数の完全数は無数に存在するか?」「奇数の完全数は存在するか?」という問題は未解決である。
概要
完全数は、小さい順に
である。
各完全数の正の約数の総和は
隣り合う完全数の差は
完全数の総和の列は
である。
テンプレート:Math と テンプレート:Math がなぜ「完全」であるかは中世の学者の議論の対象になり、テンプレート:Math は神が創造した1週間(日曜日は神が天地創造を終えて休んだ安息日で、キリスト教ではこれを除外する)、テンプレート:Math は「月の公転周期」とされた[1]。聖アウグスティヌス(? - 604年)はこれとは一線を画し、「テンプレート:Math はそれ自体完全な数である。神が万物を6日間で創造したから テンプレート:Math が完全なのでなく、むしろ逆が真である」としている[1]。
偶数の完全数 テンプレート:Math は テンプレート:Math 番目の三角数であり、テンプレート:Sfrac 番目の六角数でもある。
完全数の分類
偶数の完全数
偶数の完全数は、テンプレート:Math が素数のときの テンプレート:Math に限る(ユークリッド、オイラー)。
ユークリッドの証明
テンプレート:Math が完全数であることの証明:[8] テンプレート:Math proof
オイラーの証明
偶数の完全数は テンプレート:Math の形に限ることの証明[5][6][注釈 1]: テンプレート:Math proof
偶数の完全数の性質
偶数の完全数を テンプレート:Math(テンプレート:Math は素数)とする。
- テンプレート:Mvar の正の約数の個数は テンプレート:Math である(テンプレート:Mvar は約数の個数を表す約数関数)。このうち半数は [[2の冪|テンプレート:Math の累乗]]であり、残り半数はこれにメルセンヌ素数を乗じた数である。
- テンプレート:Mvar の正の約数の調和平均は テンプレート:Mvar、ゆえに テンプレート:Mvar は調和数である。
- テンプレート:Math 以外の偶数の完全数は、テンプレート:Math から連続する正の奇数の立方和で表せる。式で表すと
- 例:
- テンプレート:Math
- テンプレート:Math から連続する正の奇数の立方和で表せる数の列は
- テンプレート:Math(テンプレート:OEIS)
- テンプレート:Math(テンプレート:Mvar は自然数)の列は
- テンプレート:Math(テンプレート:OEIS)
- この数列で完全数にならない数の数列は テンプレート:OEIS を参照
- テンプレート:Math は テンプレート:Math のとき偶数の完全数になる。ただし テンプレート:Math は約数関数である。この数列は
- 偶数の完全数は、テンプレート:Math からメルセンヌ素数まで連続する正の整数の和で表せる。式で表すと
- 例:テンプレート:Math
- 言い換えると、テンプレート:Mvar は テンプレート:Math 番目の三角数である。偶数の三角数の列は
- テンプレート:Math2(テンプレート:OEIS)
- 偶数の完全数は全て奇数番目の三角数でもあるので、知られている完全数は全て六角数でもある。
- 例:テンプレート:Math
- 言い換えると、テンプレート:Mvar は テンプレート:Math 番目の六角数である。
六角数の列は
- 知られている完全数は全て 4n − 1 番目の三角数でもあるので偶数の六角数であり、偶数番目の六角数である。テンプレート:Mvar 番目の六角数は テンプレート:Math なので、偶数の六角数は テンプレート:Math で表される。偶数の六角数の列は
- テンプレート:Math 以外の完全数は中心つき九角数に含まれる。この数の列は
- テンプレート:Mvar を十進法表示したとき、一の位は テンプレート:Math または テンプレート:Math である。
偶数の完全数の未解決問題
偶数の完全数は無数に存在するか、つまり テンプレート:Math が素数となる素数 テンプレート:Mvar は無数に存在するかどうかは未解決である。
奇数の完全数
奇数の完全数が存在するか否かは未解決であるが、約数関数は乗法的 (テンプレート:Lang-en-short) であることから、二平方数の和であることが古くから知られていた。もし奇数の完全数 テンプレート:Mvar が存在すれば、テンプレート:Mvar は以下の各条件を満たさなければならないことが知られている。
- テンプレート:Mvar の素因数分解は テンプレート:Math の形である。ここで テンプレート:Math は相異なる素数で テンプレート:Math を満たすテンプレート:Refnest。
- テンプレート:Math である[9]。
- テンプレート:Math である[10]。また テンプレート:Math のとき テンプレート:Math である[11]。
- テンプレート:Math ではない[12]。
- テンプレート:Math ではない[13].
- テンプレート:Math とすると、テンプレート:Math は テンプレート:Math ではない[14][15]。さらにテンプレート:Math である[16]。
- テンプレート:Math または テンプレート:Math である[17][18][19][20]。
- テンプレート:Math である[21]。
- これは1991年に示された[22]を約20年ぶりに改良したものである。
- テンプレート:Mvar は少なくとも10個の相異なる素因数を持つ[23]。
- テンプレート:Mvar が テンプレート:Math で割り切れない場合は、少なくとも12個の素因数を持つ[24]。テンプレート:Math でも テンプレート:Math でも割り切れない場合は15個以上の、テンプレート:Math でも テンプレート:Math でも テンプレート:Math でも割り切れない場合は27個以上の相異なる素因数を持つ[28]。
- テンプレート:Mvar は重複も数えて少なくとも101個の素因数を持つ[21][29]。
- テンプレート:Mvar は テンプレート:Math より大きい素因数を持つ[30]。
- これは2006年に発表されたものであるが、より古い下界としては2003年の テンプレート:Math[31]や、1998年の テンプレート:Math[32]などがある。
- テンプレート:Mvar の2番目に大きな素因数は テンプレート:Math より大きい[33]。
- テンプレート:Mvar の3番目に大きな素因数は テンプレート:Math より大きい[34]。
- テンプレート:Mvar は テンプレート:Math より大きい素数冪因数を持つ[21]。
- テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvarの約数の和) は単偶数の3倍完全数となる(未発見。倍積完全数を参照。)。
その他の性質
- 完全数は、正の約数の個数が偶数、正の約数の逆数和が テンプレート:Math なので、調和数である。この数の列は
- 完全数は素数ではないが、約数の和が自分自身(の1倍)に等しい唯一の数である テンプレート:Math との関係において、2個の約数を持つ素数が1個の約数を持つ唯一の数である テンプレート:Math に対するのと似た関係を持つ。
関連する数
約数の和や積を考えることで特徴付けられる数の種類には他にも次のようなものがある。完全数と併せて、これらの名称には古代ギリシアの数秘学の影響が見られる。
完全数の拡張
- 倍積完全数 (multiperfect number)[35]
- 正の約数の和が自分自身の倍数である自然数を倍積完全数という。特に、それがテンプレート:Mvar倍に等しいものをテンプレート:Mvar倍完全数という。テンプレート:Mathは唯一のテンプレート:Math倍完全数であり、完全数とはテンプレート:Math倍完全数のことである。
- テンプレート:Math(テンプレート:OEIS)
- ハイパー完全数 (hyperperfect number)
- テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar -ハイパー完全数であるとは、
- テンプレート:Math(ただしテンプレート:Mvar は自然数)(テンプレート:Math は約数関数)
- を満たすことと定義される。完全数は テンプレート:Math-ハイパー完全数である。
- テンプレート:Mvar -ハイパー完全数の列は
- テンプレート:Math(テンプレート:OEIS)
- 超完全数 (superperfect number)
- テンプレート:Mvar が テンプレート:Math-完全数であるとは、
- テンプレート:Math(ただし テンプレート:Mvar は自然数)(テンプレート:Math は約数関数)
- を満たすときと定義される。完全数は テンプレート:Math-完全数、倍積完全数は テンプレート:Math-完全数、超完全数は テンプレート:Math-完全数である。
- 擬似完全数 (semiperfect number)
- 自分自身を除くいくつかの約数の総和が元の数に等しい自然数を擬似完全数という。
不完全数
完全数でない自然数を不完全数 (imperfect number) という。
- 不足数 (deficient number)[36]
- 自分自身以外の正の約数の和より大きい自然数
- 過剰数 (abundant number)[37]
- 自分自身以外の正の約数の和より小さい自然数。過剰数であって擬似完全数でない数を不思議数という。
- 友愛数 (amicable pair)[38]
- 自分自身以外の正の約数の和が互いに他方に等しい2つの自然数の組。
- 社交数 (sociable numbers)[39]
- 友愛数と同様の関係が成立する3個以上の自然数の組。
- テンプレート:仮リンク (quasiperfect number)[40]
- テンプレート:Mvar が準完全数であるとは、正の約数の和が テンプレート:Math に等しいことと定義される。過剰数の一種。そのような数はいまだに見つかっていないが、存在するならばそれは奇数の平方数で テンプレート:Math より大きく、少なくとも7つの約数を持つということが示されている。
- テンプレート:仮リンク (almost perfect number)[41]
- テンプレート:Mvar が概完全数であるとは、正の約数の和が テンプレート:Math に等しいことと定義される。不足数の一種。テンプレート:Math の形の自然数はこの条件を満たしているが、この形の自然数以外の概完全数が存在するのかどうかは知られていない。
その他
- 乗法的完全数 (multiplicative perfect number)[42]
- 正の約数の積が自分自身の自乗(2乗)に等しい数を乗法的完全数という。乗法的完全数の列は、
- テンプレート:Math(テンプレート:OEIS)
エピソード
小川洋子の小説『博士の愛した数式』(2003年)では登場人物の「博士」が阪神タイガースの江夏豊投手のファンであったことの理由として江夏の背番号が28であったことを挙げ、その際に完全数の説明がなされている。
江夏ではないが、日本のプロ野球で初めて完全試合が達成されたのは月・日とも完全数の1950年6月28日だった。6月28日は「完全」の意味を持つ食べ物「パフェの日」にもなっている。
脚注
注釈
出典
参考文献
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite book
- (ハードカバー)1971年7月。ISBN 4-320-01072-8
- (縮刷版)1996年6月。ISBN 4-320-01513-4
- (追補版)2011年5月。ISBN 978-4-320-01965-2
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Citation (テンプレート:Google books)
- テンプレート:Cite book - 原タイトル:Unsolved problems in number theory.
- テンプレート:Cite book - 原タイトル:Unsolved problems in number theory. 3rd ed.
- テンプレート:Citation (テンプレート:Google books)
- 高木貞治:「初等整数論講義」第2版、(1971)。
関連項目
- 拡大友愛数
- 婚約数(準友愛数)
- 三角数
- 社交数
- メルセンヌ数
- メルセンヌ素数と完全数の一覧
- 友愛数
- 友愛的三対 - 友愛数を社交数とは別の方向に拡張したもの。
- アリコット数列テンプレート:Div col end
外部リンク
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 「高数・数学者列伝」吉永良正『高校への数学』vol.20、1995年8月号
- ↑ テンプレート:仮リンク『ゼロから無限へ』芹沢正三訳 講談社ブルーバックス 1971年 ISBN 978-4061177772 p133
- ↑ 淡中忠郎「メルセンヌ数物語」『数学セミナー』、1973年9月号。数学セミナー編集部(1982)、65-67頁に再録されている。
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 5.0 5.1 テンプレート:Harvnb
- ↑ 6.0 6.1 テンプレート:Harvnb
- ↑ テンプレート:Cite press release
- ↑ テンプレート:Harvnb
- ↑ テンプレート:Cite journal
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- ↑ 75個以上であることを示した、以前の結果は K. G. Hare, "New techniques for bounds on the total number of prime factors of an odd perfect number", Math. Comp. 76. (2007), 2241-2248. preprint
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- ↑ テンプレート:MathWorld
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