シャピロの不等式

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数学におけるシャピロの不等式(シャピロのふとうしき、テンプレート:Lang-en-short)、またはシャピロの巡回不等式とは、テンプレート:仮リンクによって1954年に提案された不等式である。

内容

n自然数x1,x2,,xn を非負の実数で、

xi+xi+1>0(i=1,2,,n)

であるとする。ただし、 xn+1=x1,xn+2=x2 とする。このとき、

  • n12 以下の偶数
  • n23 以下の奇数

のいずれかであれば、次の不等式が成り立つ。

i=1nxixi+1+xi+2n2

より大きな n に対しては不等式は成り立たないが、厳密な下限 γn2 が存在する。ここで γ0.9891

重要なケース n=12 の最初の証明は Godunova と Levin によって1976年に、もう一方の n=23 の最初の証明は Troesch によって1989年に、それぞれ数値計算に依った方法で与えられた。2002年、P.J. Bushell と J.B. McLeod は n=12 のときの解析的な証明を発表した。

γ の値は1971年にウラジーミル・ドリンフェルト(1990年のフィールズ賞受賞者)によって求められた。特に、ドリンフェルトは下限となる γψ(0) で与えられることを示した。ここで ψ は関数 f(x)=exg(x)=2ex+ex2 の関数的凸包である。(つまり、 ψ のグラフの上側の部分は、 fg のグラフの上側部分の合併の凸包になっている)。

左辺の、内部での極小値は常に n2 となることが1968年 Pedro Nowosad により証明された。

より大きな n に対する反例

最初の反例は、Lighthill によって1956年に発見された、 n=20 に対するものである:

x20=(1+5ϵ, 6ϵ, 1+4ϵ, 5ϵ, 1+3ϵ, 4ϵ, 1+2ϵ, 3ϵ, 1+ϵ, 2ϵ, 1+2ϵ, ϵ, 1+3ϵ, 2ϵ, 1+4ϵ, 3ϵ, 1+5ϵ, 4ϵ, 1+6ϵ, 5ϵ)
(ここで ϵ は 0 に極めて近いとする。)

このとき不等式の左辺は 10ϵ2+O(ϵ3) となり、 ϵ が十分小さければ 10 より小さくなる。

次の反例は n=14 に対するもので、1985年 Troesch により与えられた:

x14=(0,42,2,42,4,41,5,39,4,38,2,38,0,40)

また、 n=25 に対して次の反例がある:

x25=(32,0,37,0,43,0,50,0,59,8,62,21,55,29,44,32,33,31,24,30,16,29,10,29,4)

n が小さなときの証明

  • n=2
x1x2+x1+x2x1+x2=122
より自明である。
  • n=3
この場合をネスビットの不等式といい、様々な証明が知られている。
正の数 a に対して、相加平均と相乗平均の不等式から、
a+1a2a1a=2
よって、S3:=x1x2+x3+x2x3+x1+x3x1+x2 とおくと
2S3=x3+x1x2+x3+x1+x2x2+x3+x1+x2x3+x1+x2+x3x3+x1+x2+x3x1+x2+x3+x1x1+x232+2+23=3
ゆえに S332
  • n=4
正の数 a, b に対して、相加平均と調和平均の不等式から、
1a+1b4a+b
また、正の数 a, b, c, d に対して、相加平均と相乗平均の不等式から、
ba+cb+dc+ad4bacbdcad4=4
ここで S4:=x1x2+x3+x2x3+x4+x3x4+x1+x4x1+x2 とおくと
2S4=x1+x2x2+x3+x2+x3x3+x4+x3+x4x4+x1+x4+x1x1+x2+x3x2+x3+x4x3+x4+x1x4+x1+x2x1+x24+S44+x3x2+x3+x4x3+x4+x1x4+x1+x2x1+x24+S4=x3x2+x3+x4x3+x4+x1x4+x1+x2x1+x2+x1x2+x3+x2x3+x4+x3x4+x1+x4x1+x2=(x1+x3)(1x2+x3+1x4+x1)+(x2+x4)(1x3+x4+1x1+x2)4(x1+x3)x1+x2+x3+x4+4(x2+x4)x1+x2+x3+x4=4
ゆえに S442

参考文献

外部リンク