ディーゼルサイクル

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テンプレート:Thermodynamics ディーゼルサイクルテンプレート:Lang-en-short)は、低速の圧縮着火機関ディーゼルエンジン焼玉エンジン)の理論サイクル(空気標準サイクル)であり、等圧サイクルとよばれることもある[1][2]。最初の圧縮着火機関を考案し実用化したのは、ドイツのルドルフ・クリスチアン・カール・ディーゼルであり(1893年)、そのサイクルは彼にちなんでディーゼルサイクルとよばれている。なお、実際の中・高速のディーゼルエンジンでは燃料噴射後の着火遅れに伴う予混合燃焼の影響が無視できなくなり、サバテサイクルに近くなる。

サイクル

ディーゼルサイクルは、圧縮着火機関の実際のサイクルを、下表1のような比熱一定の理想気体(空気)の可逆なクローズドサイクル(空気標準サイクル)で置き換えたものと考えることができる[1][2]

表1 サイクルの置き換え
実機関の状態変化 置換後の状態変化 備考
1 → 2 空気の圧縮 断熱等エントロピー)圧縮
2 → 3 燃料噴射・着火・燃焼 等圧加熱膨張 噴射の間 ピストンは移動
3 → 4 噴射締切・燃焼ガスの膨張 断熱(等エントロピー)膨張
4 → 1 排気・吸気(または掃気) 等積冷却 この間のピストン移動を無視

ディーゼルサイクルのp-V線図およびT-S線図を図1、2に示す。また、吸気状態をV1、p1、T1、S1としたときの、サイクル上の各点の状態量を下表2に示す。

表2 サイクル各点の状態量
体積 圧力 絶対温度 エントロピー
1 V1 p1 T1 S1
1→2 p=p1(V1V)κ T=T1(V1V)κ1 S=S1
2 V2=V1/ϵ p2=p1ϵκ T2=T1ϵκ1 S2=S1
2→3 p=p2 T=T2VV2 S=S2+mcplnTT2
3 V3=V1σ/ϵ p3=p1ϵκ T3=T1σϵκ1 S3=S1+mcplnσ
3→4 p=p3(V3V)κ T=T3(V3V)κ1 S=S3
4 V4=V1 p4=p1σκ T4=T1σκ S4=S1+mcplnσ
4→1 V=V4 T=T4pp4 S=S4+mcvlnTT4
ϵ=V1V2圧縮比、   σ=V3V2:噴射締切比、   κ=cpcv=1.40比熱比

m:質量、   cp:定圧比熱、   cv:定積比熱

熱量、仕事、熱効率

上で求めた各点の状態量を用いて、1 サイクルあたりの加熱量、冷却量、仕事、および熱効率平均有効圧力は下記のように求まる。

  • シリンダー内空気質量: m=P1V1RT1,R=cpcv=287.2J/(kgK)
  • 加熱量:Q1=mcp(T3T2)=mcpT1(σ1)ϵκ1
  • 冷却量:Q2=mcv(T4T1)=mcvT1(σκ1)
  • 仕事:W=Q1Q2=mcvT1[κ(σ1)ϵκ1(σκ1)]
  • 熱効率:η=1Q2Q1=11ϵκ1σκ1κ(σ1)
  • 平均有効圧力:pm=WV1V2=p1κ(σ1)ϵκ(σκ1)ϵ(κ1)(ϵ1)

この結果より、以下のことがわかる。

  1. 圧縮比 ε を大きく(高く)すれば熱効率が大きく向上する。
  2. 噴射締切比 σ を小さくすれば(1 に近づければ)熱効率が向上する。ただし、これは同じ出力に対して機関の大型化をもたらす。
  3. 負荷に応じて平均有効圧力を変えて調速を行うには、(絞り弁で)吸気圧力 p1 を変えるか、または噴射締切比 σ を変えればよい。前者は大きな損失が伴うので、通常は後者を用いる。

参考文献

  1. 1.0 1.1 柘植盛男、『機械熱力学』、朝倉書店(1967)
  2. 2.0 2.1 谷下市松、『工学基礎熱力学』、裳華房(1971)、ISBN 4-7853-6008-9.

関連項目