バナッハ=アラオグルの定理
テンプレート:Pathnavバナッハ=アラオグルの定理(バナッハ=アラオグルのていり、テンプレート:Lang-en-short)あるいはアラオグルの定理として知られる定理は、ノルム空間テンプレート:Mvarの共役空間テンプレート:Mvarの閉単位球が*弱位相関してコンパクトになるという定理である[1]。
この定理の背景を簡単に述べると、関数解析学では無限次元のノルム空間テンプレート:Mvarを多用し、テンプレート:Mvarやその共役空間テンプレート:Mvarの元は何らかの集合上の実数値ないし複素数値の関数のなすベクトル空間である事が多い。しかしテンプレート:Mvarが無限次元の場合、テンプレート:Mvarやテンプレート:Mvarの閉単位球はノルム位相に関してはコンパクトにならない事が知られており、これが原因で有限次元とは異なり、テンプレート:Mvarやテンプレート:Mvar上の有界な点列が(ノルム位相に関して)収束部分列を持つことが保証されない。これは例えば微分方程式をノルムに関して近似する解テンプレート:Mvarを求めた上でテンプレート:Mathとした場合、その極限(すなわち微分方程式の解そのもの)が存在する事が保証されない事を意味する。微分方程式の振る舞いの記述を主たる適用先とする関数解析学において、これは致命的である。
しかしバナッハ=アラオグルの定理は閉単位球が*弱位相に関してコンパクトである事を保証しているので、弱位相の意味での近似解テンプレート:Mvarを求めれば、が収束部分列を持つ事が保証され、その収束部分列の極限が微分方程式の解になっている事を証明する道が開かれる。
この定理は、オブザーバブルの代数の状態の集合を表現するときに物理学的に応用される。すなわち、任意の状態はいわゆる純粋状態の凸線型結合として表現されるテンプレート:要出典。
この定理は可分な場合に対して1932年にステファン・バナフによって示され、一般の場合は1940年にテンプレート:仮リンクにより示されたテンプレート:要出典。
定理
以下、ベクトル空間の係数体テンプレート:Mvarはもしくはであるとする。
準備
本節ではバナッハ=アラオグルの定理の記述に必要な概念を定義する。 テンプレート:Math theoremテンプレート:Mvarの閉単位球テンプレート:Mvarは上述の作用素ノルムに対して定義される:
なお、テンプレート:Mvar上の作用素ノルムはテンプレート:Mvarにノルム位相(=ノルムが定める距離から定まる位相)を定めるが、バナッハ=アラオグルの定理はノルム位相ではなく以下で述べる*弱位相に関する定理である:テンプレート:Math theorem
最後に位相空間のコンパクト性は以下のように定義される:テンプレート:Math theorem
ノルム位相に対してはリースの補題から直接的に次の事実が従う:テンプレート:Math theorem したがって無限次元の場合、テンプレート:Mvarの閉単位球はノルム位相に関してコンパクトではない。
定理の記述
これに対し、テンプレート:Mvarの閉単位球は*弱位相に関してはコンパクトになるというのがバナッハ・アラオグルの定理の主張である:テンプレート:Math theoremこの定理はチコノフの定理に基づいて非構成的に示せる[2]。なおノルム空間テンプレート:Mvarが(ノルム位相に関して)可分な場合には、可分なノルム空間の共役空間の閉単位球が*弱位相に関して距離化可能である事[3]を利用してより直接的にに証明可能である[3]。
テンプレート:Math proof テンプレート:Math proof
バナッハ=アラオグルの定理は半径1の閉球に対するものだが、任意の半径の閉球もコンパクトになる事が容易に示せる。また*弱位相はハウスドルフ性を満たす事が知られており、コンパクトな空間の閉部分集合はコンパクトなので、以下の系が成立する:テンプレート:Math theoremなお、テンプレート:Mvarが回帰的(すなわちテンプレート:Mathが成立する空間)であればテンプレート:Mvar上の*弱位相と弱位相は同一になるので、下記の系が従う:テンプレート:Math theoremテンプレート:Mathに対しLp空間やℓp空間は回帰的なので、上記の定理が適用できる。しかし回帰的でない場合には上述の定理に反例があり、例えばテンプレート:Mvarに収束する複素数列全体にℓ∞ノルムを入れた空間テンプレート:Mvarの閉単位球は弱位相に関してコンパクトではない[4]。
注意しなければならないのは、*弱位相における有界閉集合には内点が無く、有界閉集合上の点は必ず境界点になる事である。これはすなわち、たとえ閉単位球がコンパクトであっても*弱位相をいれたテンプレート:Mvarが局所コンパクトにはなっていない事を意味する。
一般化:ブルバキ=アラオグルの定理
ブルバキ=アラオグルの定理(Bourbaki-Alaoglu theorem)は、ニコラ・ブルバキによる局所凸位相ベクトル空間上の双対位相へのバナッハ=アラオグルの定理の一般化である[5][6]。
ノルム線型空間の場合、近傍の極はその双対空間において閉かつノルム有界である。例えば、単位球の極はその双対において閉単位球である。したがって、ノルム位相空間(したがってバナッハ空間)に対して、ブルバキ=アラオグルの定理はバナッハ=アラオグルの定理と同値である。
帰結
- ノルムについて閉じている凸集合は弱閉である(ハーン=バナッハの定理)ため、ヒルベルト空間あるいは回帰的バナッハ空間における有界凸集合のノルム閉包は、弱コンパクトであるテンプレート:要出典。
- B(H) における閉かつ有界集合は、弱作用素位相に関してプレコンパクトである(弱作用素位相は、トレースクラス作用素の集合 B(H) の前双対に関する弱 * 位相であるテンプレート:仮リンクよりも弱い)。したがって、作用素の有界列は弱集積点を持つ。したがって B(H) は、弱作用素あるいは超弱位相が備えられたとき、ハイネ=ボレルの性質を持つテンプレート:要出典。
たない。
関連項目
注釈
参考文献
- テンプレート:Cite book See section 3.15, p. 68.
- テンプレート:Cite book See Theorem 23.5, p. 264.
- テンプレート:Cite book See §20.9.
- テンプレート:Cite web
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- テンプレート:Cite book
- Kindle版:ASIN : B06XGRCCJ3
- 翻訳版:テンプレート:Cite book
関連図書
- テンプレート:Cite book See Chapter 5, section 3.
- テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Harvnb, section 3.15.
- ↑ #Schlumprecht p.7.
- ↑ 3.0 3.1 #Semmes pp.15, 20-21
- ↑ #Heil p.361.
- ↑ テンプレート:Harvnb, Theorem (4) in §20.9.
- ↑ テンプレート:Harvnb, Theorem 23.5.