ヒドロン

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

テンプレート:Chembox ヒドロン(Hydron)は、H+という記号で表される、水素原子陽イオンの一般名である。

概要

プロトン」という言葉は、最も多い同位体である軽水素陽イオンを意味する。「ヒドロン」は、その同位体組成に関わらない陽イオンを表す。そのため、プロトン(1H+)、デューテロン(2H+, D+)、三重水素(3H+, T+)を含む名称である。他のイオンと異なり、ヒドロンは裸の原子核のみから構成される。

ヒドロン(裸の水素原子核)は、反応性が高すぎるため多くの液体中では存在できない。自由なヒドロンは、液体中で分子と反応し、より複雑な陽イオンを形成する。例としては、水中における水素イオンの水和型であるヒドロニウムイオン(H3O+)や最も強い超酸であるフルオロアンチモン酸の不安定な陽イオンH2+がある。このため液体中では、ヒドロンは複雑なイオンと接触して、グロッタス機構により拡散する[1]。水中においてヒドロニウムイオンは、スヴァンテ・アレニウスによるの定義の鍵となる。

他の水和型には、1つのプロトンと2つの水分子からなるズンデルカチオン(H5O2+)や1つのプロトンと3つの水分子からなるアイゲンカチオン(H9O4+)があり、グロッタス機構に従う「水素ホッピング」において重要な役割を担っている。ヒドロン自体も、より一般的なブレンステッド-ローリーの酸塩基理論において重要な役割を果たしている。

陰電荷を持つヒドロンのカウンターパートは、ヒドリド(H-)という。

ヒドロンの同位体

他の水素の同位体は、不安定すぎて意味を持たない。

用語の歴史

「ヒドロン」(Hydron)という用語は、国際純正・応用化学連合により、未分画の天然の水素同位体混合物に含まれる軽水素、重水素、三重水素について区別がなされないときに「プロトン」に代わる言葉として使うことが勧告されている。「プロトン」という用語は、同位体分離された純粋な1H+を表す[2]。一方、水素化物イオンも存在するために、ヒドロンを単に「水素イオン」(hydrogen ion)ということは推奨されない[3]

「ヒドロン」という用語は、1988年に国際純正・応用化学連合によって定義された[4][5]。しかし、今でも「ヒドロン」という用語の代わりに「プロトン」という用語が用いられており、プロトン化脱プロトン化プロトンポンププロトンチャネル等という用語がある。また酸塩基反応によるH+の移動は、通常は「プロトン移動」と呼ばれる。「ヒドロン」という用語は、速度論的同位体効果同位体標識等、水素の同位体を区別することが重要な文脈でのみ用いられている。

しかし、天然の水素原子核の99.9844%はプロトンであり、残り(海水では156 ppm)がデューテロン、ごく少量がトリトンである。

関連項目

出典

  1. [1] Computer modeling of proton-hopping in superacids.
  2. Nomenclature of Inorganic Chemistry-IUPAC Recommendations 2005 Red Book 2005.pdf IR-3.3.2, p.48
  3. Compendium of Chemical Terminology, 2nd edition McNaught, A.D. and Wilkinson, A. Blackwell Science, 1997 [ISBN 0-86542-684-8], also online テンプレート:Webarchive
  4. テンプレート:GoldBookRef
  5. テンプレート:Cite journal