ヘンストック=クルツヴァイル積分

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数学微分積分学周辺領域におけるヘンストック=クルツヴァイル積分(ヘンストッククルツヴァイルせきぶん、テンプレート:Lang-en-short; HK積分)、一般化リーマン積分(いっぱんかリーマンせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)、ゲージ積分(ゲージせきぶん、テンプレート:Lang-en-short) 、または(狭義)ダンジョワ積分(きょうぎダンジョワせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)あるいはペロン積分(ペロンせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)あるいはルージン積分(ルージンせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)は、いくつかある函数積分法の定義のうちの一つで、リーマン積分を一般化したものであり、場合によってはルベーグ積分よりも有用なものとなりうる。

この積分を初めて定義したのはテンプレート:仮リンクで1912年のことである。ダンジョワは

f(x)=1xsin(1x3)

のような函数を積分することができるような、積分法の定義に興味を持っていた。この函数は点 テンプレート:Math に特異点を持ち、かつルベーグ可積分でないが、それでも 0 を含む十分小さい区間 テンプレート:Math を除いて積分を計算し、その後 テンプレート:Math とするのは自然に思われる。

一般論を形成するためにダンジョワは可能な全ての種類の特異点に対する超限帰納法を用いたが、そのことで定義は極めて込み入ったものになってしまった。これに代わる別の定義を与えたのはテンプレート:仮リンクテンプレート:仮リンクの概念の一種を用いた)およびテンプレート:仮リンク(連続な優函数と劣函数に着目した)であった。ペロン積分とダンジョワ積分が実際には同じものであることが分かるのはしばらくしてからのことである。

後の1957年に、チェコの数学者テンプレート:仮リンクは、ゲージ積分と呼ばれるリーマンによる元々の定義ときれいにそっくりな新しい積分の定義を発見し、その理論はテンプレート:仮リンクによって研究が進められた。この二人の数学者の大きな貢献に因み、現在ではその積分はヘンストック=クルツヴァイル積分として広く認知されている。クルツヴァイルの定義の簡潔さから、微分積分学の入門的講義ではリーマン積分の代わりにこちらを用いるべきとする教育者もあるが、傍流である。

定義

ヘンストックによる定義は以下のようなものである。

有界閉区間 テンプレート:Mathテンプレート:仮リンク

P:a=u0<u1<<un=b,(i : ti[ui1,ui])

ゲージと呼ばれる正値函数 テンプレート:Math に対して、点付き分割 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-細 テンプレート:Lang であるとは、さらに

i : tiδ(ti)<ui1tiui<ti+δ(ti)

を満たすことである。点付き分割 テンプレート:Mvar と函数 テンプレート:Math に対して、リーマン和(リーマンのオリジナルに限らず、この形の和分をこう呼ぶ)

Pf=i=1n(uiui1)f(ti)

を定義することができる。与えられた函数 テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvar のヘンストック=クルツヴァイル積分の値となるべき数 テンプレート:Mvar は、

任意の テンプレート:Mvar に対して、適当なゲージ テンプレート:Mvar を選べば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-細分割である限り必ず
|PfI|<ε
が成り立つ

という条件によって定義することができる。このような テンプレート:Mvar が存在するとき、函数 テンプレート:Mvarテンプレート:Math においてヘンストック=クルツヴァイル積分可能あるいはゲージ積分可能であるという(紛れの恐れがないときは単に可積分であるという)。

クザンの定理によれば、どのようなゲージ テンプレート:Mvar に対してもこのような テンプレート:Mvar-細分割 テンプレート:Mvar は存在する。したがって、この条件は空虚な真(どのようなゲージ テンプレート:Mvar を選んでも テンプレート:Mvar-細分割である テンプレート:Mvar が存在しないために上記の条件が真になること)とはなり得ない。リーマン積分はこの文脈で定数ゲージのみを用いた特別の場合として見ることができる。

性質

任意の函数 テンプレート:Math について、テンプレート:Math とすると、テンプレート:Mvar が区間 テンプレート:Math 上でヘンストック=クルツヴァイル積分であることの必要十分条件は、テンプレート:Mvarテンプレート:Math および テンプレート:Math の両区間でともにヘンストック=クルツヴァイル積分可能であることであり、またこのとき区間に対する加法性

abf(x)dx=acf(x)dx+cbf(x)dx

が成立する。また、ヘンストック=クルツヴァイル積分は線型、すなわち テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar実数とすると テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar が可積分ならば テンプレート:Math も可積分で、

ab(αf+βg)(x)dx=αabf(x)dx+βabg(x)dx

が成り立つ。テンプレート:Mvar がリーマン可積分若しくはルベーグ可積分ならば、テンプレート:Mvar はヘンストック=クルツヴァイル積分可能であり、テンプレート:Mvar の積分値はいずれの積分の意味でとっても一致する。重要なヘイクの定理は、

abf(x)dx=limcbacf(x)dx

が等式のいずれかの辺が存在する限り成立すること(およびこれと対称に、下の限界についての上からの極限をとったものも成り立つこと)を述べるものである。これはつまり、函数 テンプレート:Mvar が「広義ヘンストック=クルツヴァイル可積分」ならば、テンプレート:Mvar は狭義ヘンストック=クルツヴァイル可積分であることを意味する。特に、

01sin(1/x)xdx

のような広義リーマン積分またはルベーグ積分はそのままヘンストック=クルツヴァイル積分にもなっているのである。したがって、有限区間上(の非有界函数に対する意味で)の「広義ヘンストック=クルツヴァイル積分」を考えることには意味がないことが分かるが、しかし

a+f(x)dx:=limb+abf(x)dx

のような無限区間に対する意味で広義のヘンストック=クルツヴァイル積分を考えることには意味がある。

かなりの種類の函数については、ヘンストック=クルツヴァイル積分がルベーグ積分よりも一般(より多くの函数を積分できる)というわけではない。例えば、テンプレート:Mvar が有界函数ならば、次の条件はどれも同値になる。

一般に、任意のヘンストック=クルツヴァイル可積分函数はルベーグ可測であり、また テンプレート:Mvar がルベーグ可積分であるための必要十分条件は テンプレート:Mvar および テンプレート:Math がともにヘンストック=クルツヴァイル可積分となることである。これは、ヘンストック=クルツヴァイル積分を、「非絶対可積分」版ルベーグ積分と看做すことができることを意味する。またこれから、ヘンストック=クルツヴァイル積分が単調収束定理の適当な(函数が非負であることを課さない)変形版を満たすことや、優収斂定理の適当な変形版(函数列 テンプレート:Mvar に対する支配条件を弱めて、適当な可積分函数 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvarテンプレート:Math とできるとしたもの)を持たすことが導かれる。

函数 テンプレート:Mvar が至る所(若しくは可算個の例外を除く至る所)微分可能ならば、導函数 テンプレート:Mvar はヘンストック=クルツヴァイル可積分で、その不定ヘンストック=クルツヴァイル積分は テンプレート:Mvar に一致する(テンプレート:Mvar がルベーグ可積分である必要はないことに注意)。すなわち、任意の可微分函数はその導函数の積分と定数の違いを除いて一致するという微分積分学の第二基本定理

F(x)F(a)=axF(t)dt.

がより簡潔でより十分な形で得られたことになる。逆に、ルベーグの微分定理はヘンストック=クルツヴァイル積分に関しても成立する。すなわち、テンプレート:Mvarテンプレート:Math 上でヘンストック=クルツヴァイル可積分で

F(x)=axf(t)dt

を満たすならば、テンプレート:Math の殆ど至る所で テンプレート:Math が成立する(特に テンプレート:Mvar は殆ど至る所微分可能である)。

ヘンストック=クルツヴァイル可積分函数全体の成すベクトル空間にはテンプレート:仮リンク[* 1]が入り、このノルムに関して樽型かつ非完備になる。

マクシェイン積分

興味深いことに、ヘンストック=クルツヴァイル積分に類似した方法でルベーグ積分を再定義することができ、マクシェイン積分という。まず初めに、ヘンストック=クルツヴァイル積分における条件である

i tiδ(ti)<ui1tiui<ti+δ(ti)

テンプレート:Mvar-細分割 テンプレート:Lang の概念を用いた条件

i ti[ui1,ui]Uδ(ti)(ti)

に置き換える(ここで テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-近傍とする)と、上で与えたものと同値になるが、このように変更したあとは条件

i ti[ui1,ui]

を落とすことができて、マクシェイン積分の定義の条件

i [ui1,ui]Uδ(ti)(ti)

が得られる(この変更の結果として得られるマクシェイン積分はルベーグ積分と同値になる)。

注釈

テンプレート:Reflist

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:Integral

外部リンク

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