リーマン和

リーマン和（リーマンわ、テンプレート:Lang-en）とは、 実数区間 $I=[a,b]$ 上で、数列 $a=x_0<x_1<x_2<\dots <x_n=b$ と その間の代表点 ${\xi }_k(x_{k-1}\le {\xi }_k\le x_k,k=1,2,3,\dots ,n)$ があり、 数列のすべての有限差分 $\mathrm{\Delta }{x}_k:=x_k-x_{k-1}$ が $\underset{n\to \mathrm{\infty }}{\lim }\mathrm{\Delta }{x}_k=0$ を満たし、 区間 $I=[a,b]$ 上で定義された実数値連続函数 $f$ について、 $n\to \mathrm{\infty }$ での極限が、 数列の種類によらずにひとつの有限確定値に収束するとき、 リーマン積分

$\underset{a}{\overset{b}{\int }}f(x)dx=\underset{n\to \mathrm{\infty }}{\lim }\sum _{k=1}^{n}f({\xi }_k)\mathrm{\Delta }{x}_k$

が成り立つ。 このときの

$\sum _{k=1}^{n}f({\xi }_k)\mathrm{\Delta }{x}_k$

がリーマン和である。 ニュートンとライプニッツがそれぞれ別々に、微分と積分の逆演算性を発見した。 最初にリーマン和を左リーマン和 $\sum _{k=1}^{n}f(x_{k-1})\mathrm{\Delta }{x}_k$ と右リーマン和 $\sum _{k=1}^{n}f(x_k)\mathrm{\Delta }{x}_k$の形で導入したのはオイラーであるが、 それは「積分の定義」としてではなく「積分の近似式」としてであった。 以後、ラクロワ、ポアソンを経て、コーシーが、積分の定義とし採用する。 コーシーよりも前の積分は、微分の定義に依存したニュートン・ライプニッツ以来の逆微分であり、微分と独立に定義されたものではなかった 。 "Euler は積分を微分の逆演算として定義しているが，Cauchy は定積分をまず定義した後， $\frac{d}{dx}\underset{a}{\overset{x}{\int }}f(s)ds=f(x)$ を定理として導いた．こうした発想の逆転も Cauchy に負う．" これによって、微分の存在とは無関係に積分が定義できるようになった。

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  左リーマン和
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  右リーマン和
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  中点則

リーマン和の具体例

被積分函数が単項式のとき

例えば、$[1,2]$ で $f(x)=x^2$ のとき

等差数列

等差数列 $x_k=1+\frac{k}{n}(k=0,1,2,\dots ,n)$ をとると、 左リーマン和と右リーマン和は、それぞれ、

$\sum _{k=1}^n{x}_{k-1}^2\mathrm{\Delta }{x}_k=\sum _{k=1}^n{(1+\frac{k-1}{n})}^2\frac{1}{n}=\frac{7}{3}-\frac{3}{2n}+\frac{1}{6n^2}$

$\sum _{k=1}^n{x}_k^2\mathrm{\Delta }{x}_k=\sum _{k=1}^n{(1+\frac{k}{n})}^2\frac{1}{n}=\frac{7}{3}+\frac{3}{2n}+\frac{1}{6n^2}$

となる。

等比数列

等比数列 $x_k=2^{\frac{k}{n}}(k=0,1,2,\dots ,n)$ をとると、 左リーマン和と右リーマン和は、それぞれ、

$\sum _{k=1}^n{x}_{k-1}^2\mathrm{\Delta }{x}_k=\sum _{k=1}^n{\left(2^{\frac{k-1}{n}}\right)}^2(2^{\frac{k}{n}}-2^{\frac{k-1}{n}})=\frac{7}{2^{\frac{2}{n}}+2^{\frac{1}{n}}+1}$

$\sum _{k=1}^n{x}_k^2\mathrm{\Delta }{x}_k=\sum _{k=1}^n{\left(2^{\frac{k}{n}}\right)}^2(2^{\frac{k}{n}}-2^{\frac{k-1}{n}})=\frac{7}{2^{-\frac{2}{n}}+2^{-\frac{1}{n}}+1}$

となる。

$f(x)=x^2$ は$[1,2]$ で単調増加函数なので、等差数列か等比数列かに拘わらず、左リーマン和と右リーマン和の間で

$\sum _{k=1}^n{x}_{k-1}^2\mathrm{\Delta }{x}_k\le \sum _{k=1}^n{\xi }_k^2\mathrm{\Delta }{x}_k\le \sum _{k=1}^n{x}_k^2\mathrm{\Delta }{x}_k$

の関係が成り立つ。 連続函数の左リーマン和と右リーマン和は、$n\to \mathrm{\infty }$ の極限で収束するので、

$\underset{1}{\overset{2}{\int }}{x}^{2}dx=\underset{n\to \mathrm{\infty }}{\lim }\sum _{k=1}^n{\xi }_k^2\mathrm{\Delta }{x}_k=\frac{7}{3}$

が得られる。

積分の結果が対数となるとき

$[1,2]$ で $f(x)=\frac{1}{x}$ のとき

等比数列 $x_k=2^{\frac{k}{n}}(k=0,1,2,\dots ,n)$ をとると、 左リーマン和と右リーマン和は、それぞれ、

$\sum _{k=1}^n\frac{1}{x_{k-1}}\mathrm{\Delta }{x}_k=\sum _{k=1}^n\frac{1}{2^{\frac{k-1}{n}}}(2^{\frac{k}{n}}-2^{\frac{k-1}{n}})=n(2^{\frac{1}{n}}-1)$

$\sum _{k=1}^n\frac{1}{x_k}\mathrm{\Delta }{x}_k=\sum _{k=1}^n\frac{1}{2^{\frac{k}{n}}}(2^{\frac{k}{n}}-2^{\frac{k-1}{n}})=n(1-2^{-\frac{1}{n}})$

となる。 $f(x)=\frac{1}{x}$ は$[1,2]$ で単調減少函数なので、左リーマン和と右リーマン和の間で

$\sum _{k=1}^n\frac{1}{x_{k-1}}\mathrm{\Delta }{x}_k\ge \sum _{k=1}^n\frac{1}{{\xi }_k}\mathrm{\Delta }{x}_k\ge \sum _{k=1}^n\frac{1}{x_k}\mathrm{\Delta }{x}_k$

の関係が成り立つ。 連続函数の左リーマン和と右リーマン和は、$n\to \mathrm{\infty }$ の極限で収束するので、

$\underset{1}{\overset{2}{\int }}\frac{1}{x}dx=\underset{n\to \mathrm{\infty }}{\lim }n(2^{\frac{1}{n}}-1)=\underset{n\to \mathrm{\infty }}{\lim }n(1-2^{-\frac{1}{n}})$

が得られる。