モル

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モルテンプレート:Lang-en テンプレート:Ipa, テンプレート:Lang-fr, 記号: mol)は国際単位系 (SI) における物質量単位である。1971年の第14回国際度量衡総会(CGPM)の決議によって、国際単位系の基本単位として導入された[1]

定数6.02214076×1023アボガドロ定数と呼び、

モル=粒子の個数/アボガドロ定数

によりモルを定義する。アボガドロ定数は分子量が1である分子1グラム分の分子の数とほぼ等しい値である。

名称、記号

名称は仏語・英語ともに、mole であり、日本語名称は「モル」である。これはドイツ語のテンプレート:De(仏語ではテンプレート:Fr、英語では テンプレート:En。ともに 「分子」 の意)に由来する。

モルを表す単位記号は、mol である[2]。これはもともとはドイツ人化学者ヴィルヘルム・オストヴァルトによるもので[3]、1971年の第14回国際度量衡総会(CGPM)の決議によって決定された[4]

定義

「モル」の定義は以下である(第26回国際度量衡総会の決定および国際単位系国際文書第9版(2019)[5])。

テンプレート:Quotation

計量法(計量単位令)ではSIでの定義とは異なり、下記のように簡潔な定義となっている。 テンプレート:Quotation

アボガドロ定数

テンプレート:Main モルを定義することで、物質量と要素粒子の数を結ぶ普遍定数が定義され、その値を決定することができる。この普遍定数がアボガドロ定数である。 1 モルに含まれる構成要素の数をアボガドロ定数という。アボガドロ定数を表す記号は テンプレート:Math または テンプレート:Mvar が用いられる[6]。 ある試料に含まれる要素粒子 テンプレート:Mvar の物質量 テンプレート:Math は、要素粒子の個数 テンプレート:Math と以下の関係で結ばれる。

n(X)=N(X)NA.

物質量 テンプレート:Math の単位は mol であり、個数 テンプレート:Math無次元量であるため、アボガドロ定数は molテンプレート:Sup となる。

歴史

テンプレート:出典の明記 テンプレート:See also モルは本来は、全ての物質は分子よりできているとの考えの元に、その物質の分子量の数字にグラムをつけた質量に含まれる物質量を 1 モルと定義した。例えば酸素分子の分子量は 32.0 なので、1 mol の酸素分子は 32.0 g となる。物質量という概念は19世紀の近代化学発祥のころから使われているものであり、この単位は当初はグラム原子グラム分子などと呼ばれていた。

しかし、イオン結合金属結合には分子と呼べるものがないことがわかり、共有結合の場合でも単純な分子が存在しないものがあることもわかってきた。そこで、物質を表す化学式で示される元素の原子量の和を化学式量と呼び、それにグラムをつけた質量に含まれる物質量を 1 mol と定義することとした。これにより、1 mol の塩化ナトリウムは 58.5 g、は 55.85 g と表せるようになった。

1 モルに含まれる要素粒子の数は、要素粒子の種類にかかわらず一定であって、テンプレート:Val 個である[7]。この数を「アボガドロ数」という。アボガドロ数は、前記のように24桁の整数であり、また無次元量である点で「アボガドロ定数」とは異なる。

また 1 モルの理想気体は、標準状態 (テンプレート:En) では同じ体積(約テンプレート:Val L(リットル))を占める[8]。このように、モルは化学の分野では基本となる重要な単位である。

1913年頃から、原子の中には質量数の異なる数種の原子(同位体)があることがわかってきた。長年、モルの定義には酸素分子を使用し、酸素分子 32 g を 1 mol としてきたが、酸素原子には天然のものでも質量数 16 のほか 17, 18 のものがあることがわかった。すなわち、それまでは質量数 16, 17, 18 の酸素原子が混ざった状態のものでモルを定義していたことになる。それがわかってから、物理学の分野では質量数 16 の酸素だけを分離して(完全に分離するのは困難なので、分離できたと仮想して)、質量数 16 の酸素による酸素分子 32 g の物質量を 1 mol と再定義した。しかし、化学者たちはそれまで通りのモルの定義を使い続けた。

物理学と化学とで異なるモルを使い続けるのは不都合があるため、1960年国際純粋・応用物理学連合 (IUPAP) と国際純正・応用化学連合 (IUPAC) が協議して、共通的に炭素12に原子量 12 の値を与えることとした。ここから、1 mol は 12 g の炭素12の物質量という旧定義が導き出せる。炭素12が選ばれたのは、これが天然の炭素の大部分を占めているためである。 炭素原子によるモルの定義を「炭素スケール」とよび、それまでの酸素基準と分けて呼ぶこともある。

モルをSI基本単位とすることおよびその定義は、1971年国際度量衡総会 (CGPM) で採択された[9]

1980年国際度量衡委員会(CIPM)により以下の補則が加えられていた。これはモルの定義の一部であった[6]テンプレート:Quotation

2019年5月20日からアボガドロ定数を定義値とする現行の定義になった。テンプレート:See also

この定義により、モルはキログラムの定義に依存しないものになった。 なお、新定義では、アボガドロ定数を正確にテンプレート:Valとすることによりモルを定義したので、1モルの炭素12の質量は、12 gではなくなり、テンプレート:Valという実験値となった[10]

日本の法令上は、計量法第3条の規定[11]に基づく計量単位令(平成4年政令第357号)が、計量単位令の一部を改正する政令(令和元年5月17日政令第6号)により改正され、2019年5月20日に施行することにより変更された。

批判

1971年にモルが国際単位系に採用されて以来、モルをメートルと同等の単位として扱うことに対する多くの批判が生じている。

  • 所与の量の物質に含まれる分子の数は固定の無次元量であり、明確な基本単位を必要とせず、単純に数として表現することができる[12][13]
  • モルは、時代遅れの連続体的な物質の概念(完全な原子論的ではない)に基づいている[14]
  • SIにおける熱力学的モルは分析化学とは無関係であり、先進経済に回避可能なコストをもたらす可能性がある[15]
  • モルは真の計量単位というより「パラメトリック」な単位であり、物質量は「パラメトリック」な基本量である[16]
  • SIでは、実体の数を次元「1」の量として定義しており、「実体」と「連続量の単位」の間の存在論的な区別を無視している[17]

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称

テンプレート:CharCode

Unicodeには、モルを表す上記の文字が収録されている。これはCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであるので、使用は推奨されない[18][19]

脚注

注釈

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:Wiktionary

テンプレート:SI units navbox

テンプレート:Normdaten

  1. <国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 pp.56-57、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  2. 計量単位規則 別表第2、物質量の欄
  3. テンプレート:Cite book
  4. 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 pp.139-140、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  5. 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.98、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  6. 6.0 6.1 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006)、p. 26、2.1.1.6 物質量の単位(モル)。
  7. Avogadro constant CODATA2014
  8. molar volume of ideal gas (273.15 K, 101.325 kPa) The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
  9. 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006)、p. 20。
  10. molar mass of carbon-12 The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
  11. 第三条 前条第一項第一号に掲げる物象の状態の量のうち別表第一の上欄に掲げるものの計量単位は、同表の下欄に掲げるとおりとし、その定義は、国際度量衡総会の決議その他の計量単位に関する国際的な決定及び慣行に従い、政令で定める。
  12. テンプレート:Cite journal
  13. Giunta, C. J. (2015) "The Mole and Amount of Substance in Chemistry and Education: Beyond Official Definitions" J. Chem. Educ. 92: 1593-1597, テンプレート:Doi.
  14. Schmidt-Rohr, K. (2020). "Analysis of Two Definitions of the Mole That Are in Simultaneous Use, and Their Surprising Consequences" J. Chem. Educ. 97: 597-602, テンプレート:Doi
  15. テンプレート:Cite journal[3].
  16. テンプレート:Cite journal
  17. テンプレート:Cite journal
  18. テンプレート:Cite web
  19. テンプレート:Cite web