ヤコビ多様体

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数学において、種数 g の非特異代数曲線 Cヤコビ多様体 (ヤコビたようたい、Jacobian variety) J(C) とは、次数が 0 の直線束モジュライ空間を言う。ヤコビ多様体は、Cピカール群の単位元の連結成分であり、従って、アーベル多様体である。

ヤコビ多様体の名称はヤコビの逆問題を研究したカール・グスタフ・ヤコビにちなむテンプレート:Sfn。最初に「ヤコビ多様体」の名称を使ったのはフェリックス・クラインではないかと言われている[1]

はじめに

テンプレート:要改訳

ヤコビ多様体の名称は、テンプレート:要検証テンプレート:Efn2(Carl Gustav Jacobi)の名前にちなんでいる。ヤコビ多様体は、次元 g の主偏極アーベル多様体であり、従って、複素数体上ではテンプレート:仮リンク(complex torus)である。p が C 上の点であれば、C は J の単位元へ写像される与えられた点 p を持つ J の部分多様体へ写像することができ、C は J をとして生成する。

リーマン面のヤコビ多様体の構成

リーマン面 X のヤコビアン Jac(X) を以下のように定義する。

Jac(X):=Ωhol1(X)/H1(X,).

ただし、Ωhol1(X)X 上で定義された正則1形式のなす複素ベクトル空間。 Ωhol1(X) は、その双対空間、 H1(X,)は、X 上の1次のホモロジー群である。 Ωhol1(X) の元は次のように明示的に表せる

A1AgB1Bg,

で与えられるテンプレート:Sfn。ただしA1,AgB1,Bgはそれぞれ、X(Γ)α-ループ、β-ループ、gX の種数である。 または、アーベルの定理を適用して、

Ωhol1(X)={γnγγ|nγ,γnγ=0},

と考えてもよいテンプレート:Sfn。ただし、γX上のパスである。また、H1(X,)の要素は

A1A2AgB1Bg,

で与えられるテンプレート:Sfn。 このような定義は、リーマン面 X 上の積分が、途中に任意のループ上の積分を含んでも結果が不変であることを要求することで自然に現れる。

任意の体上の曲線のヤコビ多様体は、テンプレート:Harvtxtにより、有限体上の曲線のリーマン予想の証明の一部として構成された。

アーベル・ヤコビの定理は、このように作られた複素トーラスが次数 0 の直線束のモジュライ空間であるピカール多様体 テンプレート:Math と同型である、という定理であるテンプレート:Sfn。またヤコビ多様体は単に複素トーラスであるというだけではなく、代数多様体の構造も入ることが知られているテンプレート:Sfn

代数曲線のヤコビ多様体

この節では特に断らない限り テンプレート:Mvar を任意のテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 上のテンプレート:仮リンク非特異代数曲線とするテンプレート:Efn2

定義

考えている曲線 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 上の任意の連結スキーム テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math

Pテンプレート:Supsub(T) = {ℒ ∈ Pic(C×T) | すべての tT に対して deg(ℒテンプレート:Sub = 0)} / qテンプレート:SupPic(T)

で定義するテンプレート:Sfn。ここでスキーム テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math はそのピカール群テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Math 上のファイバー積テンプレート:Math 上の直線束 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar の点 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Mathテンプレート:Mathテンプレート:Mvar 上のファイバーに制限したものテンプレート:Sfnテンプレート:Math は直線束の次数、テンプレート:Mvarテンプレート:Math から第二成分への射影である。

このとき、テンプレート:Mvar 上のあるアーベル多様体 テンプレート:Mvar であって テンプレート:Mathテンプレート:Mathテンプレート:Mvar に関して関手的に同型となるものが存在するテンプレート:Sfn。このアーベル多様体 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarヤコビ多様体(Jacobian variety)といいテンプレート:Sfn、記号 テンプレート:Math で表す[2]

諸性質

次元

ヤコビ多様体 テンプレート:Mvar の次元は テンプレート:Mvar種数 テンプレート:Mvar と等しいテンプレート:Sfn

アーベル・ヤコビ写像

曲線 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 有理点 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:仮リンク テンプレート:Math であって テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 有理点 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math となるものがただ一つ存在するテンプレート:Sfn。これを 標準写像(canonical map)テンプレート:Sfn、またはアーベル・ヤコビ写像という[2]

この写像から微分形式の引き戻しにより定義される テンプレート:Math から テンプレート:Math への線型写像 テンプレート:Math は同型写像であるテンプレート:Sfn

リーマン面のヤコビ多様体との関係

基礎体 テンプレート:Mvar複素数体 テンプレート:Math であるとき、テンプレート:Mvarテンプレート:Math 値点 テンプレート:Math には自然にコンパクト・リーマン面の構造が入るので、このリーマン面のヤコビ多様体 テンプレート:Math を考えることができる。これは代数幾何学的に定義されたヤコビ多様体 テンプレート:Mvarテンプレート:Math 値点 テンプレート:Math と自然に同型になるテンプレート:Sfn。この同型を与える写像は次のように定義される。まず テンプレート:Mvar正則1形式がなす テンプレート:Math 上のベクトル空間 テンプレート:Math双対ベクトル空間 テンプレート:Math から テンプレート:Math への写像を合成写像

Γ(C,ΩC1)Γ(J,ΩJ1)T0(J)expJ()

で定義する。最初の写像はアーベル・ヤコビ写像から誘導される写像で、次の写像は テンプレート:Mathテンプレート:Mvar接空間 テンプレート:Math の自然な同型写像で、最後の テンプレート:Math は指数写像である。この写像の テンプレート:Math における核が テンプレート:Math であることが証明できるので、これより テンプレート:Mathテンプレート:Math が同型になることがわかる。

アルバネーゼ関手性

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 有理点、テンプレート:Math をアーベル・ヤコビ写像とする。テンプレート:Mvar からアーベル多様体 テンプレート:Mvar への射 テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の単位元に送るものがあったとすると、ある一意に定まる準同型 テンプレート:Math が存在して テンプレート:Math が成り立つテンプレート:Sfn。この性質をアルバネーゼ関手性(Albanese functoriality)という[3]。特に、テンプレート:Math を非特異射影曲線の有限被覆、テンプレート:Mathテンプレート:Math をそれぞれ テンプレート:Mathテンプレート:Mathテンプレート:Mvar 有理点で テンプレート:Math が成り立つものとするとき、アルバネーゼ関手性よりアーベル多様体の射 テンプレート:Math であって テンプレート:Math を満たすものが存在する。

ピカール関手性

テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 上の非特異射影曲線の間の射とする。このとき テンプレート:Mvar 上のアーベル多様体の射 テンプレート:Math であって誘導される写像 テンプレート:Math が直線束の引き戻し写像になるものが存在する[3]。これをピカール関手性(Picard functoriality)と呼ぶ。

発展した話題

テンプレート:要改訳 テンプレート:仮リンク(Torelli's theorem)は、複素曲線が(偏極をもった)ヤコビ多様体により決定することを言っている。

テンプレート:仮リンク(Schottky problem)は、どのような偏極を持つアーベル多様体が曲線のヤコビ多様体であるかを問うている。

ピカール多様体アルバネーゼ多様体や、テンプレート:仮リンク(intermediate Jacobian)は、高次元の多様体へのヤコビ多様体の一般化である。高次元の多様体に対し、正則 1-形式の空間の商空間としてのヤコビ多様体の構成はアルバネーゼ多様体として一般化できる。しかし、高次元ではピカール多様体と同型になるとは限らない。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

注釈

テンプレート:Notelist2

出典

テンプレート:Reflist

参考文献