リー・トロッター積公式
数学において、ソフス・リー (Sophus Lie, 1875) にちなんで名づけられたリーの積公式 (テンプレート:Lang-en-short) は、任意の実あるいは複素正方行列 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar に対して、
が成り立つという定理である。ここで テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の行列指数関数を表す。リー・トロッターの積公式 (Lie–Trotter product formula) テンプレート:Harv およびトロッター・加藤の定理 (Trotter–Kato theorem) テンプレート:Harv はこれをある種の非有界線型作用素 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar に拡張する。
定理
テンプレート:Math を同じ次数の任意の実または複素正方行列、テンプレート:Mvar を自然数とするとき、次の式が成立する。
ここで テンプレート:Math は行列指数関数による テンプレート:Mvar の像であり、次の式により定義される。
ただし、テンプレート:Math(単位行列)である。
また、行列 テンプレート:Mvar のノルムは次で定義するものとし、収束はこのノルムによることを意味するものとする。
ただし、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の テンプレート:Math 成分の絶対値、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の次元である。係数 は 単位行列 テンプレート:Math のノルムを 1 にするためのものであり、この係数を省いた定義を用いる文献もある(この係数が無くても、以下の論議で問題は発生しない)。
リー・トロッター積公式は、通常の指数関数における次の規則の拡張である。
この式は、テンプレート:Math が任意の実数または複素数の場合に成立する。テンプレート:Math を行列 テンプレート:Math2 で置き変え、指数関数を行列指数関数で置き変えると、この規則が成立するためには、一般に テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が可換である必要がある。しかし、リー・トロッター積公式は、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が可換でなくても一般に成立する。
この公式は、テンプレート:仮リンクの自明な系である。
より一般的には、テンプレート:Math2 を行列に限定せず、任意のノルム空間 テンプレート:Mvar 上の有限なノルムを持つ線形作用素としても、この公式は成立する。ただし、上記の行列についてのノルムは、次で定義されるノルム空間 テンプレート:Mvar 上の線形作用素 テンプレート:Mvar のノルム テンプレート:Math に置き換えるものとする。
この定義では、ノルム空間 テンプレート:Mvar 上の恒等写像 テンプレート:Math のノルムは 1 である。
証明
特に複素正方行列の場合について証明する。以下の証明は テンプレート:Harv による。次の補題を用いる。
- 補題
テンプレート:Math を同じ次数の任意の複素正方行列とすると、次の関係が成り立つテンプレート:Sfn。
ただし、 はランダウの記号(ただし、行列値に拡張している)である。
補題の証明は省略する。
補題から テンプレート:Mvar を自然数として任意の行列 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar に対して次の式が成り立つ。
従って、
となるから、
が成り立つ。
応用
この公式は、量子力学における経路積分において応用されており、この公式によってシュレーディンガー時間推進作用素 (そのジェネレーターがハミルトニアンである) を、運動エネルギー作用素 (の時間積分断片)とポテンシャルエネルギー作用素 (の時間積分断片) の交互の積の列に分離することが可能になっているテンプレート:Sfn。同様のアイデアは微分方程式の数値解法における分割法 (離散化) を構築する上でも使われている。
脚注
参考文献
- テンプレート:Cite book
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- Sophus Lie and Friedrich Engel (1888, 1890, 1893). Theorie der Transformationsgruppen (1st edition, Leipzig; 2nd edition, AMS Chelsea Publishing, 1970) ISBN 0828402329
- テンプレート:Citation.
- テンプレート:Citation, pp. 35.
- テンプレート:SpringerEOM
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Citation, pp. 99.
- テンプレート:Cite journal