指数関数

実解析における指数関数(しすうかんすう、テンプレート:Lang-en-short)は、冪乗における指数 (テンプレート:En) を変数として、その定義域を主に実数の全体へ拡張して定義される初等超越関数の一種である。対数の逆関数であるため、逆対数 (テンプレート:En) と呼ばれることもある[1]テンプレート:Efn。自然科学において、指数関数は量の増加度に関する数学的な記述を与えるものとして用いられる(指数関数的成長や指数関数的減衰の項を参照)。
一般に、テンプレート:Math かつ テンプレート:Math なる定数 テンプレート:Mvar に関して、(主に実数の上を亙る)変数 テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar へ送る関数は、「[[底に関する指数函数|テンプレート:Mvar を底とする指数関数]]」と呼ばれる。「指数関数」との名称は、与えられた底に関して冪指数を変数とする関数であることを示唆するものであり、冪指数を固定して底を独立変数とする冪函数とは対照的である。
しばしば、より狭義の関数を意図して単に「指数関数」と呼ぶこともある。そのような標準的な (the) 指数関数(あるいはより明示的に「自然指数関数」)テンプレート:Efnはネイピア数 テンプレート:Math を底とする関数 テンプレート:Math である。これを テンプレート:Math のようにも書く。この関数は、導関数が自分自身に一致するなど、他の指数関数と比べて著しく特異な性質を持つ。底 テンプレート:Mvar を他の底 テンプレート:Mvar に取り換えるには自然対数 テンプレート:Math を用いて、等式
を適用すればよいから、以下本項では主に自然指数関数について記述し、多くの場合「指数関数」は自然指数関数の意味で用いる。
歴史と概観

ある量の変化(増大または減少)率がその量の現在値に比例するというような状況において、指数関数は生じてくる(指数関数的増大または指数関数的減少)。
そのような例として、連続的複利計算があり、実はヤコブ・ベルヌーイが テンプレート:Harv[2] においてこのような複利計算から今日 テンプレート:Mvar と書かれる数(ネイピア数)
を導いている。後の1697年にヨハン・ベルヌーイが指数関数の解析学を研究している[2]。元本 テンプレート:Math に対して年 テンプレート:Mvar の割合で金利を得る複利を考えると、得られる利息は毎月現在値に テンプレート:Math だから、総額は毎月 テンプレート:Math 倍となり一年で テンプレート:Math となる。あるいは、毎日金利を得るものとすれば テンプレート:Math である。さらに間隔を短くして年間に金利を得る回数を限りなく増やした極限として、指数関数の定義
を与えた最初の人はオイラーである[3]。これは数ある指数関数の特徴付けの一つであり、ほかにも冪級数や微分方程式を用いた定義などがある。
どの定義に従ったとしても、指数関数は以下の基本的な関係(指数法則)
を満たすから、指数関数を テンプレート:Mvar の冪乗とみなし、テンプレート:Mvar と書くこともある。
指数関数の変化率、即ち導関数は指数関数自身に一致する。より一般に、変化率が自分自身と(そのものではなく)比例するという性質を持つ関数は、指数関数を用いて表すことができる。関数のこのような性質は指数関数的増加や指数関数的減少と呼ばれる。
指数関数は複素平面上の整関数に拡張される。オイラーの公式は指数関数の純虚数における値と三角関数を関係付ける。同様に、指数関数は行列変数やより一般のバナッハ環に値を取る変数などに対しても定義される。あるいはリー代数における指数写像に一般化される。
性質
指数関数 は次の性質を持つ:
- のとき狭義増加:
- のとき狭義減少:
- は各 に対し全単射. よって は各 に対し可逆で,
- 特に となる を と書くと,
- のとき ならば 特に のとき ならば
厳密な定義

指数関数 を一意的に定義するための特徴付けは、同値な方法がいくつも知られている。中でも以下の冪級数
で定義するのが典型的である[4]。これは他の方法で指数関数を定義した場合に導くことのできる、指数関数のテイラー展開そのものである。
あまり典型的ではないが、自然対数関数の逆関数という意味で、指数関数 を方程式
の解 テンプレート:Mvar と定めることもできる。あるいはまた、以下の極限
によっても同じものが定まる[3]。
微分
底がネイピア数 テンプレート:Mvar、すなわち
である指数関数 テンプレート:Mvar の導関数は テンプレート:Mvar 自身となる。
解析学においてはこの性質を満たす関数として指数関数を定義する。つまり、指数関数 テンプレート:Math とは、
を満たす関数のことである。この関数は代数的な定義で示される性質を満たし、両者は一致することが示される。
一般の指数関数 テンプレート:Mvar の導関数は自然対数 テンプレート:Math を用いて、合成関数の微分公式より、
となる。テンプレート:Math とすれば テンプレート:Math なので最初の公式に戻る。
一般化
二重指数関数
テンプレート:Main 二重指数関数とは、テンプレート:Math の形で表現される関数のことである。
テンプレート:Anchors 複素指数関数
テンプレート:Main 実変数の指数函数に対するテイラー級数において、変数をそのまま複素数に取り換えることによってガウス平面 テンプレート:Mathbf 上の複素函数が得られる。すなわち、複素指数函数は、任意の複素数 テンプレート:Mvar に対して
によって定まる整関数である。実指数関数について成り立つ性質のいくつかは複素指数関数に対してもそのまま成り立つ。また、実変数 テンプレート:Mvar の純虚指数函数は
で定義される実変数複素数値函数である(オイラーの公式の項も参照)。
テンプレート:Main 複素指数函数の場合と同様に、テイラー級数表示における変数を [[p進数|テンプレート:Mvar-進数]]とすることにより、テンプレート:Mvar-進数の全体 テンプレート:Math 上の関数として テンプレート:Mvar-進指数関数が定義される。
行列の指数関数
テンプレート:Main 上記のテイラー展開の テンプレート:Mvar に任意の正方行列 テンプレート:Mvar を代入することにより、行列指数関数 テンプレート:Math が定義される。
とくに、テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar 次の実一般線型群 テンプレート:Math のリー代数 テンプレート:Math すなわち テンプレート:Mvar 次の実正方行列全体を亘るとすれば、この指数関数
行列の乗法の非可換性ゆえに、行列の指数函数は指数法則 テンプレート:Math を一般には満たさない(もちろん、テンプレート:Math であるような テンプレート:Mvar に対しては満たす)。この両辺の誤差についてはテンプレート:Ill2を参照せよ。
バナッハ環上の指数函数
より一般に、テイラー級数による指数函数の定義は任意の単位的バナッハ環 テンプレート:Mvar において意味を為す。この場合、テンプレート:Mvar の零元 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math は乗法単位元であり、任意の テンプレート:Math に対し テンプレート:Mvar は可逆元で テンプレート:Math を満たすが、指数法則 テンプレート:Math(右辺は冪級数のコーシー積として定義できる)の成立には可換性 (テンプレート:Math) が必要である。
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク
- テンプレート:MathWorld
- テンプレート:PlanetMath
- テンプレート:SpringerEOM
- テンプレート:SpringerEOM
- テンプレート:SpringerEOM
- テンプレート:Nlab
- ↑ MSDN の
Exp関数の解説 - ↑ 2.0 2.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 3.0 3.1 Eli Maor, e: the Story of a Number, p.156.
- ↑ テンプレート:Cite book