三角関数

テンプレート:Redirect テンプレート:混同 テンプレート:色 三角関数（さんかくかんすう、テンプレート:Lang-en-short）とは、平面三角法における、角度の大きさと線分の長さの関係を記述する関数の族、およびそれらを拡張して得られる関数の総称である。鋭角を扱う場合、三角関数の値は対応する直角三角形の二辺の長さの比（三角比）である。三角法に由来する三角関数という呼び名のほかに、単位円を用いた定義に由来する円関数（えんかんすう、テンプレート:Lang）という呼び名がある。

単位円による、6つの三角関数が表す長さ。

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テンプレート:Table2

三角関数には以下の6つがある。なお、正弦、余弦、正接の3つのみを指して三角関数と呼ぶ場合もある。

• 正弦（せいげん）、テンプレート:Math（テンプレート:En）
• 余弦（よげん）、テンプレート:Math（テンプレート:En）
• 正接（せいせつ）、テンプレート:Math（テンプレート:En）
• 正割（せいかつ）、テンプレート:Math（テンプレート:En）
• 余割（よかつ）、テンプレート:Math（テンプレート:En）
• 余接（よせつ）、テンプレート:Math（テンプレート:En）

特に テンプレート:Math は幾何学的にも解析学的にも良い性質をもっているので、様々な分野で用いられる。例えば、波や信号などは正弦関数と余弦関数とを組み合わせて表現することができる。この事実はフーリエ級数およびフーリエ変換の理論として知られ、音声などの信号の合成や解析の手段として利用されている。ベクトルのクロス積や内積は正弦関数および余弦関数を用いて表すことができ、ベクトルを図形に対応づけることができる。初等的には、三角関数は実数を変数とする1変数関数として定義される。三角関数の変数に対応するものとしては、図形のなす角度や、物体の回転角、波や信号のような周期的なものにおける位相などが挙げられる。

三角関数に用いられる独特な記法として、三角関数の冪乗と逆関数に関するものがある。通常、関数 テンプレート:Math の累乗は テンプレート:Math や テンプレート:Math のように書くが、三角関数の累乗は テンプレート:Math のように書かれることが多い。逆三角関数については通常の記法 (テンプレート:Math) と同じく、テンプレート:Math などと表す（この文脈では、三角関数の逆数は分数を用いて テンプレート:Math または テンプレート:Math のように表される）。文献または著者によっては、通常の記法と三角関数に対する特殊な記法との混同を避けるため、三角関数の累乗を通常の関数と同様にすることがある。また、三角関数の逆関数として テンプレート:Math を添え字にする代わりに関数の頭に テンプレート:Math を付けることがある（たとえば テンプレート:Math の逆関数として テンプレート:Math の代わりに テンプレート:Math を用いる。テンプレート:Math を付けて テンプレート:Math と表すこともある）。

三角関数に似た性質をもつ関数として、指数関数、双曲線関数、ベッセル関数などがある。また、三角関数を利用して定義される関数としてしばしば応用されるものにsinc関数がある。

定義

直角三角形によるもの

テンプレート:Math を直角とする直角三角形ABC
テンプレート:Colorbox 斜辺AB = h (hypotenuse)
テンプレート:Colorbox 対辺BC = a (opposite side)
テンプレート:Colorbox 底辺AC = b (adjacent side、隣辺)

直角三角形において、1 つの鋭角の大きさが決まれば、三角形の内角の和は テンプレート:Mathであることから他の 1 つの鋭角の大きさも決まり、3 辺の比も決まる。ゆえに、角度に対して辺比（三角比）の値を与える関数を考えることができる。

テンプレート:Math を直角とする直角三角形 ABC において、斜辺AB、テンプレート:Math の対辺BC、底辺（隣辺）CA の辺の長さをそれぞれ テンプレート:Math と表す（図を参照）。テンプレート:Math に対して三角形の辺の比 テンプレート:Math が決まることから、

$\begin{array}{cc}\sin \theta & =\frac{a}{h}\\ \cos \theta & =\frac{b}{h}\\ \tan \theta & =\frac{a}{b}=\frac{\sin \theta }{\cos \theta }\\ \sec \theta & =\frac{h}{b}=\frac{1}{\cos \theta }\\ \mathrm{cosec}\theta & =\csc \theta =\frac{h}{a}=\frac{1}{\sin \theta }\\ \cot \theta & =\frac{b}{a}=\frac{1}{\tan \theta }\end{array}$

という 6 つの値が定まる。それぞれテンプレート:Nobrテンプレート:Nobrテンプレート:Nobrテンプレート:Nobrテンプレート:Nobrテンプレート:Nobrと呼び、まとめて三角比と呼ばれる。ただし テンプレート:Math は長いので テンプレート:Math と略記することも多い。

三角関数の和名と定義

	＿弦		＿接		＿割		∠C を直角とする直角三角形 ABC h = 斜辺AB a = 対辺BC b = 底辺AC
正＿	正弦 (sin)	$\frac{a}{h}$	正接 (tan)	$\frac{a}{b}$	正割 (sec)	$\frac{h}{b}$
余＿	余弦 (cos)	$\frac{b}{h}$	余接 (cot)	$\frac{b}{a}$	余割 (csc)	$\frac{h}{a}$

ある正角 テンプレート:Math に対する余弦、余割、余接はその角 テンプレート:Math の余角 テンプレート:Enに対する正弦、正割、正接として定義される。ここで余角とは「鋭角（正角）に対し合わせて直角となる角」を指し、この場合は 正角テンプレート:Mathに対する余角はテンプレート:Mathとなる。

$\begin{array}{cc}\cos \theta & =\sin (90^{\circ }-\theta )=\sin (\frac{\pi }{2}-\theta )\\ \csc \theta & =\sec (90^{\circ }-\theta )=\sec (\frac{\pi }{2}-\theta )\\ \cot \theta & =\tan (90^{\circ }-\theta )=\tan (\frac{\pi }{2}-\theta )\end{array}$

三角比は平面三角法に用いられ、巨大な物の大きさや遠方までの距離を計算する際の便利な道具となる。角度 テンプレート:Mvar の単位は、通常度またはラジアンである。

三角比、すなわち三角関数の直角三角形を用いた定義は、直角三角形の鋭角に対して定義されるため、その定義域は テンプレート:Math が 0° から 90° まで(0 から π / 2 まで)の範囲に限られる。また、テンプレート:Math の場合 テンプレート:Math が、テンプレート:Math の場合 テンプレート:Math がそれぞれ定義されない。これは分母となる辺の比の大きさが 0 になるためゼロ除算が発生し、その除算自体が数学的に定義されないからである。一般の角度に対する三角関数を得るためには、三角関数について成り立つ何らかの定理を指針として、定義の拡張を行う必要がある。単位円による定義は初等幾何学におけるそのような拡張の例である。他に同等な方法として、正弦定理や余弦定理を用いる方法などがある。

単位円によるもの

6種類の三角関数、単位円、テンプレート:Mathラジアンの角度に対する直線の図。直線の色が変わる点3点を考えたとき、テンプレート:Color、テンプレート:Color、テンプレート:Colorについては原点から各点への線分の長さを表し、テンプレート:Color、テンプレート:Color、テンプレート:Color は各点のy成分を表す。テンプレート:Color、テンプレート:Color、テンプレート:Colorは各点の x 成分を表す。

2 次元ユークリッド空間 テンプレート:Math における単位円 テンプレート:Math 上の点を テンプレート:Math とする。反時計回りを正の向きとして、原点と円周を結ぶ線分 テンプレート:Math と テンプレート:Mvar 軸のなす角の大きさ テンプレート:Math を媒介変数 テンプレート:Mvar として選ぶ。このとき実数の変数 テンプレート:Mvar に対する三角関数は以下のように定義される。

$\begin{array}{cc}\sin t& =y\\ \cos t& =x\\ \tan t& =\frac{y}{x}=\frac{\sin t}{\cos t}\end{array}$

これらは順に正弦関数 テンプレート:En、余弦関数 テンプレート:En、正接関数テンプレート:En と呼ばれる。さらにこれらの逆数として以下の 3 つの関数が定義される。

$\begin{array}{cc}\csc t& =\frac{1}{y}=\frac{1}{\sin t}\\ \sec t& =\frac{1}{x}=\frac{1}{\cos t}\\ \cot t& =\frac{x}{y}=\frac{1}{\tan t}\end{array}$

これらは順に余割関数 テンプレート:En、正割関数 テンプレート:En、余接関数 テンプレート:En と呼ばれ、テンプレート:Math と合わせて三角関数と総称される。特に テンプレート:Math は割三角関数（かつさんかくかんすう）と呼ばれることがある。

この定義は テンプレート:Math の範囲では直角三角形による定義と一致する。

級数によるもの

角度、辺の長さといった幾何学的な概念への依存を避けるため、また定義域を複素数に拡張するために、級数（他の定義を採用した三角関数のテイラー展開に一致する）を用いて定義することもできる。この定義は実数の範囲では単位円による定義と一致する。以下の級数は共に示される収束円内で収束する。

• テンプレート:Mvar を複素数、テンプレート:Mvar をベルヌーイ数、テンプレート:Mvar をオイラー数とする。

$\begin{array}{cc}\sin z& =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(-1{)}^n}{(2n+1)!}{z}^{2n+1}\text{for all}z,\\ \cos z& =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{{(-1)}^n}{\left(2n\right)!}{z}^{2n}\text{for all}z,\\ \tan z& =\sum _{n=1}^{\mathrm{\infty }}\frac{{(-1)}^n{2}^{2n}(1-2^{2n})B_{2n}}{\left(2n\right)!}{z}^{2n-1}\text{for}|z|<\frac{\pi }{2},\\ \cot z& =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{{(-1)}^n{2}^{2n}{B}_{2n}}{\left(2n\right)!}{z}^{2n-1}\text{for}0<|z|<\pi ,\\ \sec z& =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{{(-1)}^n{E}_{2n}}{\left(2n\right)!}{z}^{2n}\text{for}|z|<\frac{\pi }{2},\\ \csc z& =\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{{(-1)}^n(2-2^{2n})B_{2n}}{\left(2n\right)!}{z}^{2n-1}\text{for}0<|z|<\pi .\end{array}$

微分方程式によるもの

実関数 テンプレート:Math の二階線型常微分方程式の初期値問題 テンプレート:NumBlk の解として テンプレート:Math を定義し、テンプレート:Math を テンプレート:Math として定義できる。上記の式を 1 階の連立常微分方程式に書き換えると、テンプレート:Math として、 テンプレート:NumBlk および初期条件 テンプレート:Math となる。

他の定義

この他にも定積分による（逆三角関数を用いた）定義や複素平面の角の回転による定義などが知られているテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。

性質

周期性

正円より得られる テンプレート:Math と テンプレート:Math

テンプレート:Math と テンプレート:Math のグラフ。これらの関数の周期性が確認できる。

テンプレート:Mvar 軸の正の部分となす角は

$t=\theta +2\pi n(0\le \theta <2\pi ,n\in \mathbb{Z})$

と表すことができ、テンプレート:Mvar を偏角、テンプレート:Mvar を一般角という。

一般角 テンプレート:Mvar が テンプレート:Math 進めば点 テンプレート:Math は単位円上を1周し元の位置に戻る。従って、

$\begin{array}{cc}\cos (t+2\pi n)& =\cos t\\ \sin (t+2\pi n)& =\sin t\end{array}$

すなわち三角関数 テンプレート:Math は周期 テンプレート:Math の周期関数である。

ほぼ同様に、テンプレート:Math は周期 テンプレート:Math の周期関数、テンプレート:Math は周期 テンプレート:Math の周期関数である。

また、テンプレート:Mathのグラフの形は正弦波である。

三角関数のグラフ: Sine（青実線）、 Cosine（緑実線）、 Tangent（赤実線）、 Cosecant（青点線）、 Secant（緑点線）、 Cotangent（赤点線）

相互関係

単位円上の点の座標の関数であることから、三角関数の間には多数の相互関係が存在する。

基本相互関係

三角関数の間に成り立つ最も基本的な恒等式の 1 つとして

${\sin }^2\theta +{\cos }^2\theta =1$

が挙げられる。これはピタゴラスの基本三角関数公式 テンプレート:En と呼ばれている。

上記の式を変形して整理すれば、以下の式が導かれる。

$\begin{array}{cc}{\sec }^2\theta -{\tan }^2\theta & =\frac{1}{{\cos }^2\theta }-{\tan }^2\theta =1,\\ {\csc }^2\theta -{\cot }^2\theta & =\frac{1}{{\sin }^2\theta }-\frac{1}{{\tan }^2\theta }=1.\end{array}$

負角・余角・補角公式

負角

$\begin{array}{cc}\sin (-\theta )& =-\sin \theta \\ \cos (-\theta )& =\cos \theta \\ \tan (-\theta )& =-\tan \theta \end{array}$

余角

$\begin{array}{cc}\sin (\frac{\pi }{2}-\theta )& =\cos \theta \\ \cos (\frac{\pi }{2}-\theta )& =\sin \theta \\ \tan (\frac{\pi }{2}-\theta )& =\cot \theta \end{array}$

補角

$\begin{array}{cc}\sin (\pi -\theta )& =\sin \theta \\ \cos (\pi -\theta )& =-\cos \theta \\ \tan (\pi -\theta )& =-\tan \theta \end{array}$

加法定理

以下は複号同順。

$\begin{array}{cc}\sin (x\pm y)& =\sin x\cos y\pm \cos x\sin y\\ \cos (x\pm y)& =\cos x\cos y\mp \sin x\sin y\\ \tan (x\pm y)& =\frac{\tan x\pm \tan y}{1\mp \tan x\tan y}\end{array}$

証明

ピタゴラスの基本三角公式

三角関数および指数関数は冪級数によって定義されているものとすると、負角公式と指数法則およびオイラーの公式より

$\begin{array}{cc}1& =e^0=e^{i\theta -i\theta }=e^{i\theta }{e}^{-i\theta }\\ & =(\cos \theta +i\sin \theta )(\cos \theta -i\sin \theta )\\ & ={\sin }^2\theta +{\cos }^2\theta \end{array}$

である。

負角

テンプレート:Math および テンプレート:Math については、冪級数による表示から明らかである。また

$\tan (-\theta )=\frac{\sin (-\theta )}{\cos (-\theta )}=\frac{-\sin \theta }{\cos \theta }=-\tan \theta$

である。

加法定理

オイラーの公式 テンプレート:NumBlk と負角の公式から

$\cos z=\frac{e^{iz}+e^{-iz}}{2},\sin z=\frac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}$

を得て、指数法則

$e^{z+w}=e^z{e}^w$

を用いれば テンプレート:Math の加法定理が得られる。これらから他の三角関数についての加法定理も得られる。

テンプレート:Math（緑の線分の長さ）を求める。

また、ピタゴラスの定理から加法定理を示す方法が挙げられる。この方法では、円周上の任意の 2 点間の距離を 2 通りの座標系について求めることで、両者が等しいことから加法定理を導く。2 点間の距離を求めるのに三平方の定理を用いる。以下では単位円のみを取り扱うが、円の半径によらずこの方法から加法定理を得ることができる。

単位円の周上に 2 点 テンプレート:Math を取る。P と Q を結ぶ線分の長さを PQ として、その 2 乗 テンプレート:Math を 2 通りの方法で求めることを考える（右図も参照）。

P と Q の テンプレート:Mvar 座標の差と テンプレート:Mvar 座標の差から、三平方の定理を用いて テンプレート:Math を求める。 テンプレート:NumBlk

次に テンプレート:Math となるような座標系を取り、同様に三平方の定理から テンプレート:Math を求める。この座標系に対する操作は、テンプレート:Mvar 軸および テンプレート:Mvar 軸を角度 テンプレート:Mvar だけ回転させる操作に相当するので、テンプレート:Math となる。従って、 テンプレート:NumBlk となる。

テンプレート:EquationNote と テンプレート:EquationNote の右辺が互いに等しいことから、次の テンプレート:Math に関する加法定理が得られる。 テンプレート:NumBlk 三角関数の他の性質を利用することで、テンプレート:EquationNote から テンプレート:Math の加法定理なども導くことができる。

不動点

cos の不動点は以下の式を満たし、ドッティ数とよばれる。

$\cos x=x={\cos }^{-1}x\iff x\sim 0.739$

微積分

三角関数の微積分は、以下の表のとおりである。ただし、これらの結果には様々な（一見同じには見えない）表示が存在し、この表における表示はいくつかの例であることに注意されたい。

なお、以下の表の テンプレート:Mvar は積分定数、テンプレート:Math は自然対数である。

$f(x)$	微分　$f^{\prime }(x)$	不定積分　$\int f(x)dx$
$\sin x$	$\cos x$	$-\cos x+C$
$\cos x$	$-\sin x$	$\sin x+C$
$\tan x$	${\sec }^{2}x=1+{\tan }^{2}x$	$-\ln |\cos x|+C$
$\cot x$	$-{\csc }^{2}x=-(1+{\cot }^{2}x)$	$\ln |\sin x|+C$
$\sec x$	$\sec x\tan x$	$\ln |\sec x+\tan x|+C={\mathrm{gd}}^{-1}x+C$
$\csc x$	$-\csc x\cot x$	$-\ln |\csc x+\cot x|+C=\ln |\tan \frac{x}{2}|+C$

ただし、テンプレート:Math はグーデルマン関数の逆関数である。 (テンプレート:Math)

三角関数の微分では、次の極限

$\underset{h\to 0}{\lim }\frac{\sin h}{h}=1$

の成立が基本的である。このとき、テンプレート:Math の導関数が テンプレート:Math であることは加法定理から従う（が、後述のようにこれは循環論法であると指摘される）。さらに余角公式 テンプレート:Math から テンプレート:Math の導関数は テンプレート:Math である。すなわち、テンプレート:Math は微分方程式 テンプレート:Math の特殊解である。また、他の三角関数の導関数も、上の事実から簡単に導ける。

テンプレート:Math の テンプレート:Math における極限

テンプレート:Math の テンプレート:Math における極限が 1 であることを証明するときに、中心角 x ラジアンの扇形の面積を2つの三角形の面積ではさんだり、弧長を線分の長さではさんだりして、いわゆるはさみうちの原理から証明する方法がある。これは一般的な日本の高校の教科書にも載っているものであるが、循環論法であるため論理が破綻しているという主張がなされることがあるテンプレート:Sfn。ここで問題となるのは、証明に面積やラジアン、弧長が利用されていることである。例えば面積について言えば、面積は積分によって定義されるものであるとすると、扇形の面積を求めるには三角関数の積分が必要となる。三角関数の積分をするには三角関数の微分ができなければならないが、三角関数を微分するにはもとの極限が必要になる。このことが循環論法と呼ばれているのである。

単位円板の面積が テンプレート:Π であることを自明な概念と考えてしまえば循環論法にはならないが、これはいくつかの決められた公理・定義から論理的演繹のみによって証明されたものだけを正しいと考える現代数学の思想とは相反するものである。循環論法を回避する方法の 1 つは、正弦関数と余弦関数を上述のような無限級数で定義するものである（これは三角関数の標準的な定義の 1 つである。また、この無限級数の収束半径は無限大である（すなわち任意の実数や複素数で収束する））。この定義に基づいて

$\underset{x\to 0}{\lim }\frac{\sin x}{x}=1$

を示すことができる。

しかしながら、このように定義された三角関数が、本来持つべき幾何学的な性質を有しているかどうかは全く明らかなことではない。これを確かめるためには、三角関数の諸公式（周期性やピタゴラスの基本三角関数公式等）を証明し、また円周率は、余弦関数の正の最小の零点（つまり、テンプレート:Math となる正の最小の値）の存在を示し、その 2 倍と定義する。すると、$x\mapsto (\cos x,\sin x)$ が区間 テンプレート:Math から単位円周への（「反時計まわりの」）全単射であることを示すことができる。（連続微分可能な）曲線の長さを積分によって定義すれば、単位円周の長さが テンプレート:Math であることなどがわかり、上のように定義された三角関数や円周率は、初等幾何での三角関数や円周率の素朴な定義と同じものであることが分かった テンプレート:Sfn。

無限乗積展開

テンプレート:Main 三角関数は以下のように無限乗積として書ける。

$\begin{array}{cc}\sin \pi z& =\pi z\prod _{n=1}^{\mathrm{\infty }}(1-\frac{z^2}{n^2})\\ \cos \pi z& =\prod _{n=1}^{\mathrm{\infty }}\{1-\frac{z^2}{(n-\frac{1}{2}{)}^2}\}\end{array}$

部分分数展開

テンプレート:Main 三角関数は以下のように部分分数に展開される。

$\begin{array}{cc}\pi \cot \pi z& =\underset{N\to \mathrm{\infty }}{\lim }\sum _{n=-N}^N\frac{1}{z+n}=\frac{1}{z}+\sum _{n=1}^{\mathrm{\infty }}\frac{2z}{z^2-n^2}\\ \pi \tan \pi z& =-\underset{N\to \mathrm{\infty }}{\lim }\sum _{n=-N}^N\frac{1}{z+1/2+n}=-\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{2z}{z^2-(n+1/2{)}^2}\\ \frac{\pi }{\sin \pi z}& =\underset{N\to \mathrm{\infty }}{\lim }\sum _{n=-N}^N\frac{(-1{)}^n}{z+n}=\frac{1}{z}+\sum _{n=1}^{\mathrm{\infty }}\frac{(-1{)}^{n}2z}{z^2-n^2}\\ \frac{\pi }{\cos \pi z}& =\underset{N\to \mathrm{\infty }}{\lim }\sum _{n=-N}^N\frac{(-1{)}^n}{z+1/2+n}=-\sum _{n=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(-1{)}^n(2n+1)}{z^2-(n+1/2{)}^2}\end{array}$

逆三角関数

テンプレート:Main 三角関数の定義域を適当に制限したものの逆関数を逆三角関数（ぎゃくさんかくかんすう、テンプレート:Lang-en-short）と呼ぶ。逆三角関数は逆関数の記法に則り、元の関数の記号に テンプレート:Math を右肩に付して表す。たとえば逆正弦関数（ぎゃくせいげんかんすう、テンプレート:Lang-en-short インバース・サイン）は テンプレート:Math などと表す。テンプレート:Math などの記法もよく用いられる。数値計算などにおいては、これらの逆関数はさらに テンプレート:Math などと書き表される。

$\begin{array}{cc}x=\sin y& ⟺y={\sin }^{-1}x\\ x=\cos y& ⟺y={\cos }^{-1}x\\ x=\tan y& ⟺y={\tan }^{-1}x\\ x=\cot y& ⟺y={\cot }^{-1}x\\ x=\sec y& ⟺y={\sec }^{-1}x\\ x=\csc y& ⟺y={\csc }^{-1}x\end{array}$

である。逆関数は逆数ではないので注意したい。逆数との混乱を避けるために、逆正弦関数 テンプレート:Math を テンプレート:Math と書く流儀もある。一般に周期関数の逆関数は多価関数になるので、通常は逆三角関数を一価連続なる枝に制限して考えることが多い。たとえば、便宜的に主値と呼ばれる枝を

$\begin{array}{cc}-\frac{\pi }{2}& \le {\sin }^{-1}x\le \frac{\pi }{2}\\ 0& \le {\cos }^{-1}x\le \pi \\ -\frac{\pi }{2}& <{\tan }^{-1}x<\frac{\pi }{2}\end{array}$

のように選ぶことが多い。またこのとき、制限があることを強調するために、テンプレート:Math のように頭文字を大文字にした表記がよく用いられる。

複素関数として

テンプレート:Math の級数による定義から、オイラーの公式 テンプレート:Math を導くことができる。この公式から下記の 2 つの等式

$\begin{array}{cc}\exp (iz)& =e^{iz}=\cos z+i\sin z,\\ \exp (-iz)& =e^{-iz}=\cos z-i\sin z\end{array}$

が得られるから、これを連立させて解くことにより、正弦関数・余弦関数の指数関数を用いた表現が可能となる。すなわち、

$\begin{array}{cc}\cos z& =\frac{e^{iz}+e^{-iz}}{2},\\ \sin z& =\frac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}\end{array}$

が成り立つ。この事実により、級数によらずこの等式をもって複素数の正弦・余弦関数の定義とすることもある。また、

$\begin{array}{cc}\cos (iz)& =\frac{e^{-z}+e^z}{2}=\cosh z,\\ \sin (iz)& =\frac{e^{-z}-e^z}{2i}=i\sinh z\end{array}$

が成り立つ。ここで テンプレート:Math は双曲線関数を表す。この等式は三角関数と双曲線関数の関係式と捉えることもできる。複素数 テンプレート:Mvar を テンプレート:Math と表現すると、加法定理より

$\begin{array}{cc}\cos z& =\cos (x+iy)=\cos x\cosh y-i\sin x\sinh y,\\ \sin z& =\sin (x+iy)=\sin x\cosh y+i\cos x\sinh y\end{array}$

が成り立つ。

他の三角関数は テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math によって定義できる。

• 
  テンプレート:Math の実部のグラフ
• 
  テンプレート:Math の虚部のグラフ
• 
  テンプレート:Math の実部のグラフ
• 
  テンプレート:Math の虚部のグラフ

球面三角法

テンプレート:Main 球面の三角形 ABC の内角を テンプレート:Math, 各頂点の対辺に関する球の中心角を テンプレート:Math とするとき、次のような関係が成立する。余弦公式や正弦余弦公式は式の対称性により各記号を入れ替えたものも成立する。

正弦公式

テンプレート:Math

余弦公式

テンプレート:Math

余弦公式

テンプレート:Math

正弦余弦公式

テンプレート:Math

語源　

三角関数の英語の名称の語源について記す。

sineはもとはchord-half(半弦)を意味するサンスクリット jya ̄-ardha起源であり、省略形ji ̄va ̄がアラビア語に音訳されてjibaとなったが、1145年にチェスターのロバートがフワーリズミーのテンプレート:仮リンクをラテン語に翻訳する際に、jaibと混同した事で胸、湾の意味のsinusと翻訳された。

tangentは”touching”を意味するラテン語tangens由来で、secantは”cutting”を意味するラテン語secans由来である。

cosine、cotangent、cosecantはそれぞれ接頭辞のco-がついた形であり、co-はテンプレート:仮リンクと共通し、これはテンプレート:仮リンク(直角三角形の直角でないもう一つの角、余角)に対するsine、tangent、secantという意味である。cosine、cotangentが初めて書かれた形で確認されるのは1620年のエドマンド・ガンターによる”Canon triangulorum”の中である。ラテン語のcosinusとして登場し、これはsinus complementiの略である。

日本語の正弦、余弦に関しては、徐光啓らが編纂した『崇禎暦書』の中で、テンプレート:仮リンクが1631年に著した『測量全義』の八線のうちに見られる。「正」の漢字には、「真向かいの」「主となるもの」という意味がある。

参考文献

• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book ※ 通常の三角関数、ガンマ関数、ゼータ関数などを「多重化」した特殊関数の理論の構築。
• 黒川信重：「現代三角函数論」、岩波書店、ISBN 978-4-00-005327-3 (2013年11月7日).　※ 通常の三角関数、ガンマ関数、ゼータ関数などを「多重化」した特殊関数の理論の構築。
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book

関連項目

• 正弦定理
• 余弦定理
• 正接定理
• 球面三角法
• コサイン4乗則
• ベクトルのなす角 - cos 関数を用いて表現される。
• ドット積
• クロス積
• ベッセル関数
• sinc関数
• 指数関数
• 双曲線関数
• オイラーの公式
• 円 - 正円の三角関数との関係
• ベジェ曲線 - 三角関数のベジエ曲線による近似
• テイラー展開 - コンピュータ上での三角関数の実装に使用
• 算数チャチャチャ - 歌詞に三角関数の問題の解き方が含まれる
• 3次元コンピュータグラフィックス

外部リンク

• 三角比の近似値表
• テンプレート:MathWorld
• 江戸時代の三角関数表(これなあに)
• テンプレート:Kotobank