ピタゴラスの定理

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テンプレート:Infobox mathematical statement 初等幾何学におけるテンプレート:読み仮名は、直角三角形の3の長さの間に成り立つ関係について述べた定理である。その関係は、斜辺の長さを テンプレート:Mvar, 他の2辺の長さを テンプレート:Math2 とすると、

c2=a2+b2

という等式の形で述べられる[1][2][3]

現在の日本ではテンプレート:読み仮名とも呼ばれている。戦前の日本ではテンプレート:読み仮名と呼ばれていた。「ピタゴラス」と冠しているが、発見を含めて、定理と何か関係があるのかから知られていない。

ピタゴラスの定理によって、直角三角形において2辺の長さが分かっていれば、残りの1辺の長さを計算することができる[注 1]。例えば、2次元直交座標系において、座標が分かっている2点間の距離を求めることができる。2点間の距離は、2点の各座標の差の 2乗の総和の平方根となる[注 2]。このことは3次元直交座標系でも成り立つ。このようにして一般の有限次元直交座標系に対して導入される距離はユークリッド距離と呼ばれる。

テンプレート:Math2 で特に全てが自然数であるものは、本質的に可算個あることが知られており、ピタゴラス数と呼ばれている。

定理の概要

直角三角形において、斜辺長さテンプレート:Mvar、直角をはさむ 2辺の長さを テンプレート:Math2 とすると、次の等式が成り立ち、「ピタゴラスの定理」と呼ばれる:

a2+b2=c2

ここで テンプレート:Math2 はいずれも正であるから、2辺の長さから残りの辺の長さを、次のように計算できる:

a=c2b2
b=c2a2
c=a2+b2

この定理は、余弦定理によって一般の三角形に拡張される:任意の三角形において、1つの内角の大きさとそれをはさむ2辺の長さから残りの辺(対辺)の長さを計算できる。特にここで考えている内角の大きさが直角の場合、余弦定理はピタゴラスの等式に帰着する。

歴史

バビロニア数学について記された粘土板プリンプトン322

ピタゴラス直角二等辺三角形のタイルが敷き詰められた床を見ていて、この定理を思いついた」などいくつかの逸話が伝えられているが、実際にこの定理にピタゴラス自身が関わった事があるかから全く分かっていない。

ピタゴラスの定理の内容は歴史上の文献にいくつか著されているが、どれだけあるのかは議論がある。ピタゴラスが生まれる前からピタゴラスの定理は広く知られていたと言われるものの、特にユークリッド原論によって数学が体系化されるよりも前の時代だと、定理のように一般化された形ではなく特定の直角三角形の性質に留まるものが多くなる。辺の長さの比が3:4:5のように特殊な直角三角形がピタゴラスの定理の式を満たす事が分かっていたとしても、全ての直角三角形で定理の式が成り立つと理解できていたかは別の話であり、この意味で、ピタゴラスの定理の真の発見者を特定するのは難しい。

判明しているもので最初期のものは、ピタゴラスが生まれる1000年以上前のバビロン第1王朝時代ごろ(紀元前20世紀から16世紀の間)とされる[4][5][6][7]

バビロニアの粘土板プリンプトン322』には、ピタゴラスの定理に関わる要素が数多く含まれている。YBC 7289の裏面にはそれらしい記述がある。

エジプト数学バビロニア数学などにはピタゴラス数についての記述があるが、定理を発見していたかまでは定かではない。ただし、直角を作図するために 3:4:5の直角三角形が作図上利用された可能性がある[8]。紀元前2000年から1786年ごろに書かれた古代エジプトエジプト中王国パピルス "テンプレート:Ill2" には定理に関わる部分が欠けている。

周髀算経』におけるピタゴラスの定理の証明(テンプレート:Lang-zh

中国古代においては、『周髀算経』(紀元前2世紀前後)や『九章算術』の数学書でもこの定理が取り上げられている。中国ではこの定理を勾股定理商高定理等と呼んで説明している。

紀元前3世紀に書かれたユークリッド原論では、第1巻の命題47で言及されている。

インドの紀元前5-8世紀に書かれた『シュルバ・スートラ』などにも定理に関わる文章が見られる[9]。しかし、これはバビロニア数学の影響を受けた結果ではないかという推測もされているが、結論には至っていない[10]

レオナルド・ダ・ヴィンチによるピタゴラスの定理の証明。橙色の部分を テンプレート:Math度回転し、緑色の部分は裏返して図の位置にできる。

「ピュタゴラス(ピタゴラス)の定理」という呼称が一般的になったのは、西洋においても少なくとも20世紀に入ってからである[11]

日本での呼称

日本の和算でも、中国での呼称を用いてテンプレート:読み仮名等と呼んでいた[12][13]。「勾(鈎)・股・弦」とはそれぞれ、テンプレート:Math2 としたときの テンプレート:Math2 を表している。

日本の明治時代の中等学校の教科書では「ピュタゴラスの定理」と呼ばれていた。

現在、ピタゴラスの定理は「三平方の定理」とも呼ばれているが、「三平方の定理」と呼ばれるようになったのは1942年(昭和17年)の太平洋戦争開始後のことである[11]

このときに「鉤股弦の定理」とする案などもあったが、末綱恕一(東大教授)の発案で「三平方の定理」に改められたとされる。

ピタゴラス数

テンプレート:Main 3辺の長さが何れも整数である直角三角形は、ピタゴラスの定理の項目の中で古くから知られた[11]。例えば、紀元前1800年ごろのバビロニアの粘土板には、3辺の長さの表(例えば テンプレート:Math2 のようなもの)が出ている。

テンプレート:Math2 を満たす自然数の組 テンプレート:Mathピタゴラス数 (テンプレート:En) という。特に、テンプレート:Math互いに素であるピタゴラス数 テンプレート:Math原始ピタゴラス数 テンプレート:En と呼ばれる。全てのピタゴラス数は原始ピタゴラス数で テンプレート:Math2 の正の整数倍 テンプレート:Math2 で表されるから、ピタゴラス数のリストを知るには、原始ピタゴラス数が本質的である。

ピタゴラス数 テンプレート:Math が原始的であるためには、3つのうちある2つが互いに素であれば十分である。原始ピタゴラス数の小さい方のリストは、テンプレート:Math2 で、テンプレート:Math2 とすると次の通りである[14]

(テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar) = (3, 4, 5), (5, 12, 13), (7, 24, 25), (8, 15, 17), (9, 40, 41), (11, 60, 61), (12, 35, 37), (13, 84, 85), (16, 63, 65), (20, 21, 29), (28, 45, 53), (33, 56, 65), (36, 77, 85), (39, 80, 89), (48, 55, 73), (65, 72, 97)

ピタゴラス数の性質

テンプレート:Main ピタゴラス数 テンプレート:Math2 には、次の性質がある。

自然数の組 テンプレート:Math2 が原始ピタゴラス数であるためには、ある自然数 テンプレート:Math2

を満たすとして、

テンプレート:Math2 または テンプレート:Math2

であることが必要十分である[15][16]。上記の テンプレート:Math は無数に存在し重複がないので、原始ピタゴラス数は無数に存在し、すべての原始ピタゴラス数を重複なく列挙できる。

例えば

テンプレート:Math のとき テンプレート:Math2
テンプレート:Math のとき テンプレート:Math2
テンプレート:Math のとき テンプレート:Math2

である。テンプレート:Math2 を満たす原始ピタゴラス数を テンプレート:Mvar の昇順に並べた一覧表は以下のようになる[17]

原始ピタゴラス数の一覧表
# テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar
1 2 1 3 4 5
2 3 2 5 12 13
3 4 3 7 24 25
4 4 1 8 15 17
5 5 4 9 40 41
6 6 5 11 60 61
7 6 1 12 35 37
8 7 6 13 84 85
9 8 7 15 112 113
10 8 1 16 63 65
11 9 8 17 144 145
12 10 9 19 180 181
13 5 2 20 21 29
14 10 1 20 99 101
15 11 10 21 220 221
16 12 11 23 264 265
17 12 1 24 143 145
18 13 12 25 312 313
19 14 13 27 364 365
20 7 2 28 45 53
21 14 1 28 195 197
22 15 14 29 420 421
23 16 15 31 480 481
24 16 1 32 255 257
25 7 4 33 56 65
# テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar
26 17 16 33 544 545
27 18 17 35 612 613
28 9 2 36 77 85
29 18 1 36 323 325
30 19 18 37 684 685
31 8 5 39 80 89
32 20 19 39 760 761
33 20 1 40 399 401
34 21 20 41 840 841
35 22 21 43 924 925
36 11 2 44 117 125
37 22 1 44 483 485
38 23 22 45 1012 1013
39 24 23 47 1104 1105
40 8 3 48 55 73
41 24 1 48 575 577
42 25 24 49 1200 1201
43 10 7 51 140 149
44 26 25 51 1300 1301
45 13 2 52 165 173
46 26 1 52 675 677
47 27 26 53 1404 1405
48 28 27 55 1512 1513
49 28 1 56 783 785
50 11 8 57 176 185
# テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar テンプレート:Mvar
51 29 28 57 1624 1625
52 30 29 59 1740 1741
53 10 3 60 91 109
54 15 2 60 221 229
55 30 1 60 899 901
56 31 30 61 1860 1861
57 32 31 63 1984 1985
58 32 1 64 1023 1025
59 9 4 65 72 97
60 33 32 65 2112 2113
61 34 33 67 2244 2245
62 17 2 68 285 293
63 34 1 68 1155 1157
64 13 10 69 260 269
65 35 34 69 2380 2381
66 36 35 71 2520 2521
67 36 1 72 1295 1297
68 37 36 73 2664 2665
69 14 11 75 308 317
70 38 37 75 2812 2813
71 19 2 76 357 365
72 38 1 76 1443 1445
73 39 38 77 2964 2965
74 40 39 79 3120 3121
75 40 1 80 1599 1601

また、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーは一般のピタゴラス数 テンプレート:Math2 に対して、テンプレート:Math2(直角三角形の面積)は平方数でないことを無限降下法により証明した[18]

Jesmanowicz 予想

1956年に Jesmanowicz が次の予想を提出した:

テンプレート:Math を原始ピタゴラス数、テンプレート:Mvar を自然数とする。方程式:
(an)x+(bn)y=(cn)z
の自然数解 テンプレート:Math2
x=y=z=2
のみである。

特別なピタゴラス数

テンプレート:Math2テンプレート:OEIS
である。この問題はフランスの数学者ピエール・ド・フェルマーが出題し、解も発見した[19]
テンプレート:Math2
である。この問題はピエール・ド・フェルマーが出題し、解も発見した[20]
テンプレート:Math2

一般化

角の一般化

テンプレート:Main 第二余弦定理

テンプレート:Math2

はピタゴラスの定理を テンプレート:Math2 の場合として含む。 つまり、第二余弦定理はピタゴラスの定理を一般の三角形に対して拡張した定理になっている。

指数の一般化

テンプレート:Main 指数の テンプレート:Math の部分を一般化すると

テンプレート:Math

となる。テンプレート:Math2 の場合、自明(つまり テンプレート:Math2 の少なくとも1つが 0)や既知解(原始ピタゴラス数の定数倍)を除いても、整数解は実質無数に存在するが、テンプレート:Math2 の場合は非自明な整数解は存在しない。

次元の一般化

テンプレート:Main 3次元空間内に平面があるとき、その閉領域 テンプレート:Mvar の面積は、テンプレート:Mvar 平面、テンプレート:Mvar 平面、テンプレート:Mvar 平面への射影の面積 テンプレート:Math2 を用いて

S2=Sx2+Sy2+Sz2

と表される。これは高次元へ一般化できる。

ピタゴラスの定理の証明

この定理には数百通りもの異なる証明がある。

相似による証明

相似を用いた証明

頂点 テンプレート:Math から斜辺 テンプレート:Math に下ろした垂線の足を テンプレート:Math とする。テンプレート:Mathテンプレート:Math相似である。ゆえに

AC:AH=AB:ACAH=AC×ACAB=b2c

であり、同様に

BH=a2c

である。したがって

c=AH+BH=b2c+a2c

であるから、両辺に テンプレート:Mvar を掛けて

c2=a2+b2

を得る。

三角比による証明

前節の証明は、三角比を用いると簡単に表記できる:

c2=c×c=c×(AH+BH)=c×(bcosA+acosB)=b×ccosA+a×ccosB=b×b+a×a=a2+b2.

本証明を一般の三角形に拡張すると、第二余弦定理の証明が得られる。

合同による証明[23]

三平方の定理の合同による証明

ABC CDE合同になるように,図のように D ,E を取る。

わかりやすいように整理すると、a隣辺b対辺c斜辺の長さを示す。

四角形 ACBD の面積 S を二通りの方法で表す。

  • ABCD は直交するので, S=12AB×CD=c22 
  • BCD の面積は a22ACD の面積は b22 より S=12(a2+b2)

よって、

c22=12(a2+b2)

両辺に2をかけて

c2=a2+b2

以上2つの式より三平方の定理を得る。

外接円を用いた証明

外接円を用いた証明

テンプレート:Math2 のとき、斜辺テンプレート:Math を直径とする円テンプレート:Math を描くことができる。

このとき点テンプレート:Math から直径テンプレート:Math に下ろした垂線の足を テンプレート:Math とし、テンプレート:Math に対して三平方の定理を証明する。テンプレート:Math2 とする。

テンプレート:Math2 なので、

テンプレート:Math2
テンプレート:Math2
テンプレート:Math2
テンプレート:Math2
テンプレート:Math2

正方形を用いた証明

正方形を用いた証明

テンプレート:Math合同な4個の三角形を右図のように並べると、外側に一辺が テンプレート:Math2正方形(以下「大正方形」)が、内側に一辺が テンプレート:Mvar の正方形(以下「小正方形」)ができる。

(大正方形の面積)=(小正方形の面積)+(直角三角形の面積)× 4

である。大正方形の面積テンプレート:Math2, 小正方形の面積は テンプレート:Math, 直角三角形1個の面積は 12ab である。これらを代入すると、

(a+b)2=c2+12ab×4

整理して

a2+b2=c2

を得る。

内接円を用いた証明

テンプレート:Math において、内接円の半径 テンプレート:Mvar を用いて面積 テンプレート:Mvar を表すと

テンプレート:NumBlk

となるが、テンプレート:Math2より、

テンプレート:NumBlk
テンプレート:NumBlk

となるから、テンプレート:EquationNoteテンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote を代入すると

12ab=14(a+bc)(a+b+c)

整理すると

a2+b2=c2

が得られる。

オイラーの公式を用いた証明

三角関数と指数関数は冪級数によって定義されているものとする。(指数法則やオイラーの公式の証明に本定理が使用されない定義であればよい。)

[定義]

任意の0でない複素数 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Math2 だから

z=|z|eiθ=|z|(cosθ+isinθ)

となる実数 テンプレート:Math2 が存在する。 このように絶対値 テンプレート:Math2 と偏角 θ で表したものを テンプレート:Mvar の「極表示」といい、 テンプレート:Mvar を円の半径または、動径の長さもしくは、斜辺という。 このとき テンプレート:Math2 とすれば

a=csinθb=ccosθsinθ=accosθ=bc

となる。 これが実変数 テンプレート:Math2 の関数としての テンプレート:Math2 の幾何学的意味を表す。 即ちベクトル テンプレート:Mvar の 虚軸、実軸への正射影が テンプレート:Math2 なのである。 ここで、虚軸と実軸の交点は直交しているから、虚軸と実軸の正射影は直交する。

[証明]

まずテンプレート:Math2 が任意の複素数 テンプレート:Mvar に対して成り立つことを(3通りの方法で)示す。

オイラーの公式より

1=e0=eiθiθ=eiθeiθ=(cosθ+isinθ)(cosθisinθ)=sin2θ+cos2θ

または

sin2θ+cos2θ=(eiθeiθ2i)2+(eiθ+eiθ2)2=e2iθ+e2iθ24+e2iθ+e2iθ+24=1

もしくは、オイラーの公式から三角関数の半角の公式を導出する。

sin2θ=(eiθeiθ2i)2=e2iθ+e2iθ24=1cos2θ2 ,cos2θ=(eiθ+eiθ2)2=e2iθ+e2iθ+24=1+cos2θ2 .
テンプレート:NumBlk

テンプレート:EquationNote の式はピタゴラスの基本三角関数公式 テンプレート:En と呼ばれている[24]

テンプレート:EquationNote の時点ですでに単位円上において本定理の成立が明らかである。なぜならば、実数の範囲では、単位円上の偏角 テンプレート:Mvar の点の座標として定義した テンプレート:Math2 と上記の冪級数による定義は一致するからである[25]

前提とした テンプレート:Math について、テンプレート:Math2 とおけば テンプレート:NumBlk テンプレート:NumBlk テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote より

a2+b2=(csinθ)2+(ccosθ)2=c2(sin2θ+cos2θ)=c21=c2

ゆえに

a2+b2=c2

が得られる。

三角関数の微分公式を用いた証明

正弦および余弦関数を微分すれば テンプレート:NumBlk テンプレート:NumBlk テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote および微分公式より

(sin2θ+cos2θ)=2sinθcosθ+2cosθ(sinθ)=0

したがって

sin2θ+cos2θ=C

ここで テンプレート:Mvar は定数である。テンプレート:Math2 を代入すると テンプレート:Math2 であるので、テンプレート:Math2 が得られる。よって テンプレート:NumBlk が得られる[26]

あとは前節と同様にして

a2+b2=c2

が得られる。

三角関数の不定積分を用いた証明

下記のように関数を定める。

f(θ)=sin2θ+cos2θ.

上記を漸化式を利用して不定積分すると

f(θ)dθ=(sin2θ)dθ+(cos2θ)dθ=(12θ12sinθcosθ+C1)+(12θ+12sinθcosθ+C2)=θ+C

である[27]微分積分学の基本定理を考慮し、これを微分すると

ddθf(θ)dθ=f(θ)=ddθ(θ+C)=1

である。したがって

f(θ)=sin2θ+cos2θ=1.

ゆえに、ピタゴラスの定理は成立する。

三角関数の加法定理を用いた証明

三角関数の加法定理は、三平方の定理を使わないで証明できる。本定理を使わないで証明した、三角関数の加法定理を使うと、

cos2θ+sin2θ=cosθcosθ+sinθsinθ=cos(θθ)=cos0=1

または

sin2θ+cos2θ=sinθcos(π2θ)+cosθsin(π2θ)=sinπ2=1

が得られる[28][29]。 また、加法定理から導かれる半角公式を適用すると

sin2θ=1cos2θ2
cos2θ=1+cos2θ2

したがって

sin2θ+cos2θ=1

が得られる。

あとはこれまでと同様にして

a2+b2=c2

が得られる[28]

冪級数展開を用いた証明

三角関数は級数によって定義されているものとし、テンプレート:Mathテンプレート:Math の自乗をそれぞれ計算すると

sin2θ={n=0(1)n(2n+1)!θ2n+1}2=n=0k=0n(1)k(2k+1)!(1)nk(2n2k+1)!θ2n+2=n=0(1)nθ2n+2(2n+2)!k=0n(2(n+1)2k+1)=n=1(1)n1θ2n(2n)!k=0n1(2n2k+1)=n=1(1)nθ2n(2n)!k=0n1(2n2k+1)cos2θ={n=0(1)n(2n)!θ2n}2=n=0k=0n(1)k(2k)!(1)nk(2n2k)!θ2n=n=0(1)nθ2n(2n)!k=0n(2n2k)=1+n=1(1)nθ2n(2n)!k=0n(2n2k)

となる[注 3]。ここで二項定理より

k=0n(2n2k)k=0n1(2n2k+1)=m=02n(1)m(2nm)=(11)2n=0

である。したがって

sin2θ+cos2θ=1

が得られる。

あとはこれまでと同様にして

a2+b2=c2

が得られる[30]

回転行列を用いた証明

平面において原点を中心とする角 テンプレート:Mvar回転の表現行列は

R(θ)=[cosθsinθsinθcosθ]

であるが、このことも三平方の定理を用いないで証明が可能である。

テンプレート:Math2単位行列)であるが[31]、この式の左辺を直接計算すると

R(θ)R(θ)=[cosθsinθsinθcosθ][cosθsinθsinθcosθ]=[cos2θ+sin2θcosθsinθsinθcosθsinθcosθcosθsinθsin2θ+cos2θ]=[sin2θ+cos2θ00sin2θ+cos2θ]

となる[32]。したがって

sin2θ+cos2θ=1

が得られる[33]

あとはこれまでと同様にして

a2+b2=c2

が得られる。

三角関数と双曲線関数を用いた証明

任意の テンプレート:Math に対し

sin2iz+cos2iz=(isinhz)2+cosh2z=cosh2zsinh2z=1

である[34][35]。よって任意の テンプレート:Math2 に対して

sin2θ+cos2θ=1

が成り立つ。

あとはこれまでと同様にして

a2+b2=c2

が得られる。

三角関数と複素数の絶対値の定義を用いた証明

[定義]

複素数 テンプレート:Mvar の絶対値 テンプレート:Math は、複素数平面上において、原点 テンプレート:Mathテンプレート:Math の距離 テンプレート:Math に等しい。 複素数 テンプレート:Math2テンプレート:Math2 は実数)(テンプレート:Mvar虚数単位)の絶対値はピタゴラスの定理とは関係なく次の式で定義される。

|z|:=a2+b2

絶対値の定義より

|z|2=c2=a2+b2

である。

ピタゴラスの定理の逆

ピタゴラスの定理は、も真となる。すなわち、テンプレート:Math に対して

a2+b2=c2

が成立すれば、テンプレート:Mathテンプレート:Math2 の直角三角形となる。

証明

ピタゴラスの定理に依存しない証明

ピタゴラスの定理に依存しない証明

テンプレート:Mathテンプレート:Math2 を満たすとする。線分 テンプレート:Mathテンプレート:Math2 に内分する点を テンプレート:Math とすると

AD=c×b2b2+a2=c×b2c2=b2c

である。これより

AC:AD=b:b2c=c:b=AB:AC

であるから2辺比夾角相等より ACDABC

ADC=ACB

同様に

BDC=BCA

となるから テンプレート:NumBlk となる。

テンプレート:EquationNote より テンプレート:NumBlk 一方 テンプレート:NumBlk であるから、テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote より テンプレート:NumBlk テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote より

ACB=π2

ゆえに テンプレート:Mathテンプレート:Math2 の直角三角形である[25]

同一法を用いた証明

ピタゴラスの定理を用いた証明

テンプレート:Math2 である直角三角形 テンプレート:Math において、テンプレート:Math2 とすれば、ピタゴラスの定理より テンプレート:NumBlk が成り立つ。 一方、仮定から テンプレート:Math において テンプレート:NumBlk が成り立っている。テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote より

c2=c2

テンプレート:Math2 より

c=c

したがって、3辺相等から

ABCABC

テンプレート:Math2。ゆえに テンプレート:Mathテンプレート:Math2 の直角三角形である[25]

対偶を用いた証明

テンプレート:Math において テンプレート:Math2 であると仮定する。頂点 テンプレート:Math から直線 テンプレート:Math に下ろした垂線の足を テンプレート:Math とし、テンプレート:Math2 とする。

テンプレート:Math の場合、直角三角形 テンプレート:Math においてピタゴラスの定理より

c2=(ad)2+h2=a22ad+d2+h2

であり、同様に直角三角形 テンプレート:Math では

b2=d2+h2

である。よって

c2=a22ad+b2<a2+b2

となる。

テンプレート:Math の場合も同様に考えて

c2=(a+d)2+h2=a2+2ad+d2+h2=a2+2ad+b2

ゆえに

c2>a2+b2

となる。

よっていずれの場合も

a2+b2c2

である。対偶を取って、テンプレート:Math2 ならば テンプレート:Math2 である。

なお、この証明から分かるように、

という対応がある。

余弦定理を用いた証明

余弦定理を用いた証明

ピタゴラスの定理は既知とすると、それより導かれる余弦定理を用いることができる。テンプレート:Math において、テンプレート:Math2 とおくと、余弦定理より

c2=a2+b22abcosC

一方、仮定より

a2+b2=c2

であるから

cosC=0

となる。三角形の内角の和は テンプレート:Π であるから テンプレート:Math2 より、

C=cos10=π2

ゆえに テンプレート:Mathテンプレート:Math2 の直角三角形である。

ベクトルを用いた証明

テンプレート:Math において

c2=a2+b2

であり

c=ba

である。 ここで

c2=cc=(ba)(ba)=b22ba+a2

である。したがって

ba=0

である。よって

C=π2

である。ゆえに、ピタゴラスの定理の逆が証明された。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

注釈

テンプレート:Notelist2

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:Commonscat テンプレート:ウィキプロジェクトリンク テンプレート:Div col

テンプレート:Div col end

外部リンク

テンプレート:Normdaten

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  4. テンプレート:Harvnb: p.36 "In other words it was known during the whole duration of Babylonian mathematics that the sum of the squares on the lengths of the sides of a right triangle equals the square of the length of the hypotenuse."
  5. テンプレート:Cite journal: p.306 "Although Plimpton 322 is a unique text of its kind, there are several other known texts testifying that the Pythagorean theorem was well known to the mathematicians of the Old Babylonian period."
  6. テンプレート:Cite conference, p.406, "To judge from this evidence alone it is therefore likely that the Pythagorean rule was discovered within the lay surveyors’ environment, possibly as a spin-off from the problem treated in Dbテンプレート:Sub-146, somewhere between 2300 and 1825 BC." (テンプレート:Ill2(Dbテンプレート:Sub-146) is an Old Babylonian clay tablet from Eshnunna concerning the computation of the sides of a rectangle given its area and diagonal.)
  7. テンプレート:Cite book: p.109 "Many Old Babylonian mathematical practitioners … knew that the square on the diagonal of a right triangle had the same area as the sum of the squares on the length and width: that relationship is used in the worked solutions to word problems on cut-and-paste ‘algebra’ on seven different tablets, from Ešnuna, Sippar, Susa, and an unknown location in southern Babylonia."
  8. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「亀井」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  9. テンプレート:Cite book
  10. テンプレート:Cite book
  11. 11.0 11.1 11.2 テンプレート:Cite book
  12. コラム ピタゴラスの定理 江戸の数学 国立国会図書館
  13. テンプレート:Cite journal p.105 より
  14. テンプレート:Mvar の順序はテンプレート:OEISによる。テンプレート:Math2 を昇順に並べると、それぞれテンプレート:OEISおよびテンプレート:OEISになる。
  15. テンプレート:Harvtxt
  16. テンプレート:Harvtxt
  17. テンプレート:Mvar の順序はテンプレート:OEISによる。
  18. テンプレート:Harvtxtテンプレート:Harvtxt
  19. テンプレート:Harvtxt
  20. テンプレート:Harvtxtテンプレート:OEISを参照。ただしオンライン数列内のコメント内にある テンプレート:Mvar の値が間違っているので注意が必要。
  21. テンプレート:Cite journal
  22. 世界に1つだけの三角形の組 慶應義塾大学理工学部KiPAS、2018年9月12日
  23. テンプレート:Cite web
  24. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Leff」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  25. 25.0 25.1 25.2 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「三平方の定理の逆の証明」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  26. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「数学・物理通信」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  27. 不定積分の漸化式
  28. 28.0 28.1 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「三平方の定理の証明」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  29. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Einige spezielle Funktionen」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  30. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Hamilton」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  31. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「行列と1次変換」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  32. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「対称行列と直交行列」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  33. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Solution for Assignment」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  34. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「双曲線関数について」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
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