複素指数函数
複素指数函数(ふくそしすうかんすう、テンプレート:Lang-en-short)とは、数学の複素解析における複素関数で、実関数としての自然指数関数 テンプレート:Math2(テンプレート:Mvar はネイピア数)を複素数全体に解析接続したものであるテンプレート:Sfn。
概説

具体的には、複素指数函数は次の冪級数で与えられる:
したがって、複素指数函数は整関数である。
オイラーの公式、複素数についての指数法則:テンプレート:Math より、複素指数函数は、実関数で代数的に与えられる:
- テンプレート:Math(テンプレート:Math2 は実数)(テンプレート:Mvar は虚数単位)に対して、
- テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn
複素数全体からなる加法群を テンプレート:Mathbf, 非零複素数からなる乗法群を テンプレート:Math で表すとき、複素指数函数 テンプレート:Math は、位相群の準同型(連続指標)のうちで微分可能かつ テンプレート:Math を満たすものとして特徴づけられるテンプレート:Sfn。
実数 テンプレート:Mvar を
- テンプレート:Math(オイラーの公式)
へ対応させる関数を純虚指数函数といい、右辺を "テンプレート:Math" の省略形として テンプレート:Math で表す。このとき複素指数函数 テンプレート:Math は
と表される。これを複素指数函数の定義として採用することもある。
函数 テンプレート:Math は実数の加法群 テンプレート:Mathbf から絶対値 テンプレート:Math の複素数の乗法群 テンプレート:Mathbf への全射な連続指標であり、そのようなものの中で テンプレート:Math(つまり周期 テンプレート:Math あるいは核 テンプレート:Math)のものとして特徴づけられるテンプレート:Sfn。
複素数 テンプレート:Math(テンプレート:Math2 は実数)に対する複素指数函数は、
ガウス平面内の帯 テンプレート:Math への制限 テンプレート:Math (テンプレート:Math) は一価の函数として全単射となり、テンプレート:Mathbf 上でこの函数の一価な逆函数として対数の主値 テンプレート:Math が定まる。この テンプレート:Math は正の実半軸 テンプレート:Math 上の実函数としての自然対数函数 テンプレート:Math の テンプレート:Mathbf への解析的延長であり、特に テンプレート:Math に対して テンプレート:Math を満たすテンプレート:Sfn。複素対数函数は テンプレート:Math の更なる延長として で与えられるが、これは大域的には一価でなく、特異点 テンプレート:Math を囲む閉曲線に沿った積分の寄与によって無限多価性を示す。それでも非零複素数 テンプレート:Mvar に対して等式 テンプレート:Math は常に成り立つ(その意味では テンプレート:Math はまだ テンプレート:Math の「逆函数」である)。
定義
テンプレート:Multiple imageテンプレート:Multiple image 複素指数函数の定義の仕方は大まかに2通りある。
- 級数による定義テンプレート:Sfn
- 任意の複素数 テンプレート:Mvar に対して
これは整関数である。
- 実函数を用いた定義テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn
- オイラーの公式を踏まえて、次の式で定義できる:
- 複素数の直交座標表示 テンプレート:Math2 に対して
これら2つの定義が同値であることを確かめるには、
- オイラーの公式:テンプレート:Math(テンプレート:Mvar は実数)
- 指数法則:テンプレート:Math
を証明すればよい。
複素変数への拡張は他にも方法があり、マクローリン展開を用いずに微分の自己再帰性と初期条件だけを与えた正則函数を考えても同じ結論を得ることができる。
基本的な性質


テンプレート:Mvar は実数として、テンプレート:Math と書く。以下の性質は定義から直ちに確認できる:テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn
- テンプレート:Math のとき明らかに テンプレート:Math は実指数函数であり、したがって複素指数函数は実指数函数の複素変数への拡張である。また特に テンプレート:Math が成り立つ。
- 周期性: 任意の複素数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math が成り立つ。すなわち、複素指数函数は周期(実は基本周期)テンプレート:Math を持つ周期函数である。一般に任意の整数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math が成り立つ。この周期性のために、逆函数となるべき対数函数の複素数への拡張は無限多価となる。
- 絶対値に関して、テンプレート:Math および テンプレート:Math が成り立つ。すなわち、複素指数函数の絶対値は引数の実部のみによって決まり、引数の虚部の影響を受けない。また特に任意の テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math が言える。
- 複素共役に関して、テンプレート:Math が成り立つ。
さらに以下の性質は重要である:テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn
- 指数法則:テンプレート:Math が成り立つ。
- 複素指数函数はコーシー・リーマンの方程式を満たすから複素微分可能であって、テンプレート:Math が成立する。
これらは三角函数の性質から導くこともできるし、級数による定義に対してコーシー積を直接計算しても示せる。あるいは実指数函数の対応する性質に解析接続の一般論を適用しても示せる。