位相のずれ

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テンプレート:Redirect 位相のずれ(位相差、位相シフト、フェーズシフト)とは、量子力学散乱理論において、散乱によって入射状態と散乱状態の間に生じる位相差のことである。

入射状態の部分波展開

入射平面波部分波展開すると以下のように表せる(レイリーの公式)。

ei𝐤𝐫=l=0(2l+1)ilj(kr)Pl(cosθ)

これはr が非常に大きいところでは、

ei𝐤𝐫l=0(2l+1)2ik(eikrr(1)leikrr)Pl(cosθ)(r)(1)

散乱状態の部分波展開

散乱状態は、入射平面波と散乱球面波の足しあわせであると考える。

ψ+(r,θ)=ei𝐤𝐫+f(θ)eikrr(2)

また、ルジャンドル多項式Pl(cosθ) 完全系をなす。

0πPl(cosθ)Pl(cosθ)sinθdθ=22l+1δl,l

よって散乱振幅Pl(cosθ) 線形結合で表すことができる。 その展開係数をal とすると、

f(θ)=l=0(2l+1)2ikalPl(cosθ)(3)

よって(2)式に(1)、(3)式を代入すると、r が非常に大きいところでの散乱状態ψ+(r,θ) は、

ψ+(r,θ)l=0(2l+1)2ik[(1+al)eikrr(1)leikrr]Pl(cosθ)(r)(4)

この括弧内の第一項目は外向き球面波を、第二項目は内向き球面波をそれぞれ表している。

確率の保存・位相のずれ

確率の保存により、外向き球面波と内向き球面波の振幅の絶対値は等しくならなければならない。つまり、

|1+al|=1

ここで位相のずれδl (実数値)を以下のように定義する。

1+al=ei2δl

(1)式、(4)式をal ではなく、このδl を用いて書き直すと、

ei𝐤𝐫l=0(2l+1)krilsin(krlπ2+δl)Pl(cosθ)(r)(1)
ψ+(r,θ)l=0(2l+1)kreiδlilsin(krlπ2+δl)Pl(cosθ)(r)(4)

よって散乱状態は入射状態より位相がδl だけずれている。

参考文献