反傾表現

$G$ が群で、$\rho$ がベクトル空間 $V$ 上の $G$ の線型表現であるとき、反傾表現（はんけいひょうげん、テンプレート:Lang-en-short）あるいは双対表現（そうついひょうげん、テンプレート:Lang-en-short）${\rho }^{*}$ は以下のようにして双対ベクトル空間 $V^{*}$ 上定義される：

${\rho }^{*}(g)$ は $\rho \left(g^{-1}\right)$ の転置である、つまり、すべての $g\in G$ に対して ${\rho }^{*}(g)=\rho {\left(g^{-1}\right)}^T$ である。

$𝔤$ がリー環で $\pi$ がベクトル空間 $V$ 上のその表現であれば、反傾表現 ${\pi }^{*}$ は以下のようにして双対ベクトル空間 $V^{*}$ 上定義される：

すべての $X\in 𝔤$ に対して ${\pi }^{*}(X)=-\pi (X{)}^T$ である。

いずれの場合にも、反傾表現は通常の意味での表現である。

ユニタリ表現に対しては、反傾表現はテンプレート:仮リンクと等しい。

動機付け

表現論において、$V$ のベクトルと $V^{*}$ の線型汎関数はいずれも列ベクトルと考え、したがって表現は左から（行列の乗法によって）作用できる。線型汎関数 $\phi$ の $v\in V$ への作用 $\phi (v)$ は行列の乗法

$⟨\phi ,v⟩\equiv \phi (v)={\phi }^{T}v$

によって表現できる。ただし上付きの $T$ は行列の転置を表す。群$G$の作用と整合的であるためには

$⟨{\rho }^{*}(g)\phi ,\rho (g)v⟩=⟨\phi ,v⟩$

が要求される。反傾表現の定義から、

$⟨{\rho }^{*}(g)\phi ,\rho (g)v⟩=⟨\rho {\left(g^{-1}\right)}^T\phi ,\rho (g)v⟩={\left(\rho {\left(g^{-1}\right)}^T\phi \right)}^T\rho (g)v={\phi }^T\rho \left(g^{-1}\right)\rho (g)v={\phi }^{T}v=⟨\phi ,v⟩$

となり、整合性を持つことが確かめられる。

リー環の表現に対しては、対応するリー群の表現との整合性を課す。一般に、$\mathrm{\Pi }$ がリー群の表現であれば、

$\pi (X)={\frac{d}{dt}\mathrm{\Pi }\left(e^{tX}\right)|}_{t=0}$

によって与えられる $\pi$ はそのリー環の表現である。${\mathrm{\Pi }}^{*}$ が $\mathrm{\Pi }$ に双対であれば、その対応するリー環の表現 ${\pi }^{*}$ は、

${\pi }^{*}(X)={\frac{d}{dt}{\mathrm{\Pi }}^{*}\left(e^{tX}\right)|}_{t=0}={\frac{d}{dt}\mathrm{\Pi }{\left(e^{-tX}\right)}^T|}_{t=0}=-\pi (X{)}^T$

で与えられる。

一般化

• 群 $G$ の2つの表現 $({\rho }_1,V_1)$ と $({\rho }_2,V_2)$ から、次のようにして $\mathrm{Hom}(V_1,V_2)$ 上の $G$ の表現 $\mathrm{Hom}({\rho }_1,{\rho }_2)=\rho$ が定義される：

すべての $g\in G$ とすべての $f\in \mathrm{Hom}(V_1,V_2)$ に対して、$\rho (g)(f)={\rho }_2(g)\circ f\circ {\rho }_1\left(g^{-1}\right)$。

反傾表現は、$({\rho }_2,V_2)$ が自明表現の場合である。

• 環上の加群は一般には反傾表現を持たないが、ホップ代数上の加群は持つ。

関連項目

• テンプレート:仮リンク
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