広田微分

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広田微分(ひろたびぶん Hirota derivative)は、日本の数学者広田良吾が導入した微分演算。可積分系の方程式を双線形方程式に帰着させて解く広田の方法で用いられる。

定義

二つの関数の組fg に対して、

Dxfg=(xx)f(x)g(x)|x=x=fxgfgx

で定義される二項演算広田微分と呼ぶ。また演算子Dx広田のD-演算子と呼ぶ。

より一般的には、多変数関数の二つの組f (x, y, z, … ) 、g (x, y, z,… ) に対して、 高階の広田微分が

DxlDymDznfg=(xx)l(yy)m(zz)nf(x,y,z,)g(x,y,z,)|x=x,y=y,z=z,
=lrlmsmntnf(x+r,y+s,z+t,)g(xr,ys,zt,)|r,s,t,=0

で定義される。

実際の計算例は次のようになる。

  • Dxfg=fxgfgx
  • Dx2fg=fxxg2fxgx+fgxx
  • Dx3fg=fxxxg3fxxgx+3fxgxxfgxxx
  • Dx4fg=fxxxxg4fxxxgx+6fxxgxx4fxgxxx+fgxxxx
  • DxDyfg=fyxgfygxfxgy+fgyx

広田微分を作用させた結果において、各項は二つの関数の導関数について、どちらも一次式の形になっており、これを双線形形式(bilinear form)と呼ぶ。また、広田微分を用いて、双線形形式に帰着させることを双線形化と呼ぶ。

性質

  • 基本的性質
    広田微分は次の性質を満たす。
    • Dxmf1=xmf
    • Dxmfg=(1)mDxmgf
    • Dx2m+1ff=0
    • DxmDtnek1xω1tek2xω2t=(k1k2)m(ω1+ω2)ne(k1xω1t)+(k2xω2t)
    • F (Dt, Dx)をDt, Dxの多項式とすると
    F(Dt,Dx)ek1xω1tek2xω2t=F(ω1+ω2,k1k2)F(ω1ω2,k1+k2)F(t,x)e(k1+k2)x(ω1+ω2)t
  • 広田微分はヤコビの恒等式を満たす。
    Dx(Dxfg)h+Dx(Dxgh)f+Dx(Dxhf)g=0

変数変換と広田微分

対数型変換

非線形偏微分方程式の双線形化においては、

u=logf

対数型変換がしばしば用いられる。対数型変換における微分については、以下の公式が成り立つ。

  • 22x2logf=Dx2fff2
  • 22xtlogf=DxDtfff2
  • 24x4logf=Dx4fff23(Dx2fff2)2

有理型変換

非線形偏微分方程式の双線形化においては、

u=gf

有理型変換も良く用いられる。有理型変換における微分については、以下の公式が成り立つ。

  • x(gf)=Dxgff2
  • 3x3(gf)=Dx3gff23Dxgff2Dxfff2

参考文献

  • 広田良吾 『直接法によるソリトンの数理』 岩波書店、1992年

関連項目