断熱的到達可能性

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

断熱的到達可能性(Adiabatic accessibility)とは、熱力学における概念の一つ。「断熱・断物の壁で囲まれた系の任意の2つの平衡状態 テンプレート:Math について、テンプレート:Math から テンプレート:Math への状態変化が力学的仕事だけで起こせること」を指す。

エリオット・H・リーブヤコブ・イングヴァソンはこの概念を用い、次のような要請(数学における公理に相当する)を熱力学の出発点のひとつにおいた。

「断熱・断物の壁で囲まれた系の任意の2つの平衡状態 テンプレート:Math について、テンプレート:Math から テンプレート:Math への状態変化が力学的仕事だけで起こせるか否かが定まっている。」

つまり「状態たちの間に一本の序列が付けられる」ということである。もちろんこれだけでは熱力学の要請としては足りないので、他にも幾つかの要請をおく。そうすると、任意の状態について、その大小がこの序列の順番を決めるような、ある相加的な量が(定数倍などのつまらない不定性を除いて実質的に)一意的に定義できることが示せる。それがエントロピーになる。[1]

定義

平衡状態 テンプレート:Math が別の平衡状態 テンプレート:Math から断熱的到達可能であることを、XYと書く。の定義として以下の要請がなされる:

反射則
どのような テンプレート:Math についてもXX
推移則
XYかつYZならばXZ
状態の複合との一貫性
XXかつYYならば(X,Y)(X,Y)
スケール不変性
XYならばλXλY
分裂と再結合
0<λ<1について X((1λ)X,λX) であり ((1λ)X,λX)X である
安定性
もしいくらでも小さいϵ>0について(X,ϵZ0)(Y,ϵZ1)ならばXY

反射則と推移則から、前順序であることに注意する。この要請の中には、「」や「可逆機関」などの概念が含まれていない。さらに温度の概念さえ必要ない。しかしエントロピーを定義するにはまだ足りず、以下の比較仮説が必要である。 [2]

比較仮説

2つの状態 テンプレート:Math について、XYYXの少なくともどちらか一方は成り立つ。これを比較仮説という。[3]

この比較仮説は、XYを満たす(X,Y)の一覧表が十分に長いことを保証してくれる。逆にこの比較仮説がないと、エントロピー関数によって記述されない状態の一覧表も出てくる。[2]

エントロピーの構成

XY の時かつその時に限り、エントロピーは S(X)S(Y)という性質を持つ。またXAYの時かつその時に限り、S(X)=S(Y)という性質を持つ。これは熱力学第二法則に対応している。

X0X1を満たす2つの状態X0X1を選び、それぞれのエントロピーを0と1とした場合、X0XX1をみたす状態X のエントロピーは次のように定義される。 [4]

S(X)=sup(λ:((1λ)X0,λX1)X)

参考文献

  1. テンプレート:Cite book
  2. 2.0 2.1 エリオット・リーブ, ヤコブ・イングヴァソン:「エントロピー再考」,田崎晴明訳,「パリティ」,丸善, Vol.16, No.08, pp.4-12, (2001)
  3. 佐々真一「熱力学の論理と動的システム」物性研究 (2002), 78(6): 672-676
  4. テンプレート:Cite journal