経緯度

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経緯度(けいいど、テンプレート:Lang-en)とは、経度テンプレート:Lang)および緯度テンプレート:Lang)を指し、地球を含む天体表面上で位置(点)を示すための座標表現である。本稿では地理座標系で用いられる経緯度を説明する。

基本的に、その天体の表面点の垂直ベクトルを考え、その向きを球面座標角度)で表現する[1]

経度(λ)、緯度(ϕ)、および垂直線(赤)。
ECEF直交座標・地理座標・局所座標の関係(回転楕円体面上)。(X,Y,Z)および方位角θの取り方は右手系

地理経緯度

経緯度は基本的にその地表点の垂直ベクトルに基づき、そのベクトルの方向を球面座標角度表現したものである。

{経度λ、緯度ϕ}⇔{局所垂直ベクトル(cosϕcosλ,cosϕsinλ,sinϕ)}。

地理座標系で用いられる地理経緯度(geographic longitude and latitude)[2]は、地球を回転楕円体と見なし、その面の法線ベクトル方向に基づく[3]

経緯度の歴史

天文経緯度

歴史的には、地表の鉛直線に基づく垂直方向(天頂)が天球のどこを指すかによって決めた天文経緯度(astronomical longitude and latitude)が使われてきた。これは地球の重力の鉛直線偏差の影響(加えて地球の極運動の影響)を被っている。従って、距離・面積との関係も簡素にならない。

地理経緯度

地理学・測地学の発展とともに、経緯度原点を国内に設け、その地点の天文経緯度を原点として位置づけ、接する準拠楕円体に基づく地理経緯度を用いる方式が行われた(地域的測地系)。

さらに近年は全地球的な準拠楕円体に基づく方式の採用が増えている(全地球的測地系)。

地理経緯度の変換式

地理座標(経度λ、緯度ϕ、高度(楕円体高h)とECEF直交座標系(x,y,z)との変換、および微小量の式は下記となる(地球楕円体長半径a離心率e=f(2f))。

{x=(N(ϕ)+h)cosϕcosλ,y=(N(ϕ)+h)cosϕsinλ,z=(N(ϕ)(1e2)+h)sinϕ,
(dxdydz)=(sinλsinϕcosλcosϕcosλcosλsinϕsinλcosϕsinλ0cosϕsinϕ)(dEdNdU),(dEdNdU)=((N(ϕ)+h)cosϕ000M(ϕ)+h0001)(dλdϕdh),N(ϕ)a1e2sin2ϕ,M(ϕ)a(1e2)(1e2sin2ϕ)3/2={N(ϕ)}3(1e2)a2.

微小量三成分はどれも互いに直交方向となる。h=0では回転楕円体となり、また子午線弧経線弧)の曲率半径M(ϕ)卯酉線弧はN(ϕ)緯線弧はN(ϕ)cosϕ)となる[4][5]

(x,y,z)から(λ,ϕ,h)を求める変換計算については上記から導かれる ϕ の方程式を解く必要がある[6]

回転楕円体面に沿う最短距離の式

テンプレート:Main

微小量

回転楕円体面に沿う最短距離(測地線距離)s の微小量は上記から得られる(微分幾何学)。h=0U=0) の下で、

ds=dE2+dN2=(N(ϕ)cosϕdλ)2+(M(ϕ)dϕ)2.

ただし、両極が特異点となる。

短距離近似式

二点間測地線距離Δsは、短距離の場合には、簡素な近似形を導出できる。Δλ=λ1λ2, Δϕ=ϕ1ϕ2, ϕm=ϕ1+ϕ22とおいて、短距離条件は、|Δϕ|1かつ|cosϕmΔλ|1と表される。

これに従うとΔs の近似式が導出される(誤差は |ΔsapproxΔstrue|Δs324a2。したがって30kmでは1ppmの精度)。

Δs=(2N(ϕm)cosϕmsinΔλ2)2+(M(ϕm)ΔϕcosΔλ2)2.
平面法

中緯度・低緯度限定の簡易な短距離近似計算式として、下記の平面法 (flat-surface method) が普及している[7][8]

Δs=(N(ϕm)cosϕmΔλ)2+(M(ϕm)Δϕ)2.

導出は、|Δϕ|1かつ|Δλ|1と仮定し、|Δλ|の三角関数を一次近似して得られる。すなわち上記の微小量式を率直に一次式(dΔ)と見なすことに相当する。

  • しかしながら、この |Δλ|1 については高緯度(および極近傍)では必ずしも適切な短距離条件とは言えず、それによる三角関数の近似を行ったことから両極に特異性を生じさせるなど難点を持つが[9]、高緯度(および極近傍)を除けば短距離近似として妥当であり多用される。
ガウスの平均緯度法(中間緯度法)

二点間測地線計算の短距離条件の球面近似の一種で[10] 、上記よりも近似精度が改善される ( Rapp (1991)[11] §6.4 )(誤差は |ΔsapproxΔstrue|Δs3400a2。したがって100kmでは1ppmの精度)。

Δs=2N(ϕm)arcsin(sinΔλ2cosϕm)2+(cosΔλ2sinM(ϕm)Δϕ2N(ϕm))2.

さらにより近似精度を改善した計算法も歴史的に多くの研究者によって開発されている(例えば、Bowring's_method_for_short_lines)。また高次の級数計算もしくは反復を含んでいる計算法も多い[12]

経度・緯度を並べる順序

並べる順序には、異なる慣行が存在する。正負については、東経を正の経度λ北緯を正の緯度ϕ南緯向きを正の余緯度とする。

  • 右手系では:(経度緯度、及び高度)の順とする[13][14]
  • これに対して左手系[15]では:(緯度、経度、及び高度)の順とする。局所座標系(地平面)の x 方向が北・緯度座標、y 方向が東・経度座標となる。

地図投影法の表式における x, y 平面座標の取り方

地図学における地図投影法の表式で x, y 平面座標の取り方は右手系で表されることが多い。

方位角との対応関係

テンプレート:Main 方位角は上記と対応した関係が存在する:

方位角を θとして、局所座標系(地平面)の単位円は (x,y,z)=(cosθ,sinθ,0) となる。

右手系経緯度の採用

下記では右手系経緯度が採用されている。

polygonの頂点配列が時計周り

右手系経緯度を採用しているもののうち、polygonの頂点配列順については時計周り順(左手系)を採用しているものがある:

左手系経緯度の採用

下記では左手系経緯度(緯度、経度の順)が採用されている。

左手系地図投影法の採用

下記では左手系の地図投影法を採用し、平面座標のx軸は右横方向が正、y軸は下縦方向が正としている[20]

脚注

  1. 天体が球体であれば、球面上の垂直ベクトルは中心を通るので、地理経緯度は地心経緯度に等しい。
  2. 地理経緯度は測地経緯度、測地学的経緯度(geodetic longitude and latitude)とも呼ばれる。
  3. 扁長もしくは扁平楕円体座標系とは異なる。
  4. ムーニエの定理も参照。
  5. 微分関係式は、d[N(ϕ)cosϕ]dϕ=M(ϕ)sinϕ
  6. 解くべき ϕ の方程式は
    pcosϕzsinϕe2N(ϕ)=0,p=x2+y2
    で、またこれは変数 κ=pztanϕについての方程式に帰着できる:
    κ1e2aκp2+(1e2)z2κ2=0
    解き方はGeographic_coordinate_conversion#From_ECEF_to_geodetic_coordinates等を参照のこと。また h=e2(κ1(1e2))p2+z2κ2
  7. テンプレート:Cite web
  8. 日本では「Hubeny の(簡易)式」などと呼ばれることもある(ただしその名称は適切ではない)。
  9. 180度経線に対しても特異性を持つが、対処は容易である。
  10. したがって「haversine関数を用いる大円距離計算」(円の弦長に基づき弧長を求める)を回転楕円体e0)へ拡張した形となっている。
  11. テンプレート:Cite report
  12. 例えば「ガウスの平均(中間)緯度法」の式を級数展開したものとして、 Hubeny, K. (1954). Entwicklung der Gauss'schen Mittelbreitenformeln, Österreichische Zeitschrift für Vermessungswesen, Hubeny, K. (1959). Weiterentwicklung der Gauss'schen Mittelbreitenformeln. Zeitschrift für Vermessungswesen.
  13. 和漢の用例でも、この(経度緯度)の順である「経緯度」である(例えば「日本経緯度原点」、「経緯線」)。
  14. 右手系の別慣行の変数及び順序は:(余緯度経度、及び高度)。数学・物理学における球面座標系の標準はこれに当たる。
  15. 15.0 15.1 この左手系の使用は一般的には非推奨とされている。ただし測量航海術地理学などの分野はこの左手系の使用は極めて標準的である。
  16. 左手系の別慣行では、x方向を右横方向、y方向を下縦方向にとる。
  17. 平面直角座標系(日本の規格)では左手系である。
  18. 右手系の別慣行では:(→東→北→西)
  19. OGCによるSRS/CRS の定義では大多数の測地系は axis order を左手系経緯度と定義する。
  20. 他にSVGフォーマットでは左手系座標が採用されている。

関連項目

テンプレート:Geo-term-stub

zh:經緯度