二個の平方数の和

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二個の平方数の和(にこのへいほうすうのわ)は「平方数」、「多角数定理」などの補遺に当たる。ここに示す事実は古くから知られている[1]ものであるが呼びかたが定まっておらず、フェルマーの4n+1定理[2]、フェルマーの二平方定理、あるいは単にフェルマーの定理(フェルマーの最終定理とは異なる)などと呼ばれる。


4を法として1に合同な素数は二個の平方数の和で表される。テンプレート:Math theorem合成数が高々二個の平方数の和で表されるための必要十分条件は、4を法として3に合同な素因数が全て平方(冪指数偶数)になっていることである。この定理は、フェルマーによって提起され、オイラーによって解決された。

具体的に4を法として1に合同な素数とは 5, 13, 17, 29, 37, 41, 53, 61, 73, 89, 97, 101, 109, (テンプレート:OEIS)

証明

素数についての証明

平方剰余の相互法則の補充法則により、p1(mod4)であれば

r21(modp)

となる自然数rが存在する。0xi,yi<pとすると(xi,yi)の組み合せの個数は(p+1)2>pである。従って、(x1,y1)(x2,y2)

x1ry1x2ry2(modp)

となるものが存在する。x=|x1x2|,y=|y1y2|とすると

x2r2y2y2(modp)x2+y20(modp)

である。x,y<pであるから

0<x2+y2<2p

であり、故に

x2+y2=p

である。

合成数についての証明

p=x2+y2,q=x'2+y'2であれば

2p=2(x2+y2)=(xy)2+(x+y)2pq=(x2+y2)(x'2+y'2)=(xxyy)2+(xy+yx)2r2p=r2(x2+y2)=(rx)2+(ry)2

であるから、十分条件については明らかである。必要条件についてはA=x2+y2p3(mod4)の形の素因数を持つと仮定して矛盾を導く(背理法)。p|aであれば

A=pa=x2+y2

と書ける。ここでp|xであれば必然的にp|yであり、p2|Aであるから両辺をp2で除するものとする。p|xであればxx11(modp)となるx1が存在する。両辺に(x1)2を乗すると

pa(x1)2=1+(yx1)201+(yx1)2(modp)1(yx1)2(modp)

となる。しかし、これは1p3(mod4)の平方剰余にならないという事実に反する。従って、p3(mod4)の形の素因数を平方以外の形で持つ合成数が二個の平方数の和で表されることはない。

一文証明

ザギエ(Zagier)による一文証明(one-sentence proof)[3]は、一文で完結することもさりながら、平方剰余に関する知識を要求しないということも特筆に値する。

有限集合S={(x,y,z)3|x2+4yz=4n+1}上の対合
(x,y,z){(x+2z,z,yxz),ifx<yz(2yx,y,xy+z),ifyz<x<2y(x2y,xy+z,y),ifx>2y
は必ず一個の不動点を持つから、集合Sの元の個数は奇数であり、対合
(x,y,z)(x,z,y)
も不動点を持つ。

対合とはaS,φ(φ(a))=aとなる写像φのことである。 不動点とはφ(e)=eとなる元eのことであり、 必ず一個の不動点を持つというのは(1,1,n)Sを意味している。 4n+1が素数であることを仮定して、 一文証明が主張する対合が実際に対合であること、そして(1,1,n)の他に不動点が存在しないことの確認は読者に任せる。 唯一の不動点を除き集合Sの元は対合によって対になるから、元の個数は奇数である。 従って、対合(x,y,z)(x,z,y)によって対にならない元が存在する。 これはy=zを意味し、ひいてはx2+(2y)2=pを意味する。

重みつき平方数の和

x2+2y2

p1,3(mod8)の素数はp=x2+2y2で表される。合成数がx2+2y2で表されるための必要十分条件は、p1,2,3(mod8)以外の素因数が全て平方になっていることである。この証明は以下に与えられる。

平方剰余の相互法則の第一補充法則と第二補充法則により、

(28n+1)=(18n+1)(28n+1)=(1)112(1)118=1,(28n+3)=(18n+3)(28n+3)=(1)312(1)918=1,(28n+5)=(18n+5)(28n+5)=(1)512(1)2518=1,(28n+7)=(18n+7)(28n+7)=(1)712(1)4918=1

であるから、p1,3(mod8)であればr22(modp)となる自然数rが存在する。x2+y2の場合の証明にならえば

x2+2y20(modp),0<x2+2y2<3p

となり、故に

x2+2y2=fp(f2)

となる。f=2の場合は両辺を2で除して

2(x2)2+y2=p

となる。合成数についてはx2+y2の場合の証明にならう。

x2+3y2

p1,7(mod12)の素数はp=x2+3y2で表される。合成数がx2+3y2で表されるための必要十分条件は、p1,3,7(mod12)以外の素因数が全て平方になっていることである。これはオイラーの6n+1定理[4]などと呼ばれる。この証明は以下によって与えられる。

平方剰余の相互法則と第一補充法則により、

(312n+1)=(112n+1)(312n+1)=(112n+1)(12n+13)=1,(312n+5)=(112n+5)(312n+5)=(112n+5)(12n+53)=1,(312n+7)=(112n+7)(312n+7)=(112n+7)(12n+73)=1,(312n+11)=(112n+11)(312n+11)=(112n+11)(12n+113)=1

であるから、p1,7(mod12)であればr23(modp)となる自然数rが存在する。x2+y2の場合の証明にならえば

x2+3y20(modp),0<x2+3y2<4p

となり、故に

x2+3y2=fp(f3)

となるが、法3で考えるとf=2はありえない。f=3の場合は両辺を3で除して

3(x3)2+y2=p

となる。合成数についてはx2+y2の場合の証明に倣う。なお、2|(x2+3y2)であれば、x,yは共に偶数か共に奇数であるが、奇数であれば4|(x2+3y2),8|(x2+3y2)である。従って、素因数2の冪指数は偶数である。

ヤコビの二平方定理

自然数を高々二個の平方数の和で表す方法の数は、ヤコビの二平方定理

r2(n)=42dn(1)d12

によって与えられる。ただし、シグマ記号は2で整除されないNの約数(1とNを含む)について和を取ることを表す。例えば、

r2(25)=4((1)112+(1)512+(1)2512)=12

であるが、実際に25を高々二個の平方数の和で表す方法は

25=(±5)2+02=02+(±5)2=(±4)2+(±3)2=(±3)2+(±4)2

であり、符号と順序を区別すれば12個になる。

二個の平方数の和で表される自然数の個数

二個の平方数の和で表される自然数の分布について、いくつかの結果が知られている。 エトムント・ランダウシュリニヴァーサ・ラマヌジャンは独立に、 x 以下の自然数のうち二個の平方数の和で表される自然数の個数はある正の定数 c について漸近的に

cx/logx

となることを証明している。 cランダウ・ラマヌジャンの定数と呼ばれ、およそ 0.76422365358922066299069873125 であることが知られている(テンプレート:OEIS[5]

関連項目

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

外部リンク