1+2+3+4+…

自然数すべての総和 テンプレート:Math は、その テンプレート:Mvar-次の部分和
が三角数によって与えられる無限級数。これは テンプレート:Mvar を無限大に飛ばすとき際限なく増加するため、この級数は(正の無限大に)発散し、通常の意味での「和」を持たない。
一見するとこの級数が意味のある値を持つことは全くないように思われるが、これに数学的に意味のある値を結びつける方法があり、そうして得られた値は複素解析や、物理学における場の量子論、特に弦理論などの分野において応用がある。様々な総和法を用いることで、上記のごとき発散級数にさえ有限な数値を割り当てることができ、特にゼータ関数正規化やラマヌジャン総和法では件の級数に テンプレート:Math を値として割り当てる。この事実をよく知られた公式
として式に表すテンプレート:Sfn[1]。モンスター群のムーンシャイン現象に関するモノグラフでテンプレート:仮リンクはこの等式を「自然科学において最も注目すべき公式の一つ」と評したテンプレート:Sfn。
部分和について

テンプレート:Main 級数 テンプレート:Math の部分和は順に テンプレート:Math と続き、第 テンプレート:Mvar 部分和は簡単な公式
によって与えられる。この等式はピタゴラス学派によって紀元前6世紀ごろには早くも知られていたテンプレート:Sfn。この形で与えられる数は、各項を点を三角形状に並べることで数えられることから、三角数と呼ばれる数である。
三角数からなる無限数列は テンプレート:Math に発散するから、定義により無限級数 テンプレート:Math もまた テンプレート:Math に発散する。これが発散することは「項が テンプレート:Math に収束しないならば級数は発散する」というテンプレート:仮リンクの単純な帰結でもある。
ゼータ関数の部分和
リーマンゼータ関数を部分和にした
を複素平面上にプロットした時、の虚部に対してが十分大きくなると対数螺旋のような軌跡を描く。その軌跡の中心は元となったゼータ関数の値に近似していることが観測されており[2]、の実部をとして虚部を十分小さくした時にこの方法でを観測するとテンプレート:Mathに近似する(函数等式)。[3]
総和可能性について
様々知られた古典的な発散級数の中でも テンプレート:Math は有限値へ持ち込むことが比較的難しい。発散級数に有限な数値を割り当てる総和法は多数存在するが、それらの中には総和法としての強さが比較可能なものがある。例えば、チェザロ総和法は緩やかに発散するグランディ級数 テンプレート:Math を テンプレート:Math に総和することはよく知られているが、アーベル総和法はグランディ級数を テンプレート:Math に総和するのみならず、より扱いの難しい級数 テンプレート:Math までも テンプレート:Math に総和することができる。
これらの級数と異なり、テンプレート:Math はチェザロ総和可能でもアーベル総和可能でもない。これらの総和法が適用できるのは収束級数と振動級数に対してのみであり、テンプレート:Math に発散する級数については有限な値を生み出すことはできないのであるテンプレート:Sfn。そこでより発展的な総和法が必要になるのであるが、それは例えばゼータ関数正規化やラマヌジャン総和法である。だいたいそういった方法による経験論を用いて、この級数の値が テンプレート:Math であると論ずることができる。
ヒューリスティックな説明

ラマヌジャンは彼のノートブックの8章において "テンプレート:Math" の導出を二種類の方法で与えている[4]テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。厳密さをさておいて簡単に述べれば以下のようなことになる。
考察の第一の鍵は、正項級数 テンプレート:Math が交項級数 テンプレート:Math にきわめてよく似ていることである。後者の級数もまた発散するのであるが、扱いは極めて容易で、これに値を割り当てる古典的な総和法がいくつか存在し、それは18世紀にはすでに発見されていたテンプレート:Sfn。
さて級数 テンプレート:Math を級数 テンプレート:Math に変形するのに、第二項から テンプレート:Math を引き、第四項から テンプレート:Math を引き、第六項から テンプレート:Math を引き……、という具合にやって行けば、引かれる総量は テンプレート:Math でこれはもとの級数の テンプレート:Math 倍である。これを少し代数学的に書いてみよう。この級数の「和」となるべきものがあるとしてそれを テンプレート:Math と呼ぶことにすると、これを テンプレート:Math 倍してもとの式から引けば
を得る。
考察の第二の鍵は、交項級数 テンプレート:Math が テンプレート:Math の形式冪級数展開に テンプレート:Math と代入したものになっていることである。ラマヌジャンのノートに従えば
の両辺を テンプレート:Math で割って、テンプレート:Math を得る。
一般論で言えば、無限級数を(特に発散級数を)有限和と同様のものであるかのように扱うことは危険である。例えば発散級数に対してその任意の位置に無数の テンプレート:Math を挿入することでさえ、自己矛盾した結果を導き得る(まして他と整合する結果であることをあらかじめ望むべくもない)。特に、テンプレート:Math とした手順は、単に加法単位元の基本性質のみで正当化することができるものではないのである。さらに極端な例として、級数の先頭にたった一つ テンプレート:Math を付け加えるだけで矛盾した結果を導くことができることさえあるテンプレート:Sfn。
この状況を改善して テンプレート:Math の挿入可能な場所を制限する一つの方法は、適当な関数に従って配置することによって各項のつながり方を保つことであるテンプレート:Efn。級数 テンプレート:Math における各項 テンプレート:Mvar は単なる数であるが、ここで項 テンプレート:Mvar を複素変数 テンプレート:Mvar に関する関数 テンプレート:Math へ昇華するならば、項が足し合わされるというようなことだけについては保証することができるようになる。そうして得られた級数はより厳密な取扱いができるようになるし、そのあとで変数 テンプレート:Mvar を テンプレート:Math に特殊化することもできる。こういった手法を形にしたものがゼータ関数正規化である(後述)。
テンプレート:Anchorsゼータ関数正規化

ゼータ関数正規化 テンプレート:En において、級数 は級数 に置き換えられる。後者の級数はディリクレ級数の一例である。複素変数 テンプレート:Mvar の実部が テンプレート:Math より大きいときこのディリクレ級数は収束し、その和はリーマンゼータ関数 テンプレート:Math に等しい。一方、実部が テンプレート:Math 以下のときこのディリクレ級数は発散し、特に級数 テンプレート:Math は テンプレート:Math と置いたものだから、テンプレート:Math は発散する。リーマンゼータ関数を導入するメリットは、そうすれば テンプレート:Mvar に関する解析接続によって級数の収束領域の外側まで矛盾なく定義することができることにある。そうして、級数 テンプレート:Math のゼータ関数正規化された「和」を テンプレート:Math と定義するのであるテンプレート:Efn。
ところで、テンプレート:Math を証明する方法はいくつか知られている。一つの方法はオイラーの論法に沿ったもので、リーマンゼータ関数とテンプレート:仮リンク テンプレート:Math との間の関係を用いるテンプレート:Sfn。このイータ関数は交代ディリクレ級数によって定義されるもので、故にこの方法は古き経験論的方法をなぞるものである。両ディリクレ級数が収束する領域において、等式
が成り立ち、この等式 は、上記の級数が発散する領域の s に対しても、解析接続によって延長すれば保たれる。故に テンプレート:Math を代入して テンプレート:Math を得るが、このイータ関数はこの級数を定義するアーベル和に等しいから テンプレート:Math は容易に計算できるテンプレート:Sfn。つまり、片側極限
が求まって、両辺を テンプレート:Math で割れば、テンプレート:Math を得る。
平滑化漸近線

テレンス・タオは級数の平滑化によって テンプレート:Math が得られることを指摘している。平滑化はゼータ関数正規化(複素解析を背景とする)とラマヌジャン総和法(オイラー=マクローリンの公式の便法)とを概念的に橋渡しするものである。これは、保守的な級数変化法を直接操作する代わりに、実解析の方法論を用いるのである。
この考えは、素性の悪い テンプレート:En 離散的級数 を、よい性質 テンプレート:En のカットオフ関数 テンプレート:Mvar を用いて、その滑らかな変形版 で置き換える。このカットオフ関数は テンプレート:Math に正規化されていなければならないテンプレート:Efn。カットオフ関数は級数の悪い点を滑らかにするために充分に有界な導関数を持ち、級数の増加よりも早く テンプレート:Math に減少する必要がある。便宜のため、テンプレート:Mvar は滑らかで有界かつ台がコンパクトであるものと仮定する。このとき、この平滑化された和が テンプレート:Math に漸近することが示される(ただし テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar に依存して決まる定数)。この漸近展開の定数項は テンプレート:Mvar の選び方に依らないが、これが必ずしも解析接続によって得られる値 テンプレート:Math と同じであると決まっているわけではないテンプレート:Sfn。
ラマヌジャン総和法
テンプレート:Math のテンプレート:仮リンクも テンプレート:Math になる。ハーディへ宛てたラマヌジャンの二通目の書簡 (1913年2月27日付け) には テンプレート:Quote テンプレート:Quote と書かれている。
ラマヌジャン総和法は、級数の部分和に対するオイラー=マクローリンの公式の定数項だけを分離する方法である。関数 テンプレート:Mvar に対して、級数 の古典ラマヌジャン和 テンプレート:En は
で定義される。ここで テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の テンプレート:Math-階導関数で テンプレート:Math は テンプレート:Math-番目のベルヌーイ数である (テンプレート:Math, テンプレート:Math, ……)。 テンプレート:Math とすれば f の一階導関数が テンプレート:Math で残りはすべて消えるから、
を得るテンプレート:Sfn。
矛盾が起きるのを避けるため、ラマヌジャン総和法の現代的理論では、テンプレート:Mvar の高階導関数が「オイラー=マクローリンの公式の剰余項が テンプレート:Math に収束するのに充分な速さで減少する」という意味の「正則性」を持つことを要求する。ラマヌジャンはこの性質を暗に仮定しているテンプレート:Sfn。この正則性を課すことによって、そのような正則な関数をとることができない テンプレート:Math のような病的な級数にラマヌジャン総和法が適用されることは防げる。そのような級数について、ラマヌジャン和の代わりにゼータ関数正規化によって解釈されるべきである。この理由を以ってハーディは、既知の級数のラマヌジャン和を関連する級数の和を求めるのに用いるときには「厳重な注意」テンプレート:En を要すると述べたテンプレート:Sfn。
物理学での応用
テンプレート:仮リンクでは、弦の取り得るエネルギー準位、とくに最低エネルギー準位を計算することが試みられる。砕けた言い方をすると、時空の次元を テンプレート:Mvar とするとき、弦の振動は テンプレート:Math 個の独立な量子調和振動子(各々は横波)の集まりと見ることができて、基本振動数、すなわち弦の振動数の中で最も小さいものを テンプレート:Mvar とすると振動子のエネルギーにおける テンプレート:Mvar 番目の振動子の寄与は テンプレート:Math と表せるのでテンプレート:Efn、件の級数を用いれば全ての振動数に亘る和を計算すると テンプレート:Math が得られる。最終的には、この事実にテンプレート:仮リンクを合わせて、ボゾン弦理論が 26 次元でないと無矛盾にならないことが導かれる。また、これに超対称性を取り入れた超弦理論は9次元(+時間1次元で計10次元)において無矛盾であることが示される。
級数 テンプレート:Math の計算は一次元のスカラー場に対するカシミール力の計算にも関わってくる。指数的カットオフ関数は級数を滑らかにするのに充分で、これは高エネルギー状態が導電性板によってブロックされないという事実を表している。この問題の空間対称性はこの展開の二次の項がキャンセルされることの原因である。残るのは定数項 テンプレート:Math であるが、この負符号はカシミール力が吸引力であるという事実を反映しているテンプレート:Sfn。
同様の計算は 3 次元でも存在し、リーマンゼータの代わりにエプスタインゼータが用いられるテンプレート:Sfn。
メディアでの扱い
テンプレート:仮リンクの小説 The Indian Clerk には、ハーディとリトルウッドがこの級数について議論するシーンが出てくるテンプレート:Sfn。サイモン・マクバーニーの2007年の作品 A Disappearing Number では舞台の冒頭でこの級数が取り上げられているテンプレート:Sfn。
2014年1月9日、YouTube の番組 Numberphile でこの級数に関する動画が投稿され[5]、公開から1ヶ月間で 150 万以上の再生数を獲得した[6]。動画は 8 分間でノッティンガム大学の物理学者、テンプレート:仮リンクが解説をしている。パディーヤは テンプレート:Math と テンプレート:Math から始め、最後に テンプレート:Math を、ラマヌジャンの議論と同様に項別の引き算を用いてそれらの級数の関連性を述べている。Numberphile はノッティンガム大学の物理学者、エド・コープランドを招いた 21 分の動画も制作しており、アーベル和として テンプレート:Math となること、テンプレート:Math として テンプレート:Math となることについて、より詳細に解説している[7] 。 後日、最初の動画が厳密性に欠けているという批判があり、パディーヤは彼のウェブページで、動画の中で行った操作と実際に行われている テンプレート:En なディリクレ級数に対する解析接続との関係についての解説を書いている[8]。 ニューヨーク・タイムズの Numberphile の動画に関する記事で、数学者のエドワード・フレンケルは次のようにコメントしている[6]。「この計算は数学界における最高の秘密の一つだろう。外部の人間は誰もそれについて知らないのだ 」。
脚注
注釈
出典
参考文献
- 数学関連
- テンプレート:Cite conference
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- テンプレート:Cite book
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- テンプレート:Cite journal
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- 物理学関連
- 一般書・小説
関連文献
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite book See p. 293.
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Cite conference
- テンプレート:Citation
外部リンク
- This Week's Finds in Mathematical Physics (Week 124), (Week 126), (Week 147), (Week 213)
- The Euler-Maclaurin formula, Bernoulli numbers, the zeta function, and real-variable analytic continuation by Terence Tao
- A recursive evaluation of zeta of negative integers by Luboš Motl
- Sum of Natural Numbers (second proof and extra footage) オイラーの方法の解説がある。
- What do we get if we sum all the natural numbers? response to comments about video by Tony Padilla
- Related article from New York TImes
- Divergent Series: why 1 + 2 + 3 + · · · = −1/12 アリゾナ大学の Brydon Cais による