ディリクレ級数

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テンプレート:No footnotes ディリクレ級数(ディリクレきゅうすう、テンプレート:Lang-en-short)とは、複素数{an}n0 および複素数 s に対して、 テンプレート:Indent で表される級数のことをいう。一般ディリクレ級数と区別するため、通常ディリクレ級数 (ordinary Dirichlet series)ともいう。 1839年、ディリクレ算術級数定理を証明する際に考察されたことに因み、彼の名が付けられている。

リーマンゼータ関数ディリクレのL関数はディリクレ級数のなかで、よく知られているものの1つである。

s を変数とみなし、ディリクレ級数の収束性を問わないとき、形式的ディリクレ級数 (formal Dirichlet series)という。

セルバーグクラスであるディリクレ級数は、リーマン予想に従うことが予想されている。

収束性

収束軸

任意のディリクレ級数に対して、次のいずれかが成り立つ。

  1. 任意の複素数 s に対して、ディリクレ級数は収束する。
  2. 任意の複素数 s に対して、ディリクレ級数は発散する。
  3. ディリクレ級数がs実部テンプレート:Math2>σc を満たす複素数 s に対して収束し、テンプレート:Math2<σc を満たす複素数 s に対して発散する様な実数 σc が存在する。


この σc をディリクレ級数の収束軸 (line of convergence)または収束座標 (abscissa of convergence)という。 収束軸について、ディリクレ級数が常に収束するときは 、常に発散する場合は + と定める。


注意1: 収束軸は、負の実数にもなり得る。 例えば テンプレート:Indent の収束軸は -1 である。


注意2: 収束軸上の点の収束・発散は、ディリクレ級数によって異なる。

  • リーマンゼータ関数 ζ(s) の収束軸は 1 であるが、s=1 では発散する。
  • ディリクレ級数
n=1(1)[log2n]/lognns
の収束軸は 1 であり、テンプレート:Math2=1 を満たす複素数 s に対して収束する。


収束軸の値の求め方

ディリクレ級数 テンプレート:Indent の収束軸 σc の値は、以下の様に求められる。

  • sn=k=1nak が発散する場合
    σc=lim supnlog|sn|logn
  • sn=k=1nak が収束する場合
    σc=lim supnlog|an+an+1+|logn

絶対収束性

一般の級数のときと同じく、 テンプレート:Indent が収束するとき、ディリクレ級数 テンプレート:Indent絶対収束するという。


例えば、ベキ級数のとき、収束円周上の点を除いて、収束すればその点で絶対収束するが、 ディリクレ級数の場合、収束しても絶対収束するとは限らない。以下のことが成り立つからである。


収束軸 σc が有限の値であるディリクレ級数 テンプレート:Indent に対して、 テンプレート:Indent の収束軸を、σa とおくと、0σaσc1 が成立する。

さらに、上記右辺の 1 は最良である。つまり、σa=σc+1 を満たすディリクレ級数が存在する。

この σa を、絶対収束軸 (line of absolute convergence)または絶対収束座標 (abscissa of absolute convergence)という。


絶対収束軸は、先に述べた収束軸の値を求める公式を用いて、以下の様に与えられる。

ディリクレ級数 テンプレート:Indent の絶対収束軸 σa の値は、以下の様に求められる。

  • sn=k=1n|ak| が発散する場合
    σa=lim supnlogsnlogn
  • sn=k=1n|ak| が収束する場合
    σa=lim supnlog(|an|+|an+1|+)logn

一様収束性

ディリクレ級数を テンプレート:Indent として、s を変数とする関数とみなすと、f(s)一様収束性が問題となる。


ディリクレ級数の一様収束性について、以下のことが成立する。

ディリクレ級数 テンプレート:Indent の収束軸 σc は有限の値とし、絶対収束軸を σa [1]とする。 このとき、 テンプレート:Indent を満たす実数 σu が存在して、Re s>σu を満たす複素数 s に対して、f(s) は一様収束するが、Re s<σu を満たす複素数 s に対して、f(s) は一様収束しない。 

この σu を、一様収束軸 (line of uniform convergence)または一様収束座標 (abscissa of uniform convergence)という。


一様収束軸と収束軸との間には、0σuσc1/2 が成立し、右辺の 1/2 は最良であることが知られている。


一様収束軸の値は、収束軸・絶対収束軸とは異なる方法で求められる。

ディリクレ級数 テンプレート:Indent の一様収束軸 σu の値は、以下の様に求められる。 テンプレート:Indent ここで、 テンプレート:Indent

代数的性質

2つの形式的ディリクレ級数 テンプレート:Indent の和を、 テンプレート:Indent 積(畳み込み (faltung、convolution)またはディリクレ積 (Dirichlet product)という)を、 テンプレート:Indent と定めると[2]、係数が環 R の元からなるディリクレ級数全体はを成す。もし、環 R可換であれば、ディリクレ級数環も可換である。


上で述べたことは、形式的ディリクレ級数についての議論であったので、収束性については考えていないが、 ある複素数 α に対して、f(α), g(α) が収束している場合、 上記の和、積で与えられたディリクレ級数が、s=α で収束するかを考えてみることにする。 和については、ディリクレ級数 f(s)+g(s)s=α で収束することは成り立つが、積については、ディリクレ級数 f(s)g(s) は、必ずしも s=α で収束しない。

例えば、2つのディリクレ級数を テンプレート:Indent とおくと、それぞれ、収束軸は 0 であるが、ディリクレ級数 h(s)=f(s)g(s) の収束軸は 1 である。 従って、f(1/2), g(1/2) はそれぞれ収束するが、h(1/2) は収束しない。


さらに、f(s), g(s) の収束軸が分かっていても、f(s)g(s) の収束軸が不明な場合もある。

解析的性質

正則性

ディリクレ級数 テンプレート:Indent は、Re s>σ で収束するならば、Re s>σ正則である。さらに、f(s)微分テンプレート:Indent で与えられる。


ディリクレ級数の解析接続

ディリクレ級数 テンプレート:Indent に対して、g(t)テンプレート:Indent で定める。

g(t)t0 での漸近展開として、 テンプレート:Indent を持つ場合、f(s) は全平面に正則に解析接続される。

さらに g(t)t0 での漸近展開として、 テンプレート:Indent を持つのであれば、f(s)有理型に接続され、f(s)b1/(s1)整関数である。


さらに、n=0, 1, 2,  に対して、 テンプレート:Indent が成り立つ。


ディリクレ級数の一意性

2つのディリクレ級数 テンプレート:Indent が、ある開領域内で収束し、そこで、f(s)=g(s) が成立するならば、すべての n に対して、an=bn である。


ディリクレ級数の係数の平均

ディリクレ級数 テンプレート:Indent に対して、 テンプレート:Indent であるならば、f(s) は、Re s>1 で収束して、 テンプレート:Indent が成立する。即ち、f(s) は、s=1 で1位のを持ち、留数は α である。

逆に、上記ディリクレ級数の係数が非負の実数であり、収束軸が 1 で、s=1 を除いて、Re s=1 の近傍まで正則に解析接続できるとする。また s=1 で1位の極とし、留数を α とすると、 テンプレート:Indent が成り立つ。


ディリクレ級数の積分表示

(1) メリン変換

ディリクレ級数 テンプレート:Indent に対して、ベキ級数 F(z)テンプレート:Indent で定める。

このとき、f(s) が絶対収束する領域内で テンプレート:Indent が成立する。これをメリン変換 (Mellin transform)という。

この変換を用いて、ディリクレ級数の性質をベキ級数を用いて考察したり、その逆でベキ級数の性質をディリクレ級数から求めたりすることができる。


(2) フラッグマンによる積分表示

ディリクレ級数 テンプレート:Indent に対して、A(x)=nxan とおく。 もし テンプレート:Indent であるならば テンプレート:Indent 但し、両辺のうち、少なくとも一方は収束しているとする。


(3) ラプラス=スティルチェス変換

ディリクレ級数に対して、ラプラス=スティルチェス変換を行うことにより、以下の様な積分表示が得られる。

ディリクレ級数 テンプレート:Indent に対して、B(t)=netan とおく。このとき テンプレート:Indent


数論的関数の母関数

オイラー積

数論的関数 a(n) を係数とするディリクレ級数 テンプレート:Indent を、 a(n) の(ディリクレ級数で表された)母関数という。

数論的関数 a(n) の数論的性質が母関数の性質から導かれることがしばしばあり、母関数は、数学の対象として大変重要なものである。(母関数も参照のこと)

特に、乗法的関数である数論的関数に対して、母関数をディリクレ級数の形で表すことが多い。 それは、母関数が以下で述べるオイラー積表示を持つからである。


a(n) を乗法的関数である数論的関数としたとき、 テンプレート:Indent は、以下の積表示を持つ。 テンプレート:Indent

この積をオイラー積 (Euler product)という。

逆に、ある数論的関数 a(n) の母関数がオイラー積表示を持つならば、 a(n) は乗法的関数である。

さらに、a(n)完全乗法的関数であれば、オイラー積は テンプレート:Indent と表される。

数論的関数に対する母関数の例を与える。

(1)a(n)=1 (n=1, 2,) の母関数は、リーマンゼータ関数に等しい。 テンプレート:Indent


(2) メビウス関数 μ(n) テンプレート:Indent


(3) オイラー関数 φ(n) テンプレート:Indent


(4) 約数関数 d(n) テンプレート:Indent


(5) k約数和関数 σk(n) (k1) テンプレート:Indent

注釈

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. このとき、絶対収束軸は有限の値である。ディリクレ級数の絶対収束性を参照のこと。
  2. 積の定義が不自然と思うかもしれないが、無限級数 f(s), g(s) の各項どうしを掛け、ns の項でまとめたのが、cn であるので、積の定義は自然なものである。

参考文献

テンプレート:参照方法

関連項目

テンプレート:Math-stub テンプレート:Normdaten