リーマン予想

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テンプレート:混同

リーマンのゼータ関数 テンプレート:Math (テンプレート:Math) の実部(赤線)と虚部(青線)。最初の非自明な零点テンプレート:Math2 に現れる。
臨界線(テンプレート:Math)上を移動する点の軌跡をゼータ関数によって変換したもの。この軌跡は繰り返し原点を通る曲線になる。
直線の実部を変化させたときゼータ関数が描く軌跡の変化。実部が テンプレート:Math のときに上記と同じく軌跡は繰り返し原点を通る曲線になる。

テンプレート:Millennium Problems 数学においてリーマン予想(リーマンよそう、テンプレート:Lang-en-short, テンプレート:Lang-de-short、略称:RH)は、リーマンゼータ関数零点が、負の偶数と、実部テンプレート:Math複素数に限られるという予想である。リーマン仮説とも。ドイツの数学者ベルンハルト・リーマン(1859)により提唱されたため、その名称が付いている。この名称は密接に関連した類似物に対しても使われ、例えば有限体上の曲線のリーマン予想がある。

リーマン予想は素数の分布についての結果を含んでいる。適切な一般化と合わせて、純粋数学において最も重要な未解決問題であると考える数学者もいるテンプレート:Sfn。リーマン予想は、ゴールドバッハの予想とともに、ヒルベルトの23の問題のリストのうちのテンプレート:仮リンクの一部である。クレイ数学研究所ミレニアム懸賞問題の1つでもある。

リーマンゼータ関数 テンプレート:Mathテンプレート:Math を除くすべての複素数 テンプレート:Mvar で定義され、複素数の値をとる関数である。その零点(つまり、関数値が テンプレート:Math となる テンプレート:Mvar)のうち、負の偶数 テンプレート:Math2 はその自明な零点と呼ばれる。しかしながら、負の偶数以外の零点も存在し、非自明な零点と呼ばれる。リーマン予想はこの非自明な零点の位置についての主張である:

リーマンゼータ関数のすべての非自明な零点の実部は テンプレート:Math である。

いいかえると、

リーマンゼータ関数のすべての非自明な零点は、複素数平面上の直線 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar実数)上にある。ここで テンプレート:Mvar虚数単位である。この直線を臨界線 (テンプレート:Lang-en) という。

リーマン予想に関する非専門の本が何冊か存在するテンプレート:Refnest

概要

リーマン素数の分布に関する研究を行っている際にオイラーが研究していた以下の級数をゼータ関数と名づけ、解析接続を用いて複素数全体への拡張を行った。

ゼータ関数を次のように定義する(複素数 テンプレート:Mvar の実部が テンプレート:Math より大きいとき、この級数絶対収束する)。

ζ(s)=n=11ns=1+12s+13s+14s+.

1859年にリーマンは自身の論文の中で、複素数全体 (テンプレート:Math) へゼータ関数を拡張した場合、 テンプレート:Quotation と予想した。ここに、自明な零点とは負の偶数 (テンプレート:Math2) のことである。自明でない零点は テンプレート:Math2[注 1] の範囲にしか存在しないことが知られており(下記の歴史を参照)、この範囲を臨界帯という。

なお素数定理はリーマン予想と同値な近似公式[注 2]からの帰結であるが、素数定理自体はリーマン予想が真であるという仮定がなくとも証明できる。この注意は歴史的には重要なことで、実際リーマンがはっきりとは素数定理を証明できなかった理由はリーマン予想の正否にこだわっていたためであると思われている(素数分布とゼータ関数との関係は下記#素数の分布や、リーマンゼータ関数素数定理リーマンの素数公式の項を参照のこと)。

現在もリーマン予想は解決されていない。数学における最も重要な未解決問題の一つである。リーマンのゼータ関数を特殊な場合に含むL関数に対しても同様の予想を考えることができ、これを一般化されたリーマン予想(テンプレート:En:GRHと略される)と呼んでいる。

最近では、虚部が小さい方から10兆個 (X. Gourdon and P. Demichel, 2004) までの複素零点はすべてリーマン予想を満たすことが計算されており、現在までにまだ反例は知られていない。現在では多くの数学者がリーマン予想は正しいと考えているようである[注 3]。しかし無限にある零点からみれば有限に過ぎない10兆個程度の零点の例などは零点分布の真の姿を反映するには至らないとして、この計算結果に対して慎重な数学者もいる。歴史上有名な数学者の中でもリーマン予想を疑っている人物はいたテンプレート:Sfn

リーマンゼータ関数

リーマンゼータ関数は実部が テンプレート:Math よりも大きい複素数 テンプレート:Mvar に対して絶対収束無限級数

ζ(s)=n=11ns=11s+12s+13s+

によって定義される。レオンハルト・オイラー(リーマンの生まれる40年前に亡くなった)はこの級数がオイラー積

ζ(s)=p: prime11ps=112s113s115s117s11ps

に等しいことを示した、ここで無限積はすべての素数 テンプレート:Mvar を走り、再び実部が テンプレート:Math より大きい複素数 テンプレート:Mvar に対して収束する。オイラー積の収束は、どの因子も零点を持っていないから、テンプレート:Math がこの領域において零点を持たないことを示している。

リーマン予想はこの級数とオイラー積の収束領域の外側での零点について議論する。予想が意味をなすために、関数を解析接続して、すべての複素数 テンプレート:Mvar に対して有効な定義を与える必要がある。これは以下のようにテンプレート:Ill2の言葉でゼータ関数を表すことによってできる。テンプレート:Mvar の実部が テンプレート:Math よりも大きければ、ゼータ関数は

(122s)ζ(s)=n=1(1)n+1ns=11s12s+13s

を満たす。しかしながら、右辺の級数は テンプレート:Mvar の実部が テンプレート:Math より大きいときだけでなく、より広く テンプレート:Mvar の実部が正のときにいつでも収束する。したがって、この代わりの級数はゼータ関数を テンプレート:Math からより大きい領域 テンプレート:Math に、テンプレート:Math の零点を除いて、拡張する(en:ディリクレのエータ関数を参照)。ゼータ関数はこれらの除かれた値にも極限を取ることによって拡張でき、テンプレート:Math における一位の極を除いて、正の実部を持つすべての テンプレート:Mvar の値に対して有限値を与える。

テンプレート:Math において、ゼータ関数は関数等式

ζ(s)=2sπs1sin(πs2)Γ(1s)ζ(1s)

を満たす。すると残りのすべての零でない複素数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math を、この方程式が帯の外側でも成り立つと仮定し、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar の実部が正でないときに方程式の右辺に等しいとすることで定義できる。テンプレート:Mvar が負の偶数のとき、因子 テンプレート:Math が消えるから テンプレート:Math である。これらがゼータ関数の自明な零点である(テンプレート:Mvar が正の偶数のときにはこの議論は適用しない、なぜならば正弦関数の零点はガンマ関数が負の整数の引数を取るからその極によって打ち消されるからである)。値 [[1+1+1+1+…|テンプレート:Math]] は関数等式からは定まらないが、テンプレート:Mvarテンプレート:Math に近づくときの テンプレート:Math の極限値である。関数等式はまた、ゼータ関数が自明な零点の他には実部が負の零点を持たないことも意味しており、したがってすべての非自明な零点は、テンプレート:Mvar の実部が テンプレート:Mathテンプレート:Math の間の臨界帯 (critical strip) にある。

歴史

なお、リーマン予想を解決したと主張する論文やレポートは時々現われるが、解決に到達したと認められたものは(2025年1月の段階では)まだ一つも無い。

帰結

リーマン予想の仮定の下で真である命題や、リーマン予想と同値である命題が、多く知られている。

同値な命題

以下の各命題は、リーマン予想と同値である。

|π(x)li(x)|Cxlogx
が成り立つこと[1]。ここに テンプレート:Math対数積分を表す。これは
π(x)=li(x)+O(x12+ϵ)
と表現しても同じことである。ただし、テンプレート:Mvarランダウの記号である。
σ(n)Hn+eHnlogHn
が成り立つこと[2]。ここに テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 番目の調和数、すなわち
Hn=k=1n1k
で定義される有理数である。

素数の分布

リーマンの素数公式(リーマンの明示公式)は、与えられた数よりも小さい素数の個数を、リーマンのゼータ関数の零点全てに渡る無限和により表すものであり、予想される位置の周りでの素数の振動の大きさがゼータ関数の零点の実部によって制御されることを述べている。特に、素数定理における誤差項は、零点の位置に密接に関係している。例えば、テンプレート:Mvar が零点の実部の上界であれば、差 テンプレート:Math は error bound テンプレート:Math を持つテンプレート:Sfnテンプレート:Math であることが既に知られているテンプレート:Sfn

Von Koch (1901) はリーマン予想が素数定理の誤差に対する「最良の」上界を導くことを示した。テンプレート:Harvtxt による,Koch の結果の正確なバージョンによれば、リーマン予想からは

|π(x)Li(x)|<18πxlog(x),for all x2657

が従う、ただし テンプレート:Math素数計数関数であり、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar自然対数である。

テンプレート:Harvtxt はまた、リーマン予想から

|ψ(x)x|<18πxlog2(x),for all x73.2

が従うことを示した。ここで テンプレート:Math第二チェビシェフ関数である。

テンプレート:Harvtxt はリーマン予想から次のことが従うことを示した:任意の テンプレート:Math に対して、ある素数 テンプレート:Mvar が存在して、

x4πxlogx<px

が成り立つ。これはクラメルの定理の明示的なバージョンである。

数論的関数の増大

リーマン予想は、上記の素数計数関数に加えて、他の多くの数論的関数の増大に関する強い上界も導く。

1つの例はメビウス関数 テンプレート:Mvar に関するものである。等式

1ζ(s)=n=1μ(n)ns

が、実部が テンプレート:Math よりも大きいすべての テンプレート:Mvar に対して右辺の和が収束して成り立つという主張は、リーマン予想と同値である。このことから次のことも結論できる:テンプレート:仮リンク

M(x)=nxμ(n)

によって定義すると、すべての テンプレート:Math に対して

M(x)=O(x12+ε)

が成り立つという主張は、リーマン予想と同値である[3](これらの記号の意味については、ランダウの記法を参照)。order テンプレート:Mvarテンプレート:仮リンクの行列式は テンプレート:Math に等しいので、リーマン予想はこれらの行列式の増大に関する条件としても述べることができる。リーマン予想は テンプレート:Mvar の増大度についてかなりきつい制限を与える、というのも テンプレート:Harvtxt がわずかに強い テンプレート:仮リンク

|M(x)|x

を反証したからである.

リーマン予想は テンプレート:Math の他の数論的関数の増大率についての多くの予想とも同値である。典型的な例は次の テンプレート:仮リンク テンプレート:Harv である:テンプレート:Math

σ(n)=dnd

で与えられる約数関数とすると、

σ(n)<eγnloglogn

がすべての テンプレート:Math に対して成り立つことと、リーマン予想が真であることが同値である。ここで テンプレート:MvarEuler–Mascheroni 定数である。

別の例は テンプレート:Ill2 によって発見され、ランダウによって拡張されたテンプレート:Sfn。リーマン予想は Farey 数列の項がかなり規則的であることを示すいくつかの主張と同値である。1つのそのような同値は以下のようである:テンプレート:Mathテンプレート:Math で始まり テンプレート:Math までの order テンプレート:Mvar の Farey 数列とすると、すべての テンプレート:Math に対して

i=1m|Fn(i)im|=O(n12+ε)

が成り立つという主張は、リーマン予想と同値である。ここで

m=i=1nϕ(i)

は order テンプレート:Mvar の Farey 数列における項の数である。

群論からの例として、テンプレート:Mathテンプレート:Ill2とする、つまり テンプレート:Mvar 次の対称群 テンプレート:Mvar の元の最大位数とする。テンプレート:Harvtxt はリーマン予想が十分大きい全ての テンプレート:Mvar に対する上界

logg(n)<Li1(n)

と同値であることを示した.

リンデレーフ予想とゼータ関数の増大

リーマン予想は様々なより弱い結果も導く。その1つは テンプレート:仮リンクである。これは臨界線上のゼータ関数の増大率に関する予想で、任意の テンプレート:Math に対して、t のとき

ζ(12+it)=O(tε)

が成り立つというものである。

リーマン予想はまた、臨界帯の他の領域におけるゼータ関数の増大率に対するかなり鋭い上界も与える。例えば、

eγlim supt+|ζ(1+it)|log(logt)2eγ
6π2eγlim supt+1log(logt)|ζ(1+it)|12π2eγ

を与えるので、テンプレート:Math とその逆数の増大率は2倍の違いを除いて分かることになるテンプレート:Sfn

素数の間隔が大きいことの予想

素数定理は平均的に素数 テンプレート:Mvar とその次の素数の間の間隔テンプレート:Math であることを意味する。しかしながら、素数間の間隔には平均よりもはるかに大きいものもある。クラメルはリーマン予想を仮定してすべての間隔が テンプレート:Math であることを示した。これは、リーマン予想を用いて証明できる最もよい上界でさえ、正しいと思われるものよりも遥かに弱い場合である。すなわち、テンプレート:仮リンクはすべての間隔が テンプレート:Math であることを意味しており、これは平均間隔よりは大きいが、リーマン予想から導かれる上界よりは遥かに小さいのである.数値計算はクラメルの予想を支持しているテンプレート:Sfn

リーマン予想に同値な主張

リーマン予想に同値な多くの主張が発見されているが、これまでのところそれらがリーマン予想を証明する(あるいは反証する)のに大きな進展をもたらしたことはない。いくつかの典型的な例は以下のようである。(他にテンプレート:仮リンク テンプレート:Math に関するものがある。)

Riesz の判定法テンプレート:Harvtxt によって与えられた、以下の主張である:

k=1(x)k(k1)!ζ(2k)=O(x14+ε)

がすべての テンプレート:Math に対して成り立つこととリーマン予想が成り立つことは同値である。

テンプレート:Harvtxt はリーマン予想が真であることと次が同値であることを示した:

f(x)=ν=1ncνρ(θνx)

の形の関数全体のなす空間、ただし テンプレート:Mathテンプレート:Mvar の小数部分で、テンプレート:Math で、

ν=1ncνθν=0,

は、単位区間上の二乗可積分関数全体のなすヒルベルト空間 テンプレート:Math において稠密である。テンプレート:Harvtxt はこれを次を示すことで拡張した:ゼータ関数が実部が テンプレート:Math よりも大きい零点を持たないこととこの関数空間が テンプレート:Math において稠密であることは同値である。

テンプレート:Harvtxt はリーマン予想が真であることと次が同値であることを示した:積分方程式

0zσ1ϕ(z)exz+1dz=0

テンプレート:Math に対して非自明な有界な解 テンプレート:Mvar を持たない。

テンプレート:Ill2はある関数の正値性がリーマン予想と同値であるという主張である.関連するのは テンプレート:Ill2で,ある数列の正値性がリーマン予想と同値であるという主張である。

テンプレート:Harvtxt はリーマン予想が次の主張と同値であることを証明した:テンプレート:Math の導関数 テンプレート:Math は帯

0<(s)<12

に零点を持たない。テンプレート:Math が臨界線上に1位の零点しか持たないことはその導関数が臨界線上に零点を持たないことと同値である。

一般リーマン予想の帰結

いくつかの応用は ディリクレの L 級数数体のゼータ関数のために、普通のリーマン予想ではなくてより一般リーマン予想を用いる。リーマンゼータ関数の多くの基本的な性質はすべてのディレクレ L関数に容易に一般化できるので、リーマンゼータ関数に対するリーマン予想を証明する手法がディレクレ L関数に対する一般リーマン予想に対してもうまく使えるというのはもっともらしい。一般リーマン予想を仮定することで始めて証明されたいくつかの結果は、後に予想の仮定を用いない証明が与えられたが、それらはたいてい予想を仮定して証明するのに比べて遙かに難しい。以下のリストにある結果の多くは テンプレート:Harvtxt から取られている。

  • 1913年、グロンウォールは一般リーマン予想が類数1の虚二次体の Gauss のリストが完全であることを導くことを示した。しかし後に、Baker、Stark および Heegner は、一般リーマン予想を仮定せずに証明を与えた。
  • 1917年、ハーディとリトルウッドは、一般リーマン予想は
limx1p>2(1)(p+1)/2xp=+
という Chebyshev による予想を導くことを示した。この予想はある意味で、4 を法として 3 に合同な素数は 1 に合同なものよりも多いということを言っている。

排中律

リーマン予想のいくつかの帰結はその否定の帰結でもあり、したがって定理である。テンプレート:Harv は,Heilbronnの類数定理の彼らの議論において、次のように言っている: テンプレート:Verse translation

一般リーマン予想が偽であるということによって何が意味されるかを理解するのに注意を払うべきである:ちょうどどのクラスのディレクレ級数が反例を持っているのか特定すべきである。

このような論法は無理数の無理数乗で表される有理数が少なくとも1つ存在すること(京都大学入試問題)の証明やワイルズによるフェルマーの最終定理の証明などにも見られる(ワイルズの3-5トリック)。

リトルウッドの定理

リトルウッドの定理は素数定理における誤差項の符号に関するものである。すべての テンプレート:Math に対して テンプレート:Math であることが計算されておりテンプレート:Citation neededテンプレート:Math であるような テンプレート:Mvar の値は知られていない。このを参照。

1914年、リトルウッドは次のことを証明した:

π(x)>Li(x)+13xlogxlog(log(logx))

となるような任意に大きい テンプレート:Mvar の値が存在し、

π(x)<Li(x)13xlogxlog(log(logx))

となるような任意に大きい テンプレート:Mvar の値も存在する。したがって、差 テンプレート:Math は無限回符号を変える。Skewes 数は最初の符号変化に対応する テンプレート:Mvar の値の評価である.

リトルウッドの証明は2つの部分からなっている。リーマン予想を偽と仮定する部分(テンプレート:Harvnb の約半ページ)と、リーマン予想を真と仮定する部分(約12ページ)である。

ガウスの類数予想

ガウスの類数予想は,与えられた類数を持つ虚二次体は有限個しかないという(ガウスの Disquisitiones Arithmeticae の article 303 において最初に述べられた)予想である.それを示す1つの方法は、判別式 D のとき類数 h(D) となることを示すことである。

リーマン予想に関わる以下の定理は テンプレート:Harvnb に記されている:

定理 (Hecke; 1918). テンプレート:Math を虚二次体 テンプレート:Mvar の判別式とする。すべての虚二次ディレクレ指標の L 関数に対する一般リーマン予想を仮定する。このとき

h(D)>C|D|log|D|

となるような絶対的な定数 テンプレート:Mvar が存在する。

定理 (Deuring; 1933). リーマン予想が偽ならば,テンプレート:Math が十分大きいとき テンプレート:Math である.

定理 (Mordell; 1934). リーマン予想が偽ならば、

D

のとき

h(D)

である。

定理 (Heilbronn; 1934). 一般 Riemann 予想がある虚二次 ディレクレ指標の L 関数に対して偽ならば、

D

のとき

h(D)

である。

(Hecke と Heilbronn の仕事において、現れる L 関数は虚二次指標に付随するものだけであり、それは一般リーマン予想が真であるあるいは一般リーマン予想が偽であることが意図されているのはそれらの L 関数に対してのみである。ある三次のディレクレ指標の L 関数に対して一般 リーマン予想が成り立たなければ、一般リーマン予想は成り立たないが、これは Heilbronn が考えていたような一般リーマン予想の不成立ではなく、したがって彼の仮定は単に一般リーマン予想が偽であるというものよりも限定されていた。)

1935年、Carl Siegel はリーマン予想や一般リーマン予想を全く用いずに結果を強化した。

Growth of Euler's totient

1983年、テンプレート:Ill2 は、無限個の テンプレート:Mvar に対して

φ(n)<eγnlog(logn)

であることを示した テンプレート:Harv。ただし テンプレート:MathEuler のトーシェント関数で,テンプレート:MvarEuler の定数である。

Ribenboim は次のように注意している: テンプレート:Verse translation

一般化と類似物

テンプレート:Expand section

ディリクレの L 級数と他の代数体

リーマンのゼータ関数を、形式的には似ているがはるかに一般的な大域的 L-関数に置き換えることによって、リーマン予想を一般化することができる。このより広い設定において、大域的 L-関数の非自明な零点の実部が テンプレート:Math であると期待される。リーマンのゼータ関数のみに対する古典的なリーマン予想よりもむしろ、これらの一般化されたリーマン予想が、数学におけるリーマン予想の真の重要性の理由である。

一般化されたリーマン予想 (generalized Riemann hypothesis) は、リーマン予想を全てのディリクレの L-関数へ拡張したものである。とくにこの予想は、テンプレート:仮リンクテンプレート:Mathテンプレート:Math の間にある L 関数の零点)が存在しないという予想を含んでいる。

拡張されたリーマン予想 (extended Riemann hypothesis) は、リーマン予想を代数体の全てのデデキントゼータ関数へと拡張したものである。有理数体のアーベル拡大に対する拡張されたリーマン予想は、一般化されたリーマン予想と同値である。リーマン予想は代数体のヘッケ指標L-関数へ拡張することもできる。

テンプレート:仮リンク (grand Riemann hypothesis) は、全ての保型形式のゼータ関数(例えばテンプレート:仮リンクメリン変換)へ拡張したものである。

種々の結果

リーマン予想を証明したと発表した数学者もいるが、正しい解答として受け入れられたものは2019年9月現在存在しない。テンプレート:Harvtxt はいくつかの正しくない解答をリストしており、より多くの正しくない解答は頻繁に発表されている[4]

例えば2004年には、ルイ・ド・ブランジュが証明に成功したと発表したが後に否定された[5][6]2018年には、マイケル・アティヤ微細構造定数の導出の副産物としてリーマン予想を証明したと発表したが、多くの専門家は懐疑的に見ている[7][8]。この論文は王立協会が発行する科学誌に投稿され、専門家らにより検証が進められていた[9]ものの、発表から数ヶ月を経て著者は死去、論文は撤回となった。

作用素理論

テンプレート:Main

ヒルベルトとポリヤはリーマン予想を導出する1つの方法は自己共役作用素を見つけることであると提案した。その存在から テンプレート:Math の零点の実部に関する例の主張が、実固有値に主張を適用すると従うのである。このアイデアのいくつかの根拠は、零点がある作用素の固有値に対応するリーマンゼータ関数のいくつかの類似から来る:有限体上の多様体のゼータ関数の零点はエタールコホモロジー群上のフロベニウス元の固有値に対応し、セルバーグゼータ関数の零点はリーマン面のラプラス作用素の固有値であり、[[p進ゼータ関数|テンプレート:Mvar 進ゼータ関数]]の零点はイデール類群へのガロワ作用の固有ベクトルに対応する。

テンプレート:Harvtxt は、リーマンゼータ関数の零点の分布はテンプレート:Ill2から来るランダム行列の固有値といくつかの統計学的性質を共有していることを示した。これはヒルベルト–ポリヤ予想にいくらかの根拠を与える。

1999年、マイケル・ベリーテンプレート:Ill2は古典ハミルトニアン テンプレート:Math のある未知の量子化 H^ が存在して、以下を満たすと予想した。

ζ(12+iH^)=0,

あるいはさらに強く、リーマンの零点が作用素 12+iH^ のスペクトルと一致する。これは正準量子化と対照的である。正準量子化はハイゼンベルクの不確定性原理 [x,p]=12 を導き、テンプレート:Ill2のスペクトルとして自然数が得られる。重要な点は、ハミルトニアンは量子化がヒルベルト–ポリヤプログラムの実現であるように自己共役作用素であるべきことである。この量子力学の問題との関連で、ベリーとコンヌは以下を提案した。ハミルトニアンのポテンシャルの逆は関数

N(s)=1πArgξ(12+is)

の半微分と関連があり、ベリー–コンヌのアプローチでは

V1(x)=4πd12N(x)dx12

テンプレート:Harv. これは次のようなハミルトニアンを生み出す。固有値がリーマンの零点の虚部の平方であり、またこのハミルトニアン作用素の汎関数行列式はリーマンのクシー関数である。実はリーマンのクシー関数はコンヌらによって証明されたように汎関数行列式(アダマール積)

det(H+14+s(s1))

の定数倍であり、このアプローチでは

ξ(s)ξ(0)=det(H+s(s1)+14)det(H+14).

有限体上のリーマン予想との類似は、零点と対応する固有ベクトルを含むヒルベルト空間は整数のスペクトル テンプレート:Math のある種の1次コホモロジー群かもしれないと示唆する。テンプレート:Harvtxt はそのようなコホモロジー論を見つける試みのいくつかを記述した テンプレート:Harv

テンプレート:Harvtxt はラプラス作用素の下でリーマンゼータ関数の零点に対応する固有値をもつ上半平面上の不変関数の自然な空間を構成した。そして、この空間上の適切な正定値内積の存在を示すというありそうもないイベントにおいてリーマン予想が従うことを注意した。テンプレート:Harvtxt は関連した例を議論した。奇妙なバグによってコンピュータープログラムが同じラプラス作用素の固有値としてリーマンゼータ関数の零点をリストするのである。

テンプレート:Harvtxt はリーマンゼータ関数に関連した適切な物理模型を構成する試みのいくつかをサーベイした。

リー–ヤンの定理

リー・ヤンの定理は、統計力学におけるある分割関数の零点がすべて実部 テンプレート:Math の「臨界線」上に乗っていると述べており、これはリーマン予想との関係についての推測をもたらした テンプレート:Harv

トゥランの結果

テンプレート:Harvs は次のことを示した。関数

n=1Nns

テンプレート:Mvar の実部が テンプレート:Math よりも大きいときに零点をもたないならば、

T(x)=nxλ(n)n0 for x>0

となる。ここで テンプレート:Mathテンプレート:仮リンクで、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 個の素因子をもつとき テンプレート:Math によって与えられる。彼はこのことからリーマン予想が真であることが導かれると示した。しかしながら、テンプレート:Harvtxtテンプレート:Math は無限個の テンプレート:Mvar で負であること示し(また密接に関連したポリア予想も反証し)、テンプレート:Harvtxt は最小のそのような テンプレート:Mvarテンプレート:Gaps であることを示した。テンプレート:Harvtxt は数値計算によって、上の有限ディリクレ級数が テンプレート:Math のときに実部が テンプレート:Math よりも大きい零点をもつことを示した。トゥランはまた、いくぶん弱い仮定、すなわち上の有限ディリクレ級数で大きい テンプレート:Mvar に対して実部が テンプレート:Math よりも大きい零点が存在しないことが、リーマン予想を導くことを示したが、テンプレート:Harvtxt はすべての十分大きい テンプレート:Mvar に対してこれらの級数は実部が テンプレート:Math よりも大きい零点をもつことを示した。したがって、トゥランの結果は空虚な真であって、リーマン予想の証明のためには使えない。

非可換幾何学

テンプレート:Harvs はリーマン予想と非可換幾何学の間の関係を記述し、アデール類空間へのイデール類群の作用に対するセルバーグ跡公式の適切な類似があればリーマン予想が従うことを示した。これらのアイデアのいくつかは テンプレート:Harvtxt に詳細に述べられている。

整関数のヒルベルト空間

テンプレート:Harvs はリーマン予想がある整関数のヒルベルト空間上の正性条件から従うことを示した。しかしながら、テンプレート:Harvtxt は必要な正性条件が満たされないことを示した。この障害にもかかわらず、ド・ブランジュは同じ方針でリーマン予想を証明しようと取り組み続けたが、他の数学者から広く受け入れられていない テンプレート:Harv

準結晶

リーマン予想はゼータ関数の零点が準結晶をなすことを意味する、つまり discrete support をもつ distribution でありそのフーリエ変換も discrete support をもつ。テンプレート:Harvtxt は1次元の準結晶を分類する、あるいは少なくとも研究することによって、リーマン予想を証明しようとすることを提案した。

数体上の楕円曲線のモデルの数論的ゼータ関数

幾何次元 1、例えば代数体、から、幾何次元 2、例えば数体上の楕円曲線の regular model, に行った時、モデルの数論的ゼータ函数に対する一般リーマン予想の2次元部分はゼータ関数の極を扱う。次元1ではテイト論文におけるゼータ積分の研究はリーマン予想に関して新しい重要な情報を導かなかった。これに対し、次元 2 ではテイト論文の2次元の一般化に関するイヴァン・フェセンコの研究はゼータ関数に密接に関係するゼータ積分の積分表現を含む。次元 1 では可能ではなかったこの新しい状況において、ゼータ関数の極はゼータ積分と付随するアデール群を通して研究することができる。ゼータ積分に伴う boundary function の四次導関数の正性に関する テンプレート:Harvs の関連した予想は一般リーマン予想の極部分を本質的に含む。テンプレート:Harvs はある技術的仮定と合わせて後者がフェセンコの予想を導くことを示した。

多重ゼータ関数

有限体上のリーマン予想のドリーニュの証明は、もとのゼータ関数の零点の実部を制限するために、零点と極がもとのゼータ関数の零点と極の和に対応する、積多様体のゼータ関数を用いた。アナロジーによって、テンプレート:Harvtxt は零点と極がリーマンゼータ関数の零点と極の和に対応する多重ゼータ関数を導入した。級数を収束させるため彼はすべて非負の虚部をもつ零点や極の和に制限した。今のところ、多重ゼータ関数の零点と極について知られている制限はリーマンゼータ関数の零点に対して有用な評価を与えるほど強くない。

零点の位置

テンプレート:Expand section

零点の個数

関数等式を偏角の原理と合わせて考えれば虚部が テンプレート:Mathテンプレート:Mvar の間にあるゼータ関数の零点の個数は テンプレート:Math に対して次で与えられる:

N(T)=1πArg(ξ(s))=1πArg(Γ(s2)πs2ζ(s)s(s1)2).

ここに偏角は、偏角 テンプレート:Mathテンプレート:Math から出発し、直線 テンプレート:Math に沿って連続的に変化させることで定義される。これは大きいがよく分かっている項

1πArg(Γ(s2)πs2s(s1)2)=T2πlogT2πT2π+78+O(1T)

と小さいがよく分かっていない項

S(T)=1πArg(ζ(12+iT))=O(logT)

の和である。なので虚部が テンプレート:Mvar の近くの零点の密度は約 テンプレート:Math であり、関数 テンプレート:Mvar はこれとの小さな差を記述する。関数 テンプレート:Math はゼータ関数の各零点において テンプレート:Math 飛び、テンプレート:Math に対しては零点の間で導関数がおよそ テンプレート:Math で単調に減少する。

零点の存在

テンプレート:Expand section テンプレート:Harvtxtテンプレート:Harvtxt は、ゼータ関数に関連したある関数のモーメントを考えることによって、臨界線上には零点が無限個存在することを証明した。テンプレート:Harvtxt は、少なくとも(小さい)正の割合の零点は臨界帯上にあることを証明した。テンプレート:Harvtxt は、ゼータ関数の零点をゼータ関数の導関数の零点と関連付けることで、それを テンプレート:Math に改善し、テンプレート:Harvtxt はさらに テンプレート:Math に改善した。

真偽の議論

テンプレート:Expand section リーマン予想に関する数学の論文は、それが真であるかどうか注意深く明言しない傾向にある。テンプレート:Harvtxtテンプレート:Harvtxt のように、意見を述べる人の大半は、リーマン予想は正しいと予想(あるいは少なくとも期待)している。これについて深刻に疑問を呈することを表明する人は少なく、その中には テンプレート:Harvtxtテンプレート:Harvtxt がいる。Ivić は懐疑的に考えている理由を並べている。また Littlewood は、誤りであると信じており、正しいという何らの証拠がない、正しいことを示す想像できる理由も全く存在しない、ときっぱり述べている。サーベイの論文 (テンプレート:Harvnb, テンプレート:Harvnb, テンプレート:Harvnb) の共通認識としては、リーマン予想が正しいという証拠は、強いが圧倒的ではないので、おそらく正しいであろうが、これを疑問視するのも妥当であるとしている。

関連項目

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脚注

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注釈

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出典

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参考文献

和書
  • テンプレート:Cite book - 原タイトル:Riemann's Zeta Function.
  • テンプレート:Cite book
  • テンプレート:Cite book - 原タイトル:Prime obsession.
  • テンプレート:Cite book
  • 黒川信重:「リーマン予想の150年」、岩波書店、ISBN 978-4-00-006792-8 (2009年11月5日).
  • 黒川信重(編著):「リーマン予想がわかる」、日本評論社(数学セミナー増刊)(2009年11月25日).
  • 黒川信重、小山信也:「リーマン予想のこれまでとこれから」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78550-2 (2009年12月10日).
  • 黒川信重:「リーマン予想の先へ:深リーマン予想ーDRH」、東京図書、ISBN 978-4-489-02151-0 (2013年4月25日).
  • 仲村亮:「リーマン予想とはなにか:全ての素数を表す式は可能か」、講談社ブルーバックス、ISBN 978-4-06-257828-8 (2015年8月20日).
  • 黒川信重:「リーマンと数論」、共立出版、ISBN 978-4-320-11234-6 (2016年12月15日).
洋書

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外部リンク

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  1. Helge von Koch, "Sur la distribution des nombres premiers", Acta Mathematica 24 (1901), 159–182. テンプレート:Doi
  2. Lagarias, Jeffrey C., "An elementary problem equivalent to the Riemann hypothesis." American Mathematical Monthly 109 (2002), no. 6, 534-543.
  3. J.E. Littlewood, 1912; see for instance: paragraph 14.25 in テンプレート:Harvtxt
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