漸近線

解析幾何学において、平面曲線の漸近線(ぜんきんせん、テンプレート:Lang-en-short)とは、十分遠くで曲線との距離が テンプレート:Math に近づき、かつ曲線と接しない直線のことである。通常の定義では、漸近線は曲線と無限回交わってもよい[1]。
漸近線は存在するとは限らず、また複数存在する場合もある。漸近線は、曲線上の点が十分進んだ所での概形である。
特に、座標平面における関数に対しては、そのグラフの漸近線の方程式は(存在の可否も含めて)求め方が確立されている。関数のグラフの接線の極限が存在するならばそれは漸近線に等しい[2]。
代数幾何学などでは、漸近線は無限遠点のみで曲線と接する直線と定義される[3][4]。
漸近線として直線だけでなく曲線を考えることもある。
例


定数関数、多項式関数のグラフには、漸近線は存在しない。漸近線が存在する最も簡単な例は、関数 テンプレート:Math2 のグラフである。このグラフの漸近線は、直線 テンプレート:Math2 と直線 テンプレート:Math2 である。グラフを描くと、曲線 テンプレート:Math2 は テンプレート:Math, テンプレート:Math のときにそれぞれ テンプレート:Mvar軸、テンプレート:Mvar軸に近づくことが見てとれる。この場合はグラフと漸近線は共有点を全く持たないが、一般にはそうとは限らない。漸近線が存在する関数は他にもいくつかある。
なかでも代表的なものは以下の通りである。 テンプレート:-
| 関数名 | 関数式 | 漸近線の方程式 |
|---|---|---|
| 正接関数 | テンプレート:Math2 | テンプレート:Math2 (テンプレート:Mvar は整数) |
| 指数関数 | テンプレート:Math2 | テンプレート:Math2 |
| 対数関数 | テンプレート:Math2 | テンプレート:Math2 |
| 双曲線 | テンプレート:Math2 | テンプレート:Math2 |
| 双曲線正接関数 | テンプレート:Math2 | |
| 逆正接関数 | テンプレート:Math2 | テンプレート:Math2 |
| 逆双曲線正接関数 | テンプレート:Math2 | テンプレート:Math2 |
分数関数においては、分母が テンプレート:Math になるところで漸近線になり、テンプレート:Math で漸近線が存在する場合があるが、それぞれ存在しないこともある。
- どちらも存在しない例:
無理関数で漸近線が存在するのは
の形に限られる(漸近線は )。
グラフと漸近線がどんな遠くでも無限回交わる例もある。減衰曲線(テンプレート:Math2 や テンプレート:Math2 など)と テンプレート:Mvar軸はその一例である。
関数の漸近線
関数 テンプレート:Math2 のグラフの(直線である)漸近線は、次の2タイプである。
- テンプレート:Mvar軸に平行の直線(方程式を テンプレート:Math2 とする)
- テンプレート:Math または テンプレート:Math で漸近する直線(方程式を テンプレート:Math2 とする)
テンプレート:Mvar軸平行の漸近線
直線 テンプレート:Math2 がグラフ テンプレート:Math2 の漸近線であるための必要十分条件は、以下の4つのいずれかを満たすことである。
いずれも テンプレート:Math2 で不連続の場合である。したがって、関数の不連続点が、テンプレート:Mvar軸平行の漸近線の場所の候補である。
テンプレート:Math2 で漸近する直線
直線 テンプレート:Math2 が テンプレート:Math でグラフ テンプレート:Math2 に漸近するとする(テンプレート:Math の場合も同様)。このとき、テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar は(存在の可否も含めて)次の極限で求められる。
- 証明
直線 テンプレート:Math2 は テンプレート:Math でグラフ テンプレート:Math2 に漸近するから、
が成り立つ。左辺の式を テンプレート:Mvar で割った式は、尚のこと テンプレート:Math に近付くから、
ここで
であるから、
テンプレート:Math より、
である。■
この等式より、テンプレート:Math で漸近する直線は、テンプレート:Math と テンプレート:Math にそれぞれ1つである。
テンプレート:Mvar軸平行の漸近線
とくに テンプレート:Mvar軸平行の漸近線は、前節の テンプレート:Math2 の場合であり、漸近線 テンプレート:Math2 は
- または
で与えられる。

例えば、逆正接関数 テンプレート:Math2 では、
より、テンプレート:Math2 は漸近線である。
分数関数の漸近線
分数関数の漸近線の方程式は、上記の方法を使わずに求めることができる。
分数関数の式を テンプレート:Math2(既約分数式)とする。
- テンプレート:Mvar軸平行の漸近線
テンプレート:Math2 を満たす テンプレート:Mvar を求める (テンプレート:Math2)。既約より テンプレート:Math2 で、テンプレート:Math2 が漸近線である。
- テンプレート:Math2 で漸近する直線
存在する必要十分条件は テンプレート:Math2 である。このとき テンプレート:Math2 の商 テンプレート:Math, 余り テンプレート:Math を求める。テンプレート:Math2 であり、直線 テンプレート:Math2 が テンプレート:Math2 で漸近する直線である。
(例)
漸近線は、テンプレート:Mvar軸平行の漸近線は テンプレート:Math2, テンプレート:Math2、テンプレート:Math で漸近する直線は テンプレート:Math2 である。
テンプレート:Math2 の値によって、漸近線の位置が分類される。
| テンプレート:Math | テンプレート:Math で漸近する直線 | 分数関数,テンプレート:Math で漸近する直線の例 |
|---|---|---|
| テンプレート:Math | テンプレート:Math2 | |
| テンプレート:Math | テンプレート:Math2 | |
| テンプレート:Math | テンプレート:Math2 | |
| テンプレート:Math | 存在しない | , なし |
媒介変数表示された曲線の漸近線

媒介変数表示された平面曲線
を考える(ここで、テンプレート:Mvar は テンプレート:Math でもよく テンプレート:Mvar は テンプレート:Math でもよい)。曲線 テンプレート:Mvar は無限遠点に向かう、すなわち
が成り立つことを仮定する。直線 テンプレート:Mvar が曲線 テンプレート:Mvar の漸近線であるとは、テンプレート:Math のとき点 テンプレート:Math と直線 テンプレート:Mvar の距離が テンプレート:Math に収束することと定義される[5][6]。
一般に、点 テンプレート:Math2 と直線 テンプレート:Math の距離は
で与えられるので、直線 テンプレート:Mvar が曲線 テンプレート:Mvar の漸近線であるとは、
が成り立つことと同値である。曲線の媒介変数表示は一意ではないが、漸近線の定義はその取り方に依らない。実際、テンプレート:Math を媒介変数の取り換えとすると、テンプレート:Math は
と同値であるからである。
実一変数の実数値関数のグラフは、媒介変数表示された平面曲線の特別な場合と考えることができる。関数 テンプレート:Math のグラフは点 テンプレート:Math の集合であり、テンプレート:Mvar を径数 テンプレート:Mvar とすれば、径数付け(の一つ)
が得られる。
例えば、曲線 テンプレート:Math2 の右上の枝は媒介変数 テンプレート:Mvar により テンプレート:Math2 と表示できる。まず、テンプレート:Math のとき テンプレート:Math であり、曲線上の点と テンプレート:Mvar軸の距離 テンプレート:Math は テンプレート:Math のとき テンプレート:Math に収束する。したがって、テンプレート:Mvar軸は曲線の漸近線である。また、テンプレート:Math のとき、テンプレート:Math であり、このとき曲線上の点と テンプレート:Mvar軸の距離 テンプレート:Mvar は テンプレート:Math に収束する。したがって テンプレート:Mvar軸も漸近線である。同様に、曲線の左下の枝も同じ2本の直線が漸近線であることが示される。
関数のグラフでは、垂直でない漸近線は テンプレート:Math にそれぞれ高々1本ずつに限られるが、媒介変数表示から定まる一般の曲線は、垂直でない漸近線を3本以上持つこともあるし、1つの垂直な漸近線と2回以上交わる場合もある。
代数曲線の漸近線
曲線である漸近線

漸近線の定義に直線であることを仮定しない場合もある。曲線によっては曲線である漸近線も考えた方が形をとらえやすいことがある。
例えば、曲線
は、放物線 テンプレート:Math2 に テンプレート:Math で漸近する。