円分体

提供: testwiki
2023年2月18日 (土) 07:16時点における126.114.83.232 (トーク)による版 (アーベル拡大体の埋め込み)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
ナビゲーションに移動 検索に移動

円分体 (えんぶんたい、テンプレート:Lang-en-short) は、有理数体に、1 の m(>2) 乗根 ζ(±1) を添加した代数体である。円分体およびその部分体のことを円体ともいう。

以下において、特に断らない限り、ζn=e2πi/n とする。

性質

(ζm) は、(ζp1e1),, (ζprer)合成体であり、
Gal((ζm)/)(/m)×(/p1e1)×××(/prer)×
が成立する。また、円分体 (ζm) で分岐する有理素数テンプレート:Efnは、p1,, pr に限る。
  • (ζm)=(ζm+1/ζm) である。この(ζm+1/ζm) を、最大実部分体または実円分体という。
  • 一意分解整域となる円分体 (ζm) (m≢2(mod4))テンプレート:Efnは、m が 3, 4, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 13, 15, 16, 17, 19, 20, 21, 24, 25, 27, 28, 32, 33, 35, 36, 40, 44, 45, 48, 60, 84 の場合だけである。
    • 特に、23 以上の素数 p に対しては、円分体 (ζp) は一意分解整域でない。
  • 類数が 2 である円分体 (ζm) (m≢2(mod4)) は、m = 39, 56 だけである。
  • 円分体 (ζm) に含まれる代数的整数の集合は、[ζm] である。

円分体の判別式

m を 3 以上の整数として、円分体を K=(ζm) とする。

(1) m が素数のとき

K判別式は、(1)(m1)/2mm2 である。

(2) m=ph (p は素数、h は 2 以上の整数)のとき

K の判別式は、εpph1(h(p1)1) である。但し、

ε={1(p=h=2, or p3(mod4)),+1(p=2,h3, or p1(mod4)).

(3) m=p1e1prer (r2, p1,, pr は相異なる素数、e1,,er1) であるときには

円分体 (ζpiei) の判別式を Di とすると、 K の判別式は、

i=1rDiφ(m)/φ(piei)

である。

アーベル拡大体の埋め込み

テンプレート:Main クロネッカー=ウェーバーの定理 (Kronecker-Weber's theorem)

K が有理数体上のアーベル拡大体のとき、ある整数 m3 が存在して、

K(ζm) となる。

例えば、二次体はアーベル拡大体であるので、クロネッカー=ウェーバーの定理より、ある円分体の部分体になる。

クロネッカー=ウェーバーの定理は、基礎体が有理数体であるときを考えているが、基礎体を虚二次体にしたときも、同様なことが成立するかを問うたのが、クロネッカーの青春の夢である。

円分体と初等整数論

フェルマーの最終定理

素数 p に対して、

xp+yp=zp

の左辺を、(ζp) 上で分解すると、

(x+y)(x+ζpy)(x+ζpp1y)=zp

となる。 ラメ (G. Lamé)、コーシー (A. Cauchy)らは、上記左辺を考察し、フェルマーの最終定理が成立することを証明したと発表した。しかし、クンマー (E. E. Kummer)は、彼らの証明は、左辺の分解が一意的であることが前提になっており、p=23 のとき、それが成立しないことを示した。 そのため、p=23 (円分体の性質にある様に、23 以上の全ての素数) の場合、別の方法をとる必要がある。

クンマーは、素元の分解が一意でなくとも、ある性質をもつ素数である場合、彼らの証明のアイデアを生かしながら、フェルマーの最終定理が成立することを証明した。

クンマーにより考察された素数は、以下の性質を持ち、正則素数と呼ばれる。

  • 素数 p は、円分体 (ζp)類数を割り切らない。

正則素数に対しては、以下の補題が成立し、クンマーは、この補題を用いて、ベキが正則素数の場合のフェルマーの最終定理を証明した。

クンマーの補題

素数 p が正則素数であれば、円分体 (ζp) の単数 ε を、εa (mod (1ζp)p) となる有理整数 a が存在するようにとると、 (ζp) の単数 ε0 が存在して、ε=ε0p と表される。

正則素数についての詳細は、正則素数 を、フェルマーの最終定理については、フェルマーの最終定理を参照のこと。

平方剰余の相互法則

ガウス (C. F. Gauss)は、今日、ガウス和と呼ばれる1のベキ根の指数和を考察することにより、平方剰余の相互法則第1補充法則第2補充法則を示したテンプレート:Efn。さらに、(ζ3), (ζ4) 上のガウス和を考察することで、3次、4次剰余の相互法則を得ることができる。クンマーは、円分体に対する深い考察により、高次のベキの剰余に関する相互法則を与えた。 高次ベキの剰余の相互法則は、その後、フルトヴェングラー (P. Furtwängler)により全ての素数に対して与えられ、さらに、類体論の結果を用いて、高木、アルティン (E. Artin)、ハッセ (H. Hasse)らにより、より一般の形での相互法則が得られた。

円分体の類数

円分体の類数の性質

以下において、p を奇素数とする。

円分体 (ζm) の類数を h(m)、最大実部分体 (ζm+1/ζm) の類数を h2(m) とすると、 h(m)=h1(m)h2(m) (h1(m) は有理整数)と表すことができる。 このとき、h1(m)第1因子または相対類数h2(m)第2因子または実類数という。

第1因子については、以下の様な性質がある。

  • 素数 p に対して、ph(p) を割り切る必要十分条件は、p が第1因子を割り切ることである。
つまり、第1因子が p で割り切れないならば、p は正則素数である。
この性質により、第1因子はフェルマーの最終定理との関連で多くの研究がなされている。
  • 素数 p に対して、p が第1因子を割り切る必要十分条件は、p2 が、j=1p1j2k を割り切る様な整数 k (1k(p3)/2) が存在することである。
  • h1(p) が奇数であるならば、h2(p) は奇数である。

クンマーは、第1因子の増大度に対して、limph1(p)/γ(p)=1 と予想した。 但し、γ(p)=p(p+3)/4/(2(p3)/2π(p1)/2)テンプレート:Efn

この予想が成立するかは不明であるが、例えば、以下のことが知られている。

limplog(h1(p)/γ(p))logp=0

第2因子に対しては、以下の様な性質がある。第1因子よりも取り扱いが難しいため、第2因子の性質はあまり分かっていない。

  • q を素数とし、n>1 とする。p=(2qm)2+1 が素数であるならば、h2(p)>2 である。

ヴァンディヴァー (H. S. Vandiver)は、ph2(p) を割り切らないと予想した(ヴァンディヴァー予想)。現在でも、この予想が正しいかは不明であるテンプレート:Sfn

円分体の類数公式

円分体の類数を求めるには、h(m)=h1(m)h2(m) より、第1因子と第2因子を求めればよい。テンプレート:Efn

  • 第1因子
    • h1(m)=δ(2m)12φ(m)1χSn=1m1χ(n)n
ここで、
δ={1(m≢0(mod4)),12(m0(mod4)),
S は、χ(1)=1 を満たす、法 m に関する指標の集合とする。
特に、m が素数 p の場合、以下の形で表される。
  • h1(p)=1(2p)(p3)/2|χSk=1p1χ(k)k|
m が素数のとき、以下の様な式がある。
  • h1(p)=1(2p)(p3)/2|G(η)G(η2)G(ηp2)|
ここで、η は、1 の原始 p1 乗根とし、G(X)=j=0p2gjXj
但し、g を、法 p に対する原始根としたとき、j=0,1,,p2 に対して、1gjp1 は、gjgj (mod p) を満たす正整数とする。
  • p の倍数ではない整数 r に対して、1R(r)p1 を、rR(r) (mod p) を満たすようにとる。
また、1rp1 を、rr1 (mod p) を満たすようにとる。
Mp=(R(rs))r,s=1,2,,(p1)/2 テンプレート:Efnとおくと、
h1(p)=1p(p3)/2|detMp| である。
  • 第2因子
    • h2(m)=212φ(m)1RχTn=1[m12]χ(n)log|1ζmn|
ここで、R は、(ζm)単数基準T は、χ(1)=1 を満たす、法 m に関する指標のうち、単位指標ではない指標の集合とする。
特に、m が素数 p の場合、以下の形で表される。
  • h2(p)=2(p3)/2Rk=1(p3)/2|j=0(p3)/2η2kjlog|1ζpgj||
ここで、η は、1 の原始 p1 乗根、g は、法 p に対する原始根とする。
m が素数のとき、以下の様な式がある。
  • k=2,3,,(p1)/2 に対して、δk=(1ζpk)(1ζpk)(1ζ)(1ζ1) テンプレート:Efn とおく。
g を法 p に関する原始根とし、δ=δg とおく。
また、σ を、σ(ζp)=ζpg を満たす、Gal((ζp)/) の生成元とする。
M=(logσi+j(δ))i,j=0,1,,(p5)/2
とおくと、
h2(p)=2(p3)/2R|detM|
但し、R は、(ζp)の単数基準とする。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

注釈

テンプレート:Notelist

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:Div col

テンプレート:Div col end

外部リンク