円分多項式
円分多項式(えんぶんたこうしき、テンプレート:Lang-en-short, テンプレート:Lang-de-short)とは、1の冪根に関連のある多項式である。具体的には次の式で定義される多項式 テンプレート:Math を指す。
この定義からは明らかではないが、これは係数が整数の多項式で、さらに有理数体上の既約多項式である。多項式 テンプレート:Math2 は次のように円分多項式の積として既約分解される。
英語の「cyclotomic」という言葉は古代ギリシャ語の「円 (cyclo)」と「分ける (tomos)」に由来する[1]。
概要
一般に テンプレート:Mvar 次方程式は代数的閉体において、重根を含め テンプレート:Mvar 個の根を持つ。特に、複素数体は代数的閉体であるから、方程式 テンプレート:Math2 は複素数の範囲で テンプレート:Mvar 個の根を持つ。
実際 テンプレート:Math2 は テンプレート:Mvar を 1 から テンプレート:Mvar まで変化させると方程式 テンプレート:Math2 の テンプレート:Mvar 個の異なる根をすべて与える。複素平面上にあるこれらの根は単位円の弧を テンプレート:Mvar 等分する。これが円分多項式と呼ばれる所以である。
例えば、テンプレート:Math2 は テンプレート:Math2 の4つの根を持ち、テンプレート:Math2 に対応する。1 と −1 は2乗すると 1 になるので、テンプレート:Math2 の根でもある。一方、テンプレート:Math2 は4乗しなければ 1 とならない。この2つを根に持つ方程式が テンプレート:Math である。このように テンプレート:Mvar 乗して初めて 1 となる複素数(1 の原始 テンプレート:Mvar 乗根)全てを根に持ち、最高次数の項の係数が 1 である多項式が円分多項式 テンプレート:Math2 である。
テンプレート:Mvar 乗して初めて 1 になる条件は テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が互いに素なことであるため、冒頭の定義が与えられる。定義からすぐに得られる帰納的関係式
またはメビウスの反転公式により得られる
が計算上は有用である。
性質
実際に円分多項式を計算すると以下のようになる。
円分多項式の次数はその性質上[[オイラーのφ関数|オイラーの テンプレート:Mvar 関数]]を用いれば テンプレート:Math に等しい。また、上記の例では係数が 1, −1, 0 しか現れないが、必ずそうなるわけではない。実際 テンプレート:Math2 がそうでない最小の例で係数に −2 が現れる。
円分多項式の係数の大きさについて知られている最良の結果は次のものである。
とおく。このとき、定数 テンプレート:Math2 が存在して、十分大きい テンプレート:Mvar に対して、
テンプレート:Mvar が素数のときは係数が全て 1 の テンプレート:Math2 次の多項式となる。
すべての整数は円分多項式の係数として現れる[4]。さらに強く、どのような等差数列 をとっても、すべての整数はある の係数として現れる[5]。
任意の円分多項式の全ての根は、いくつかの有理数から出発して四則と冪根を繰り返すことにより表せることが知られている。実際、テンプレート:Math2 のガロア群は テンプレート:Math2 の乗法群である。特に テンプレート:Mvar がフェルマー素数のときは、冪根として平方根を用いるだけで表すことが可能であるため、長さ 1 の線分が与えられれば、定規とコンパスを使用して半径 1 の円弧を テンプレート:Mvar 等分する線分が作図可能である。
x が異なる円分多項式の差として表される多項式の根ならば テンプレート:Sfrac < x < 2 となる。このことから多項式 F, G の間に を x > 2 となるすべての x について となることと定義すると は円分多項式の間の全順序を定めることが分かる[6]。
円分多項式の値
テンプレート:Mvar を整数とし、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar を法とする位数とするとき、テンプレート:Mvar が テンプレート:Math2 の素因数であることは テンプレート:Math2 (テンプレート:Math2) と書けることと同値である。よって、テンプレート:Math2 の素因数は テンプレート:Mvar の約数であるか、または テンプレート:Mvar を法として 1 と合同である。このことから、任意の整数 テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvar を法として 1 と合同である素数が無限に多く存在することが導かれる。これはディリクレの算術級数定理の特別な場合である。
テンプレート:Math2 は少数の例外を除いて必ず テンプレート:Mvar を法として 1 と合同である素因数を持つ。実際、
とおくと、次のことが知られている[7]。
- テンプレート:Math2 を テンプレート:Mvar と互いに素な整数とし、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar が テンプレート:Math2 を割り切る最小の テンプレート:Mvar とするとき、テンプレート:Mvar が テンプレート:Math2 の素因数であることは テンプレート:Math2 (テンプレート:Math2) と書けることと同値である。
- テンプレート:Math2 を テンプレート:Mvar と互いに素な正の整数とする。テンプレート:Math2 は テンプレート:Math2(最後の場合において、テンプレート:Math2 は奇数で テンプレート:Math2 は2の冪)となる場合を除いて、必ず テンプレート:Mvar を法として 1 と合同である素因数を持つ。
- なお、この場合には、そのような素因数を テンプレート:Mvar とし、テンプレート:Math2 とおくと、テンプレート:Math2 より テンプレート:Math2, すなわち テンプレート:Math2 でなければならない。すなわち、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar が テンプレート:Math2 を割り切る最小の テンプレート:Mvar である。この結果はさらに一般化される(リュカ数列を参照)。
脚注
参考文献
- R. D. Carmichael, On the numerical factors of the arithmetic forms , Ann. of Math. 15 (1913), 30-70.
- H.-J. Kanold, Sätze über Kreisteilungspolynome und ihre Anwendungen auf einige zahlentheoretische Probleme I, J. reine angew. Math. 187(1950), 169-182.
- K. Zsigmondy, Zur Theorie der Potenzreste, Monatsh. Math. 3(1892), 265-284.
外部リンク
- ↑ テンプレート:Cite arXiv
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ Zsigmondy 1892, Carmichael 1913, Kanold 1950など、多くの数学者がこの証明を発表している。