ラーモア歳差運動

ラーモア歳差運動の模式図。太い赤矢印は磁場ベクトル、細い赤矢印は粒子のスピンベクトル。粒子を負電荷とすると、磁気モーメントは緑矢印回りに歳差する。

ラーモア歳差運動（ラーモアさいさうんどう、テンプレート:Lang-en）は、物理学において、電子・原子核・原子などの粒子の持つ磁気モーメントが外部磁場によって歳差運動を起こす現象である。ジョゼフ・ラーモアにちなんで名づけられた。

概要

外部磁場は、粒子の磁気モーメント、あるいは角運動量（スピン角運動量や軌道角運動量）にトルクを与え、それは以下のように表される。

$\overrightarrow{\mathrm{\Gamma }}=\overrightarrow{\mu }\times \overrightarrow{B}=\gamma \overrightarrow{J}\times \overrightarrow{B}$
$\overrightarrow{\mathrm{\Gamma }}$:トルク
$\overrightarrow{\mu }$:粒子の磁気モーメント
$\overrightarrow{B}$:外部磁場
$\overrightarrow{J}$:粒子の全角運動量

$\times$:クロス積

$\gamma$は磁気回転比と呼ばれ、磁気モーメントと全角運動量の比例関係 $\overrightarrow{\mu }=\gamma \overrightarrow{J}$を結びつける定数である。

トルクを受けることで、粒子が持つ磁気モーメントベクトル$\overrightarrow{\mu }$、あるいは角運動量ベクトル$\overrightarrow{J}$は磁場方向を軸としてその周りを歳差運動する。このとき運動方程式は次式で表される。

$\frac{d\overrightarrow{\mu }}{dt}=\gamma \overrightarrow{\mu }\times \overrightarrow{B},\frac{d\overrightarrow{J}}{dt}=\gamma \overrightarrow{J}\times \overrightarrow{B}$

この回転運動の角周波数はラーモア周波数（Larmor frequency）と呼ばれ、以下で表される。

$\overrightarrow{\omega }=\gamma \overrightarrow{B}$

ラーモア歳差運動は核磁気共鳴（NMR）、電子スピン共鳴（EPR）、強磁性共鳴（FMR）などにとって重要である。磁場中ではラーモア周波数を共鳴周波数とも呼ばれる。

レフ・ランダウとエフゲニー・リフシッツによる1935年の有名な論文は、ラーモア歳差運動による強磁性共鳴の存在を予言した。それは1946年にJ. H. E. Griffiths、1947年にE. K. Zavoiskyによる実験で、それぞれ独立に確かめられた。

外部リンク

• Georgia State University HyperPhysics page on Larmor Frequency