逆数

逆数(ぎゃくすう、テンプレート:Lang-en-short)とは、ある数に掛け算した結果が テンプレート:Math となる数である。すなわち、数 テンプレート:Mvar の逆数 テンプレート:Mvar とは次のような関係を満たす。
通常、テンプレート:Mvar の逆数は分数の記法を用いて テンプレート:Math のように表されるか、冪の記法を用いて テンプレート:Math のように表される。
テンプレート:Math を乗法に関する単位元と見れば、逆数とは乗法逆元(じょうほうぎゃくげん、テンプレート:Lang-en-short)の一種であり、乗法逆元とは一般化された逆数である。
上述の式から明らかなように、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar の役割を入れ替えれば、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の逆数であると言える。従って、テンプレート:Mvar の逆数が テンプレート:Mvar であるとき テンプレート:Mvar の逆数は テンプレート:Mvar である。
テンプレート:Mvar が テンプレート:Math である場合、任意の数との積は テンプレート:Math になるため、(テンプレート:Math であれば)テンプレート:Math に対する逆数は存在しない。
また、任意の テンプレート:Mvar について必ずしもその逆数が存在するとは限らない。たとえば、自然数の範囲では上述の関係を満たす数は テンプレート:Math 以外には存在しない。テンプレート:Math を除く任意の数 テンプレート:Mvar について逆数が常に存在するようなものには、有理数や実数、複素数がある。これらのように四則演算が自由にできる集合を体と呼ぶ。
逆数は乗法における逆元であるが、加法における逆元として反数がある。
1つの二項演算を持つ集合であって左右の逆元が常に存在するもの(代数的構造)はループと呼ばれる。
例
以下に具体例をいくつか挙げる。ここで テンプレート:Math はネイピア数、テンプレート:Mvar は虚数単位、テンプレート:Mvar は複素数の絶対値、テンプレート:Mvar は複素数の偏角を表す。また、テンプレート:Math は複素数 テンプレート:Mvar の共役複素数、テンプレート:Math は数 テンプレート:Mvar の絶対値を表す。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。同様に テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。同様に テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。同様に テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math = テンプレート:Math = テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- テンプレート:Math の逆数は テンプレート:Math。
- 複素数 テンプレート:Mvar の逆数は テンプレート:Math。
合同式での逆数
テンプレート:Main 合同式において逆数を考えることができる。テンプレート:Math を テンプレート:Mvar で割ると テンプレート:Math 余るとき、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar を法とする逆数と呼ぶ。合同式で表すと以下のようになる。
例えば、テンプレート:Math となるので、法 テンプレート:Math において テンプレート:Math は テンプレート:Math の逆数である。通常の逆数と同様、逆数の逆数は同じ数であり、テンプレート:Math の逆数は存在せず、テンプレート:Math や テンプレート:Math の逆数はそれ自身である。合同式の性質から、テンプレート:Mvar の倍数の逆数は存在せず、テンプレート:Math の逆数はそれ自身になる。
定義上、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar と互いに素である必要がある。つまり、一般に合同式での逆数は存在するとは限らない。例えば、テンプレート:Math や テンプレート:Math を満たす テンプレート:Mvar は存在しない。
素数 テンプレート:Mvar を法とする場合、テンプレート:Math 以外の全ての元が逆数を持つ。法 テンプレート:Math を例とすると次のようになる。
| 元 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 逆数 | なし | 1 | 9 | 6 | 13 | 7 | 3 | 5 | 15 | 2 | 12 | 14 | 10 | 4 | 11 | 8 | 16 |
合同式での逆数はオイラーの定理によって計算できる。テンプレート:Mvar に逆数 テンプレート:Mvar が存在するならば
なので、
(ここで テンプレート:Mvar はオイラーのφ関数)であり、逆に テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が互いに素であれば、この式によって逆数が与えられる。特に、テンプレート:Mvar が素数の場合以下のようになる(フェルマーの小定理から直接導かれる)。
また、ユークリッドの互除法によっても効率的に求めることができる。定義式は、以下のベズーの等式(ディオファントス方程式の一種)が テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar について整数解を持つことと同値である。
この式の解は、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が互いに素である場合、かつその場合に限り存在する。
日本における学校教育
日本の小学校では、小学6年生で分数の掛け算・割り算について学習する際に、逆数について学習し、テンプレート:Mvar(実際には具体的な数を用いる)で割ることと テンプレート:Math を掛けることが同じ結果を得ることなどを学ぶ。この事は中学校の課程で、加法における逆元、つまり負の数について学ぶ準備になっている。