Theorema Egregium
テンプレート:Pathnavbox Theorema Egregium(ラテン語。音訳:テオーレーマ・エーグレギウムテンプレート:Refn。直訳:卓越した定理テンプレート:Refn)はカール・フリードリヒ・ガウスにより証明された定理で、曲面のガウス曲率が曲面の内在的な量(リーマン計量)のみで書ける事を主張する。
日本語では
- 「最も素晴らしい定理」テンプレート:Refn
- 「驚異の定理」[1][2]
- 「Gaussの基本定理」[3]
- 「抜群の定理」[4]
などと訳される事もあるが、egregiumには「驚異の」という意味はない[注 1]。英語では「Remarkable Theorem」(注目すべき定理)と意訳する事もある[5][6][7]。
語源
「Theorema Egregium」という語はこの定理を示したガウスの原論文から来ている: テンプレート:Quotation テンプレート:Quotation
概要

テンプレート:Mvarを3次元ユークリッド空間内の曲面とし、テンプレート:Mvarをテンプレート:Mvar上の点とする。点テンプレート:Mvarにおいてテンプレート:Mvarの「最も曲がっている方向」の曲がり具合と「最も曲がっていない方向」の曲がり具合の積を点テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:Mvarのガウス曲率という。(ただし図のようにテンプレート:Mvarが鞍点になっている場合は、逆方向の曲がりをマイナスの曲がり具合と解釈する。よってこの場合の「最も曲がっていない方向」とは「逆向きに最も曲がっている方向」である)。
ガウス曲率はその定義より、におけるテンプレート:Mvarの曲がり具合を利用して定義されている為、においてテンプレート:Mvarがどのような形になっているかが一見重要に見える。
しかし実はガウス曲率はテンプレート:Mvarの「外の空間」であるとは無関係に計算できる、というのがTheorema Egregiumの趣旨である。具体的にはガウス曲率はテンプレート:Mvarの距離空間としての構造(厳密にはリーマン計量)のみから計算できる。

したがって、内でテンプレート:Mvarを変形しても、その変形がテンプレート:Mvarの距離構造を変えない限り、ガウス曲率は変わらない。例えばテンプレート:仮リンク(=懸垂面)とテンプレート:仮リンク(=螺旋面)は見た目は大きく異なるが、両者の距離構造は同じなので、ガウス曲率は変わらない。
このように「外の空間」とは無関係にテンプレート:Mvarの情報だけを用いて計算できる量をテンプレート:Mvarに内在的な(テンプレート:Lang-en-short)量であるという。Theorema Egregiumは、ガウス曲率がテンプレート:Mvarの内在的な量である事を意味している。

Theorema Egregiumを使うと、地球の地図を書くとき距離を歪ませない正確な地図は書けない事を示す事ができる[注 2][注 3]。実際、もし正確な地図が書けるなら、地球と地図(すなわち球面と平面)の距離構造は同一なので、Theorema Egregiumより両者のガウス曲率は等しくなければならないが、球面のガウス曲率は半径をテンプレート:Mvarとするとテンプレート:Mvarであり、平面のガウス曲率はテンプレート:Mvarである事が知られているので、これは矛盾である。
なお、ガウスがTheorema Egregiumなどの曲面論(テンプレート:仮リンク)を研究したきっかけは、国家の測量を依頼されたためであった。
ベルンハルト・リーマンはTheorema Egregiumに着目する事により、「外の空間」なしのテンプレート:Mvar次元曲面、すなわちテンプレート:Mvar次元リーマン多様体を定義し、これが今日の微分幾何学の研究の嚆矢となった。
さらにアルベルト・アインシュタインは、重力の座標変換則がリーマン多様体のそれとよく似ている事に着目し、宇宙をリーマン多様体の類似物(擬リーマン多様体)と見なすことで一般相対性理論を確立した。
厳密な定式化
古典的な定式化
Theorema Egregiumは以下のように定式化できる:
なお、第一基本形式は現代的な言い方では「リーマン計量」と呼ばれる。
具体的には第一基本形式を
とするとき、ガウス曲率テンプレート:Mvarはテンプレート:仮リンク
により記述できる。ここでテンプレート:Mvarはテンプレート:Mvarのテンプレート:Mvar-偏微分を表す。
現代的な定式化
リーマン多様体の言葉を使うと、Theorema Egregiumを以下のように再定式化できる。
をのテンプレート:Mvar級部分多様体とし、テンプレート:Mvarにの内積から誘導されるリーマン計量テンプレート:Mvarを入れ、テンプレート:Mvarが定めるレヴィ・チヴィタ接続(共変微分)をテンプレート:Mvarとし、リーマンの曲率テンソルテンプレート:Mvarを
により定義する。
各点に対し、テンプレート:Mvarのテンプレート:Mvarに関する正規直交基底を選び、テンプレート:Mvarにおけるテンプレート:Mvarの断面曲率を
により定義する。断面曲率はの選び方によらずwell-definedである事が知られているテンプレート:Refn。
このときTheorema Egregiumは以下のように再定式化できる: テンプレート:Math theorem
断面曲率はテンプレート:Mvarに内在的な量(リーマン計量)のみから定義したので、断面曲率はテンプレート:Mvarに内在的な量である。よって上記の定理はガウス曲率がテンプレート:Mvarに内在的である事を示している。
高次元の場合
テンプレート:Mainテンプレート:Mvarをリーマン多様体テンプレート:Mvarの部分多様体とする。テンプレート:Mvarがテンプレート:Mvarにおいて余次元1であれば、第二基本形式が実数値の双線形写像になり、第二基本形式の固有値・固有ベクトルとして主曲率およびそれに対応する主方向が定義できる。さらに全ての主曲率の積としてガウス曲率が定義できる。(なおガウス曲率は第二基本形式の行列式に等しい)。
このとき、以下が成立する:テンプレート:Math theoremここで、はそれぞれテンプレート:Mvar、テンプレート:Mvarの断面曲率である。
テンプレート:Mvarが曲率テンプレート:Mvarの定曲率空間であれば、
であり、がテンプレート:Mvarに内在的な量であることも言える:テンプレート:Math theoremよって特に以下が従う:テンプレート:Math theorem一方、奇数次元のガウス曲率はテンプレート:Mvarに内在的な量ではないが、以下が成り立つことが知られている:テンプレート:Math theorem 以上の事から、テンプレート:Mvarが偶数の場合にはにおけるテンプレート:Mvarのガウス曲率をリーマン曲率で書きあらわす事ができる。が曲率0の場合は、具体的にはリーマン曲率から定まるオイラー形式がガウス曲率と一致する。
このオイラー形式はガウス・ボンネの定理の高次元化にも役に立ち、オイラー形式を積分したものがオイラー数に一致する、という形で高次元のガウス・ボンネの定理を記述できる。
詳細は部分リーマン多様体の接続と曲率の項目を参照されたい。
脚注
出典
注釈
文献
参考文献
原論文
- ラテン語:
- 英訳
- ウェブ
- テンプレート:Cite web
- Karl Friedrich Gauss, General Investigations of Curved Surfaces of 1827 and 1825, (1902) The Princeton University Library.
- 書籍
- Carl Friedrich Gauss (Author), Adam Hiltebeitel (Translator), James Morehead (Translator), General Investigations Of Curved Surfaces Unabridged (Paperback), Wexford College Press, 2007, ISBN 978-1-929148-77-6.
- Carl Friedrich Gauss (Author), Peter Pesic (Editor), General Investigations of Curved Surfaces (Paperback), Dover Publications, 2005, ISBN 978-0-486-44645-5.
- ウェブ
関連項目
外部リンク
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