局所凸位相ベクトル空間

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関数解析学および関連する数学の分野において、局所凸位相ベクトル空間(きょくしょとついそうベクトルくうかん、テンプレート:Lang-en-short)あるいは局所凸空間(locally convex space)は、ノルム空間を一般化する位相ベクトル空間(TVS)の例である。それらは、均衡かつ併呑凸集合の平行移動によって位相が生成されるような位相ベクトル空間として定義される。または代わりに、それらは半ノルムを伴うベクトル空間として定義され、その族に関して位相を定義することが出来る。一般にこのような空間は必ずしもノルム化可能ではないが、零ベクトルに対する凸局所基の存在はハーン=バナッハの定理の成立を保証する上で十分に強く、その結果として連続線型汎函数に関する豊富な理論がもたらされた。

フレシェ空間は、距離化可能かつその距離に関して完備であるような局所凸空間である。それらは、ノルムに関する完備ベクトル空間であるようなバナッハ空間の一般化である。

定義

テンプレート:Mvar を、複素数の部分体 テンプレート:Math(通常は テンプレート:Math 自身か、実数体 テンプレート:Math)上のベクトル空間とする。局所凸空間は、凸集合あるいは半ノルムに関して定義される。

凸集合による定義

テンプレート:Mvar 内のある部分集合 テンプレート:Mvar について、以下が成り立つ:

  1. テンプレート:Mvarであるとは、テンプレート:Mvar 内の任意の テンプレート:Mathテンプレート:Math に対して、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 内に含まれることを言う。これを言い換えると、テンプレート:Mvar はその内部の点の間のすべての線分を含むということになる。
  2. テンプレート:Mvar が circled であるとは、テンプレート:Mvar 内の任意の テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Math ならば テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 内に含まれることを言う。テンプレート:Math であるなら、このことは テンプレート:Mvar が原点を通るその鏡映と等しいことを意味する。テンプレート:Math に対しては、このことは テンプレート:Mvar 内の任意の テンプレート:Mvar によって生成される一次元複素部分空間において、テンプレート:Mvar を通る原点中心の円板を テンプレート:Mvar が含むことを意味する。
  3. テンプレート:Mvar が(考えている体が順序付けられている場合に)であるとは、テンプレート:Mvar 内の任意の テンプレート:Mvarテンプレート:Math に対して、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 内に含まれることを言う。
  4. テンプレート:Mvar均衡であるとは、テンプレート:Mvar 内の任意の テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Math であるなら テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 内に含まれることを言う。テンプレート:Math であるなら、このことはもし テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 内にあるなら、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Math の間の線分を含むことを意味する。テンプレート:Math に対してこのことは、テンプレート:Mvar 内の任意の テンプレート:Mvar が生成する一次元複素部分空間において、原点を中心とし テンプレート:Mvar を境界に置く円板を テンプレート:Mvar が含むことを意味する。また同値であるが、均衡集合は circled な錐である。
  5. テンプレート:Mvar併呑であるとは、すべての テンプレート:Math についての テンプレート:Math の合併が テンプレート:Mvar 全体であること、あるいは同値であるが テンプレート:Mvar 内のすべての テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar に含まれるようなある テンプレート:Math が存在することを言う。集合 テンプレート:Mvar は、その空間内のすべての点を併呑するために膨張させることが出来る。
  6. テンプレート:Mvar絶対凸であるとは、それが均衡かつ凸であることを言う。

より簡潔に、テンプレート:Mvar のある部分集合が絶対凸であるとは、係数の絶対和が テンプレート:Math であるような線型結合の下で閉じていることを言う。そのような集合は、テンプレート:Mvar 全体を張るとき、併呑と呼ばれる。

局所凸位相ベクトル空間とは、原点が絶対凸併呑集合の局所基を持つような位相ベクトル空間のことを言う。平行移動は(位相ベクトル空間の定義より)連続であるため、すべての平行移動は位相同型であり、したがって原点の近傍のすべての基は与えられた任意のベクトルの近傍に対する基へと平行移動することが出来る。

半ノルムによる定義

テンプレート:Mvar 上の半ノルムとは、次を満たす写像 テンプレート:Math のことを言う:

  1. テンプレート:Mvar は非負あるいは半正定値。すなわち テンプレート:Math
  2. テンプレート:Mvar は正同次あるいは正スケール化可能。すなわち、すべてのスカラー テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math となる。したがって、特に テンプレート:Math が成り立つ。
  3. テンプレート:Mvar は劣加法的で、次の三角不等式を満たす。テンプレート:Math

テンプレート:Mvar が正定値であるなら、すなわち テンプレート:Math のとき テンプレート:Math であるなら、テンプレート:Mvar はノルムである。一般に半ノルムは必ずしもノルムではないが、半ノルムの族に対する類似の性質である分離性(separatedness)が後述のように定義される。

局所凸空間は、半ノルムの テンプレート:Math に沿ったあるベクトル空間 テンプレート:Mvar として定義される。その空間は自然な位相である、半ノルムのテンプレート:仮リンクをもたらす。言い換えると、それはすべての写像

pα,y:V𝐑;xpα(xy)(yV,αA)

が連続であるようなテンプレート:仮リンク位相である。この位相に対する テンプレート:Mvar の近傍の基は、次の方法で定義することが出来る:テンプレート:Mvar のすべての有限部分集合 テンプレート:Mvar と、すべての テンプレート:Math に対して、

UB,ε(y)={xV:pα(xy)<ε (αB)}

を定める。次に注意されたい。

UB,ε(y)=αB(pα,y)1([0,ε)).

この位相においてベクトル空間の演算が連続であることは、前述の性質 2 および 3 より従う。結果として得られる位相ベクトル空間は、各 テンプレート:Math が絶対凸かつ併呑であるため(特に後者の性質は平行移動に対して保存されるため)、局所凸である。

二つの定義の同値性

近傍基に関する定義はより良い幾何的な表現を与えるものであるが、半ノルムに関する定義は実際に扱う上でより簡単なものとなる。それら二つの定義の同値性は、ミンコフスキー汎函数あるいはミンコフスキーゲージとして知られる構成法によって従う。テンプレート:Mvar-球の凸性を保証する半ノルムのキーとなる性質は、三角不等式である。

テンプレート:Mvar 内の テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Math ならば テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 内にあるような併呑集合 テンプレート:Mvar を考える。テンプレート:Mvar のミンコフスキー汎函数を次で定義する。

μC(x)=inf{λ>0:xλC}.

この定義より、テンプレート:Mvar が均衡かつ凸(また仮定より併呑)であるなら、テンプレート:Mvar は半ノルムとなる。逆に、半ノルムの族が与えられたとき、集合

{x:pα1(x)<ε,,pαn(x)<ε}

は凸併呑均衡集合の基を形成する。

さらなる定義と性質

  • 擬距離は距離の一般化で、テンプレート:Math が成り立つのは テンプレート:Math の場合に限る、という条件を満たさないものである。局所凸空間が、擬距離によってその位相が生じるという意味で擬距離化可能であるための必要十分条件は、それが可算個の半ノルムの族を持つことである。実際、同一の位相を導く擬距離はこのとき
d(x,y)=n12npn(xy)1+pn(xy)
で与えられる(ここで テンプレート:Math は任意の正の総和可能な列 テンプレート:Math で置き換えることが出来る)。この擬距離は平行移動不変であるが、テンプレート:Math となるという意味で非同次であり、したがって(擬)ノルムを定義することは無い。擬距離が正当な距離であるための必要十分条件は、半ノルムの族が分離であることである。実際そのような場合は、空間がハウスドルフであるときにのみ成り立つからである。さらに空間が完備であるなら、その空間はフレシェ空間と呼ばれる。
  • 局所凸空間内のテンプレート:仮リンクとは、すべての テンプレート:Math およびすべての半ノルム テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math ならば テンプレート:Math を満たす テンプレート:Mvar が存在するようなあるネット テンプレート:Math のことを言う。言い換えると、そのようなネットはすべての半ノルムについて同時にコーシー的でなければならない。距離化可能なフレシェ空間とは異なり、一般の空間は非可算の擬距離の族によって定義されることもあり得るため、ここでの完備性の定義は、を使ったより有名なものの代わりにネットを使って行う。定義により、可算であるような列はそのような空間において収束を特徴付ける上で十分ではない。局所凸空間が完備一様空間であるための必要十分条件は、すべてのコーシーネットが収束することである。
qF=αFpα.
が定義される。テンプレート:Math は同値な有向族であることが確かめられる。
  • 空間の位相が単一の半ノルムによって導かれるなら、その空間は半ノルム化可能(seminormable)と言われる。有限の半ノルムの族を伴う任意の局所凸空間は半ノルム化可能である。さらに空間がハウスドルフ(族が分離される)なら、その空間は半ノルムの和によって与えられるノルムによってノルム化可能である。開集合に関して、局所凸位相ベクトル空間が半ノルム化可能であるための必要十分条件は、テンプレート:Math有界な近傍を持つことである。

例と反例

局所凸空間の例

局所凸性を持たない空間の例

位相ベクトル空間の多くは局所凸である。局所凸性を持たない空間の例には、以下のようなものがある:

fp=01|f(x)|pdx
このような空間は、ゼロの唯一つの凸近傍が全空間となるため、局所凸ではない。より一般に、アトムレス(atomless)な有限測度 テンプレート:Mvar を備える、テンプレート:Math に対する空間 テンプレート:Math は局所凸ではない。
d(f,g)=01|f(x)g(x)|1+|f(x)g(x)|dx
(この距離は可測函数の測度収束を導く。確率変数に対して、測度収束は確率収束である)。この空間はしばしば テンプレート:Math と記述される。

上の例はいずれも、実数への任意の連続線型写像は テンプレート:Math であるという性質を持つ。特にそれらの双対空間は自明、すなわち、ゼロ汎函数のみを含む。

連続線型写像

局所凸空間はベクトル空間であるとともに位相空間であるので、二つの局所凸空間の間で考えられる自然な函数は連続線型写像である。半ノルムを用いることで、線型写像の連続性に対する必要十分条件は、バナッハ空間に対して知られているより有名な有界性の条件と非常に似たものとして与えられる。

それぞれ半ノルムの族 テンプレート:Math および テンプレート:Math を備える局所凸空間 テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar が与えられたとき、ある線型写像 テンプレート:Math が連続であるための必要十分条件は、すべての テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvar 内のすべての テンプレート:Mvar

qβ(Tv)M(pα1(v)++pαn(v))

を満たすような テンプレート:Math および テンプレート:Math が存在することである。これを言い換えると、テンプレート:Mvar の値域の各半ノルムが定義域内の半ノルムのある有限和によって上から評価される、となる。族 テンプレート:Math が有向族で、上述のように向き付けられるように常に選ばれるなら、上の式はより簡単かつ有名な次の形になる:

qβ(Tv)Mpα(v).

すべての局所凸位相ベクトル空間のは、としての連続線型写像を伴うを形成する。

関連項目

参考文献