アダマール積

数学におけるアダマール積(テンプレート:Lang-en-short)は、同じサイズの行列に対して成分ごとに積を取ることによって定まる行列の積である。要素ごとの積(テンプレート:Lang-en-short)、シューア積(テンプレート:Lang-en-short)、点ごとの積(テンプレート:Lang-en-short)、成分ごとの積(テンプレート:Lang-en-short)などとも呼ばれる。
ジャック・アダマールやイサイ・シューアらの貢献があり、名称はそれに因むものである。
アダマール積は結合的かつ通常の行列の和(成分ごとの和)に対して分配的であり、かつ通常の行列の積とは異なり(係数環が可換ならば)常に可換である。
定義
同じサイズ テンプレート:Math を持つふたつの行列 テンプレート:Math に対し、それらのアダマール積 テンプレート:Math は
で定義される、やはりサイズが同じく テンプレート:Math の行列である。
サイズが異なる行列に対しては(つまり掛け合わせる行列のサイズをそれぞれ テンプレート:Math, テンプレート:Math とすれば、テンプレート:Math または テンプレート:Math あるいはその両方であるときは)アダマール積は定義されない。
例
3 × 3 行列 テンプレート:Math と 3 × 3 行列 テンプレート:Math のアダマール積は以下のようになる。
性質
アダマール積は可換、結合的、かつ加法に対して分配的である。つまり、
が成り立つ。テンプレート:Math-行列のアダマール積において単位元となる行列(いうなれば「単位行列」)は全ての成分が テンプレート:Math となる テンプレート:Math-行列である。これはもちろん、通常の行列の積に関する単位行列(これは対角成分だけが テンプレート:Math でそのほかはすべて テンプレート:Math となる行列)とは異なる。さらに言えば、明らかにアダマール積に関する意味での「逆行列」を持つための必要十分条件は、その行列の成分にひとつも テンプレート:Math に等しいものが無いことである[1]。
ベクトル テンプレート:Math に対して、それを主対角線に持つ対角行列 テンプレート:Math を考えると、以下が成り立つ[2]:
テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の随伴である。特に、成分が全て テンプレート:Math であるようなベクトルを考えれば、アダマール積の成分の総和が テンプレート:Math の蹟に等しいことが分かる。関係する結果として、正方行列 テンプレート:Math に対してそれらのアダマール積の行和は テンプレート:Math の対角成分に等しい[3]。
シューア積定理
テンプレート:Main ふたつの半正定値行列のアダマール積はまた半正定値である[3]。これをドイツの数学者イサイ・シューアに因んでシューア積定理とも呼ぶ[1]。半正定値行列 テンプレート:Mvar に対して
が知られている[3]。